女性に多い腹痛「過敏性腸症候群」の症状をご存じですか? ストレスが原因とも

過敏性腸症候群(IBS)という疾患名を聞いたことがあるでしょうか? これは多くの人々が悩む消化器系の機能性疾患で、日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。そこで、横浜ベイクォーター内科・消化器内視鏡クリニック 横浜駅院の鈴木謙一先生に、IBSの症状や受診の目安について話を聞きました。

監修医師:
鈴木 謙一(横浜ベイクォーター内科・消化器内視鏡クリニック 横浜駅院)
過敏性腸症候群(IBS)とは? どんな症状があるの?

編集部
IBSとはどのような病気ですか?
鈴木先生
IBSは、検査をおこなっても異常が見つからないにも関わらず、腹痛や腹部不快感、便通異常などが慢性的に続く疾患です。生活の質を著しく低下させることがあります。
編集部
どんな症状があるのですか?
鈴木先生
主な症状として、腹痛や腹部の不快感、下痢、便秘、またはこれらが交互に現れることがあります。また「朝だけお腹が痛い」「夜になると腹痛が現れる」といったことも、IBSの可能性が考えられます。さらに、腹部の膨満感やガスの増加なども報告されています。なお、IBSはその症状によって、下痢型と便秘型、そして混合型に分けられます。
編集部
IBSの人は多いのですか?
鈴木先生
とても多いと言われています。日本人全体で見ると約10〜15%がこの疾患を抱えているとされ、特に20~40代の女性に多く見られるのが特徴です。近年は、中学生や高校生の間でもIBSが増加傾向にあります。
編集部
IBSの原因とは何ですか?
鈴木先生
IBS発症の正確なメカニズムはまだはっきりわかっていませんが、ストレスや食生活の乱れ、腸内細菌のバランスの崩れなどが関与していると考えられています。個人差が大きく、複数の要因が組み合わさって発症することも多く、また人によって症状の出方も異なります。
早期であれば完治できる!? IBSの治療法

編集部
症状がどのくらい続いたら受診すべきでしょうか?
鈴木先生
症状が数週間以上続く場合や、日常生活に支障をきたす場合は、早めの受診をお勧めします。IBSは市販の整腸剤や下剤では改善することが少ないという特徴があるため、医療機関に相談することが大切です。血便や体重減少などの症状がある場合は、IBSではなく、ほかの病気の可能性もありますので、この場合も速やかに医療機関を受診してください。
編集部
受診すると、どのような検査がおこなわれますか?
鈴木先生
問診や身体診察に加えて、血液検査や便検査、内視鏡検査(大腸カメラ)、腹部のレントゲンやCT検査などがおこなわれることがあります。これらの検査で大腸がんなどのほかの疾患を除外し、IBSの診断を確定します。また、胃痛や早期満腹感などで慢性的に悩まされている場合「機能性ディスペプシア」という病気を合併していることも考えられるため、胃カメラも検討していきます。
編集部
では、IBSの治療についても教えてください。
鈴木先生
早期で軽症の場合、2~3日で自然に治ることもありますが、中等度以上であれば自然に治ることはないため、食事療法や生活習慣の改善、薬物療法などを中心とした治療をしていきます。また、ストレス管理や心理的サポートを薬物療法に併用していくことが重要になります。
編集部
食事療法では具体的に何をおこないますか?
鈴木先生
※FODMAPとは、小腸で吸収されにくく、大腸で発酵しやすい糖質。F:発酵性の(Fermentable)、O:オリゴ糖(Oligosaccharides)、D:二糖類(Disaccharides)、M:単糖類(Monosaccharide)、[And]P:糖アルコール(Polyols)の頭文字をとったもの
編集部
薬物療法ではどのような薬が使用されますか?
鈴木先生
IBSが下痢型か便秘型か、混合型かによって異なります。症状に応じて漢方薬、下痢止めや便秘薬、鎮痙薬、抗うつ薬などが処方されることがあります。医師と相談の上、適切な薬を選択することが重要です。
IBSとの付き合い方を教えて

編集部
治療をすればIBSは完治するのでしょうか?
鈴木先生
個人差はありますが、適切な治療と生活習慣の改善により、症状をコントロールすることが可能です。完全に症状が消失することもありますが、長期的な管理が必要となる場合もあります。
編集部
IBSと診断された場合、日常生活で気をつけるべきことは何ですか?
鈴木先生
バランスの良い食事や規則正しい生活、適度な運動と睡眠を心がけることです。また、ストレスを溜め込まないよう、自分に合ったリラクゼーション法やストレス発散法を見つけることも大切です。
編集部
ストレス管理はどのようにおこなえばよいですか?
鈴木先生
簡単なことではないかもしれませんが、ストレスの原因がはっきりしていれば、可能な限りそれらを遠ざけることが大切です。また、必要に応じて、心理療法やカウンセリングを受けることも検討されるでしょう。対人関係や職場のストレスなどが原因の場合には、ストレスを取り除くことが難しいため、心療内科への受診をお勧めします。
編集部
最後に読者へのメッセージをお願いします。
鈴木先生
IBSは若い人によく見られる病気ですが、じつのところ薬でコントロールできることが多いです。慢性的な症状が続いているといった場合は、我慢せず医療機関に相談してください。また、「IBSかもしれない」と相談に来た人に対して大腸カメラをおこなうことで、別の思わぬ病気が見つかったというケースもあります。どんな病気であったとしても、早期発見が大切なので、思い当たる症状のある人は早めの受診をお勧めします。
編集部まとめ
IBSは多くの人が経験する可能性のある疾患ですが、適切な治療や生活習慣の見直しで、症状の改善が期待できます。下痢などの症状が続く場合や生活に支障をきたす場合は、我慢せずに早めの受診を心がけましょう。
医院情報
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