「漢方薬」は腎臓に悪いって本当? 安全に服用するポイントも医師が解説!

漢方薬は自然由来の成分で作られており、体に優しいというイメージがありますが、使用方法や体質・体調によっては、腎臓に負担をかけることもあるそうです。そこで今回は、漢方薬が腎臓に与える影響や安心して服用するためのポイントなどについて、「板橋腎リウマチ隼聖クリニック」の上野先生に解説していただきました。

監修医師:
上野 智敏(板橋腎・リウマチ隼聖クリニック)
腎臓の役割とは?

編集部
まず、腎臓の役割について教えてください。
上野先生
私たちの生活に最も密接している腎臓の働きとして、「尿を作ること」があります。もう少し詳しく説明すると、体内に蓄積された老廃物や余分な水分を尿として排出し、体内の毒素や不要な成分を尿中に排出する役割を担っています。
編集部
ほかにもありますか?
上野先生
腎臓では、水分の排出を調節したり、電解質やホルモンバランスを整えることで血圧を調節したり、骨の健康に必要なビタミンDを活性化したり、 造血ホルモンを分泌したりしています。
編集部
では、これらの働きが悪くなるとどうなってしまうのですか?
上野先生
腎臓の働きが悪くなると「ろ過」ができず尿そのものが出なくなり、体中に水分がたまってしまうだけでなく、尿中に捨てられるべき毒素が蓄積して「尿毒症」と呼ばれる状態になります。ただし、尿毒症は相当腎臓が悪くなったときに起こります。早い段階では血圧が少し高くなったり、「むくみやすい」「疲れやすい」と感じたりする程度です。
薬が腎臓に影響する? 注意が必要な薬とは?

編集部
薬の副作用によって、腎臓が悪くなることがあるのですか?
上野先生
そうですね。腎臓は、体に不要なものを体外に排出するための最も重要な排泄器官です。薬として内服した物質も役目を終えたら不要物(毒素)として腎臓から尿中に排出されます。腎臓は薬物の影響を受けやすく、多くの薬剤の代謝にかかわっているため、薬の副作用によって腎臓が悪くなるケースはどうしても起こり得ます。
編集部
そうなると、先ほどのような尿毒症などになってしまうのですか?
上野先生
ほとんどの場合、原因となった薬剤を速やかに特定し、服用や投与を中止することで腎機能は回復します。ただし、尿毒症になるほどの腎障害は基本的に戻らないあるいは回復にとても時間がかかるため、症状が軽度であっても異常があればすぐに相談することが重要です。早い段階であればあるほど回復の見込みがあります。
編集部
腎臓に影響が出やすい薬はありますか?
上野先生
薬にも色々あり、薬としての役割を果たした後に腎臓で分解されるものと、肝臓などの腎臓以外で分解されるものがあります。つまり、腎臓で分解される薬を使うと、腎臓に負担がかかるということになります。一部を除き、薬のほとんどが大なり小なり腎臓の働きで排出されます。
編集部
具体的には、どのような薬ですか?
上野先生
あくまでも一般論ですが、 造影剤や骨粗しょう症に用いるビタミンDやカルシウム製剤、脂質異常症の薬、抗生物質などが腎臓で代謝されるものが多いですね。また、痛み止めを長期的に連続服用することも腎臓にとても負担がかかります。
漢方薬も腎臓に影響を与える? 漢方薬を安心・安全に服用するポイント

編集部
漢方薬であれば、腎臓に負担はかからないですか?
上野先生
漢方薬は生薬由来であり、リスクや副作用がないというイメージがあるかもしれません。しかし、そんなことはなく、れっきとした化学物質なので、成分によっては腎臓に負担がかかってしまう、あるいは腎臓を攻撃してしまうこともあります。
編集部
安全に服用するためには、どうしたらいいのでしょうか?
上野先生
西洋薬と一緒で、漢方薬も体の状態や症状に応じて処方や量を調整する必要があります。体に合わない薬を飲み続けていると効果がなかったり、むしろ逆効果になったりするので、医師の処方に基づいて服用することが重要です。また、漢方薬はインターネットでも購入することができますが、腎臓が悪くなっていることに気づかず飲み続けて、さらに悪化するケースも見受けられます。腎臓だけではなく、肝臓や肺を痛める可能性もあるため、どういう漢方薬をどのくらい服用するかは、自己判断すべきではないと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
上野先生
自然由来のものに対して意識が高まっているのは良いことですが、漢方薬を個人で購入するのにはリスクも伴います。あくまでも「薬」と考え、その人に合ったものを飲んでこそ効果があるので、漢方薬の服用を開始したいときや、飲み続けていて不安な点があるときは、かかりつけ医に相談しましょう。
編集部まとめ
漢方薬が腎臓に与える影響や、安心・安全に服用するためのポイントについて解説していただきました。漢方薬は自然由来の成分が多いものの、適切に使用しなければ腎臓に負担をかけることもあり、自己判断で長期間服用するのではなく、医師の指導のもとで適切な処方を受けることが大切です。安全に漢方薬を取り入れて、健康な生活のサポートにしましょう。
医院情報
所在地 | 〒173-0016 東京都板橋区中板橋29-6 |
アクセス | 東武東上線「中板橋駅」 徒歩3分 |
診療科目 | 内科、リウマチ科、腎臓内科、皮膚科 |