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胃がんリスク調べる「ABC検査」でA判定なら胃カメラは不要? 何を調べる検査?【医師解説】

 更新日:2025/02/13

血液検査で胃がんのリスクを判定する「ABC検査」。胃がんのリスクが最も低いA判定を受けた場合、「胃がんの心配なし!」と安心してしまうかもしれませんが、本当に安心していいのでしょうか。今回は、胃がんの検査方法やABC検査の判定が持つ意味などについて、「まつい内科医院」の松井太吾先生にお話を伺いました。

松井 太吾

監修医師
松井 太吾(まつい内科医院)

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東邦大学医学部医学科卒業。その後、仙北組合総合病院(現・秋田県厚生農業協同組合連合会大曲厚生医療センター)、東邦大学医療センター大森病院、社会保険中央総合病院(現・JCHO東京山手メディカルセンター)、日産厚生会玉川病院で経験を積む。2022年、神奈川県横浜市に位置する「まつい内科医院」の副院長に就任。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会専門医、日本内科学会認定医。

胃がんの検査にはどんな種類がある?

胃がんの検査にはどんな種類がある?

編集部編集部

胃がんの検査には、どんなものがあるのでしょうか?

松井 太吾先生松井先生

一般的には、胃カメラが最も知られていると思います。胃カメラは、食道から胃・十二指腸までの粘膜を小型カメラで直接観察して、病変を見つけ出す検査です。また、胃がんだけでなく「逆流性食道炎」「食道がん」「胃潰瘍」「胃ポリープ」「十二指腸潰瘍」などの病気を発見することもできます。

編集部編集部

直接観察できるというのは便利ですね。

松井 太吾先生松井先生

そうですね。カメラの性能も日進月歩で良くなっており、わかりにくい小さな病変も見つけやすくなっています。そして、異常が見つかった場合には、その場で組織を採取して生検ができるのも大きな特徴です。

編集部編集部

「胃カメラは痛い・苦しい」といった話を聞くこともあります。

松井 太吾先生松井先生

胃の状態を詳しく観察できて病変の切除もできるという利点がある一方、口や鼻からカメラを挿入するので、人によっては苦痛を伴う可能性があります。体質によりますが「喉の反射が強く出てしまい、とても苦しかった」という人もいます。ただ、麻酔や鎮静剤などで負担を軽減することも可能です。

編集部編集部

胃カメラ以外に胃を調べる検査はありますか?

松井 太吾先生松井先生

バリウム検査」も胃の状態を確認する際に用いられます。バリウム(造影剤)を飲んでからレントゲンで撮影をおこない、胃の形状や異常をチェックします。検査に伴う苦痛が少ないという点ではメリットがありますが、胃の粘膜を詳細に観察するという目的では、胃カメラの方が優れていると言えるでしょう。

血液検査で胃がんのリスクがわかる「ABC検査」とは?

血液検査で胃がんのリスクがわかる「ABC検査」とは?

編集部編集部

検査方法は多岐にわたるのですね。

松井 太吾先生松井先生

そうですね。先ほど「粘膜表面には胃カメラの方が良い」と言いましたが、例えばスキルス胃がんの一部は、バリウム検査の方が有用なこともあります。そのため、どちらか一方の検査だけでなく、組み合わせることをおすすめします。さらに、胃がんの検査方法としては比較的新しい「ABC検査」という方法もあります。

編集部編集部

ABC検査とはなんですか?

松井 太吾先生松井先生

簡単に言えば、採血だけで胃がんのリスクを調べることができる検査です。ABC検査は、胃がんに深く関係する2つの要素である「ピロリ菌の感染」と「それに伴う胃粘膜の萎縮」の状態を調べることで、胃がんのリスクを分類します。胃がんの発症そのものを直接確認することはできませんが、将来的に胃がんになる可能性がどの程度高いかを評価することが可能です。

編集部編集部

もう少し詳しく教えてください。

松井 太吾先生松井先生

まず、血液検査でピロリ菌が検出されなかった場合、胃がんのリスクが最も少ない「A群」となります。ピロリ菌が検出された場合、胃粘膜の状態を表す「血中ペプシノゲン値」の数値により、「B群」もしくは「C群」と判定されます。ただし、胃粘膜の萎縮が著しく、最も胃がんリスクの高い「D群」になると、胃粘膜にピロリ菌が住めなくなるため、ピロリ菌は検出されなくなります。

ABC検査でA判定なら胃カメラは不要?

ABC検査でA判定なら胃カメラは不要?

編集部編集部

ABC検査を受けると、胃がんになりやすいかがわかるのですね。

松井 太吾先生松井先生

はい。もし胃がんリスクが高いと診断された場合は、検査や検診をこまめに受けた方がいいと判断できます。また、ピロリ菌が検出された場合、除菌することで、今後の胃がん発症のリスクを下げることも可能です。一方で、例えば「A群(A判定)」だったとしても、胃がんのリスクがゼロというわけではないことは知っておきましょう。

編集部編集部

ABC検査でA群だった場合、どういったタイミングで検査や検診を受けたらいいのでしょうか?

松井 太吾先生松井先生

胃カメラでの検査を一度もやったことのない人は、ABC検査の結果がA群であっても、一度は受けた方がいいと個人的には考えています。その結果で、今後の対応、検査や検診を受ける頻度などを医師と相談していけば良いと思います。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

松井 太吾先生松井先生

ABC検査は、血液検査で胃がんのリスクがわかるという点で有用な検査ですが、どちらかというとハイリスクと診断された人が危機感を持つことで、先延ばしせずに胃カメラなどの検査を受けてくれるという点で意味があると思っています。「A群だから安心」ということではなく、「胃がんになる確率は低い、でもゼロではない」状態であると認識していただけたらと思います。検診で胃カメラ検査を導入している医療機関も増えているので、まずは一度、胃カメラ検査を受けることをおすすめします。

編集部まとめ

胃がんの検査方法やABC検査について解説していただきました。ABC検査でA判定を受けた場合、胃がんのリスクは低いとされますが、胃がんが発生する可能性はゼロではありません。そのため、定期的に胃カメラを受けることが大切です。特に気になる症状がある場合や家族歴がある人などは、自身の健康を守るためにも、適切に検査を受けましょう。

医院情報

まつい内科医院

まつい内科医院
所在地 〒231-0064 神奈川県横浜市中区野毛町1丁目11−1
アクセス JR京浜東北線「桜木町駅」 徒歩3分
みなとみらい線「馬車道駅」 徒歩8分
診療科目 内科、消化器内科、肝臓内科、内視鏡内科

この記事の監修医師

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