「内視鏡検査」にもAIを使う時代に!? 検査を受ける側が気になる正確性・安全性を医師に問う

内視鏡検査はがんなどの病気を早期発見するのに、非常に役立つ検査です。特に、現在では「AI内視鏡検査」という非常に精度が高い検査も登場しています。一体、通常の内視鏡検査と、どのような違いがあるのでしょうか。今回は、「名古屋むらもと内視鏡クリニック栄院」の村元先生に、AI内視鏡検査について詳しく教えていただきました。

監修医師:
村元 喬(名古屋むらもと内視鏡クリニック 栄院)
AI内視鏡検査とは?

編集部
まず、AI内視鏡検査について教えてください。
村元先生
簡単に言えば、AIによるサポートを受けながらおこなう内視鏡検査のことです。近年、最新の内視鏡検査として注目を集めています。
編集部
もう少し詳しく教えてください。
村元先生
通常、内視鏡検査では、先端にカメラを内蔵した細い管を口や鼻、肛門から挿入し、食道、胃、十二指腸、大腸などの内部を観察します。カメラの画像はモニターに映し出され、医師はそのモニターを見ながら病変を見つけます。AI内視鏡検査は、この画像をリアルタイムに解析して「がんの疑いがある部分」を表示し、色や音で医師に知らせてくれるのです。
編集部
AIがあることで、がんなどの病変を医師が見つけやすくなるのですね。
村元先生
そうですね。AIは多くの胃がんや大腸がんの症例をディープラーニングしているため、どんなにわずかな病変でも見逃すことなく、早期発見をサポートしてくれるのです。
編集部
医療にもAIが取り入れられているのですね。
村元先生
内視鏡検査に限らず、医療の分野ではAIの導入が積極的に進められていますが、その精度を決定づけるのはディープラーニングの質と量です。AI内視鏡検査では、膨大な数のがん症例を、専門医が一つずつAIに学習をさせています。それにより、がんの見逃しを低減させることを目指しています。
AI内視鏡検査を活用するメリット

編集部
AI内視鏡検査には、どのようなメリットがあるのですか?
村元先生
「がんの見逃しを防げる」という点がメリットです。医師が直接目で見てがんを発見する場合、医師の技量や経験に左右されることが多く、場合によってはわずかな病変が見過ごされてしまう危険もあります。一方でAIの場合には、そのような危険を低減させることができ、ごく初期の小さな病変も発見できる確率が高まります。
編集部
検査精度が上がるのが一番のメリットなのですね。
村元先生
そのとおりです。例えば、当院で導入しているAI内視鏡システム(EndoBRAIN-EYE:オリンパス社)は、動画データから抽出した内視鏡画像をAIが学習することで、大腸病変を検出する確率は96.0%、病気がないと正しく診断する確率は98.0%と報告されています。これは非常に高い数値と言えるでしょう。
編集部
そのほかにもメリットはありますか?
村元先生
例えば、大腸ポリープの場合には、腫瘍性か、あるいは非腫瘍性かの鑑別が非常に重要です。なぜなら、腫瘍性のポリープはがん化する可能性があり治療が必要である一方、非腫瘍性のものはそうした必要性が低いからです。そのため、がんの予防には腫瘍性か非腫瘍性かの鑑別が大切なのです。AI内視鏡は、この鑑別を短時間で的確におこなうため、無駄のないがん予防が実現できます。
編集部
効率的な治療が可能になるのは魅力的ですね。
村元先生
AI内視鏡検査をおこなうことで、従来よりも短時間で効率よく検査をすることができ、患者さんの負担軽減にもつながります。また、がんなどの病変を見つけるだけでなく、どのような治療が必要かまで判断してくれるため、治療の効率化に役立ちます。
AI内視鏡検査の普及が期待される将来

編集部
今後はAI内視鏡検査の普及が期待されそうですね。
村元先生
はい、そう思います。現在はまだ一部の医療機関しかこのシステムを導入していませんが、今後はさらに普及すると思います。
編集部
医師が介入せず、AIだけで検査をおこなうということもあり得るのでしょうか?
村元先生
いいえ、現在のAI内視鏡検査はあくまでも医師のサポートであり、医師による内視鏡検査に勝るものではありません。実際、AI内視鏡の技術は医師が一つひとつディープラーニングさせた結果であり、AI技術は医師の技術を凌ぐものではないのです。そのため、検査の主体はあくまでも医師であり、AI技術はそれを補助するものという位置付けは変わらないと思います。
編集部
検査をおこなうのは医師であり、AIはその補助ということですね。
村元先生
AI内視鏡検査は「自動車に備わっている自動ブレーキのシステムと同じ」ということを患者さんに説明しています。一部の自動車には自動ブレーキが備わっていますが、運転しているときにいつも自動ブレーキを使うのではなく、普段は自分の足でブレーキを踏み、何かあったときの補助手段として自動ブレーキが役立っています。AIを使った内視鏡検査もこれと同じで、あくまでも検査を主導するのは医師であり、医師が見逃しているかもしれないものを拾い上げたり、どちらか判断に迷うものを正確に診断してくれたりするのにAIが一役買っています。
編集部
AIのサポートを受けながら人間が内視鏡検査を受けることで、ますます精度が上がるのですね。
村元先生
はい。人間と違い、AIにはどのようなときでも、一定の結果を出すことができるという特徴があります。人間であれば疲労や体調不良によって診断ミスは起こり得ますが、AIにはそのようなことがありません。また、医師がおこなう内視鏡検査は、医師の技量に左右される面がありますが、AI内視鏡検査は誰が操作しても同様の精度が得られます。そのため、今後は医師がAIのサポートを受けながら内視鏡検査をおこなうスタイルが普及するのではないかと予測されます。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
村元先生
大腸や胃の内視鏡検査を受けるとき、患者さんが迷われるのは「どの病院で受けるか?」ということだと思います。しかし、従来の内視鏡検査は医師の技量や経験に基づくため、経験豊富な医師とそうでない医師の間に格差が生じてしまうのは当然でしょう。しかも、どの医師が経験豊富で、内視鏡検査の精度が高いかということは、医療機関のウェブサイトだけではわかりません。その点、AI内視鏡検査を導入している医療機関であれば、どこで検査を受けても一定水準以上の結果が期待できますし、AI内視鏡検査を導入していることは医療機関のウェブサイトなどにも明記されていると思います。どこで検査を受けようか迷った時には、ぜひ、そうした情報を参考にしていただきたいと思います。
編集部まとめ
内視鏡検査の経験が豊富で精度が高い検査を実施している医療機関と、そうでないところがあるのは事実ですが、AI内視鏡検査はそうした“医療格差”を解消してくれる解決策になるかもしれません。これから内視鏡検査を受けるときにはぜひ、そうした情報も参考にしてみてくださいね。
医院情報
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アクセス | 名古屋市営地下鉄東山線「新栄町駅」 徒歩2分 |
診療科目 | 内科、消化器内科、胃腸内科、内視鏡内科、肛門内科 |