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「心不全」は治らない? 原因・症状は? 知っておきたい予防法も医師が解説!

 公開日:2025/01/17

心不全は、一度かかると完治は難しい一方で、発症をある程度予防することができる病気です。心臓リハビリテーション」は、心不全の発症予防や再発防止に大きな効果が期待される治療プログラムです。今回は、心不全の原因や症状、心臓リハビリテーションがもたらす心不全予防の効果について、「飯田医院」の飯田圭先生に解説していただきました。

飯田 圭

監修医師
飯田 圭(飯田医院)

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日本大学医学部卒業。その後、国立循環器病研究センター心臓血管内科レジデントとして勤務、日本大学医学部内科学系循環器内科学分野准教授などを務める。2007年、埼玉県ふじみ野市に位置する「飯田医院」の副院長に就任。日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心臓リハビリテーション学会指導士、日本医師会認定健康スポーツ医。

心不全とは?

心不全とは?

編集部編集部

まず、心不全について教えてください。

飯田圭先生飯田先生

心不全は「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」と定義されています。「心筋梗塞」「狭心症」「心筋症」「心臓弁膜症」「高血圧」「不整脈」などが原因で起こります。

編集部編集部

実際のところ、心不全の人は多いのでしょうか?

飯田圭先生飯田先生

非常に多いと思います。日本では現在、心不全の患者さんが約120万人いると言われています。特に高齢者に多いのが特徴で、64歳以下の心不全の患者数は10万人あたり20人ほどですが、75歳以上になると10万人あたり300人以上、つまり15倍以上になるのです。

編集部編集部

心不全は治る病気なのですか?

飯田圭先生飯田先生

残念ながら、心不全に一度なったら完治させることは難しいため、症状を改善させたり、進行を予防したりすることが心不全治療の目標となります。早期発見することが大事なので、「長い距離を歩けなくなった」「階段ですぐに息切れするようになった」などが気になる人は、「年齢のせい」と思わずに、かかりつけ医やお近くの循環器内科に相談しましょう。

心不全を予防する「心臓リハビリテーション」とは?

心不全を予防する「心臓リハビリテーション」とは?

編集部編集部

心不全は治らない病気なのですね。

飯田圭先生飯田先生

そうですね。しかし、心不全は「予防」することができます。特に先述した心筋梗塞や狭心症、高血圧、さらに糖尿病などは心不全発症のリスクが高いので、積極的に心不全予防に取り組んでいただきたいと思います。

編集部編集部

心不全予防とは、具体的に何をすればいいのでしょうか?

飯田圭先生飯田先生

ここ数年で、心臓リハビリテーションが大きく取り上げられています。リハビリテーションと聞くと、手足の運動機能に対するトレーニングなどを思い浮かべることが多いかもしれませんが、心臓リハビリテーションは、心臓そのものを鍛えるのではありません。体力や血管機能を向上させることで心臓への負担を減らし、心疾患の悪化や再発を防ぐことを目的とした治療プログラムです。

編集部編集部

つまり、運動をするということでしょうか?

飯田圭先生飯田先生

もちろん運動療法も大事ですが、心臓リハビリテーションのプログラムはそれだけではありません。運動療法に加えて、食事などの生活習慣の改善やストレスマネジメントなども含まれます。これらの総合的なアプローチによって、様々な効果があるという研究結果がこれまでに数多く示されています。

編集部編集部

具体的には、どのような効果があるのですか?

飯田圭先生飯田先生

体力や筋力が向上することで、息切れなどの症状が軽くなり、楽に動けるようになるだけでなく、「血管が広がりやすくなり、血液の循環が良くなる」「自律神経の働きが良くなり、不整脈の再発予防につながる」などが報告されています。さらには、「インスリンの効きが良くなり、血糖値(糖尿病)が改善された」「精神面でも自信がつくことで、不安やうつ状態が改善された」などの報告も上がっています。

心臓リハビリテーションの適応・流れ・費用

心臓リハビリテーションの適応・流れ・費用

編集部編集部

どのような人が心臓リハビリテーションの適応なのですか?

飯田圭先生飯田先生

心不全と診断されたことがある人はもちろんのこと、「心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患の既往がある人」「過去に心臓の手術を受けたことのある人」「大動脈疾患がある人」「下肢(脚)の血管に動脈硬化がある人」も心臓リハビリテーションの適応となります。ご自身が適応になるのかわからない場合は、主治医や、お近くで心臓リハビリテーションをおこなっている施設に問い合わせてみてください。

編集部編集部

心臓が悪くても運動した方がいいのですね。

飯田圭先生飯田先生

そのとおりです。心臓に病気があったり、心臓の手術を受けたりした人の中には、運動が必要だとは理解していても、どのような運動をどれくらいおこなえばいいのか分からず、不安を感じることも多いと思います。心臓リハビリテーションでは、医師をはじめ看護師や理学療法士、管理栄養士、薬剤師など様々な専門職が連携して、運動や栄養、生活習慣の改善を総合的に指導します。単なる運動とは違い、患者さん一人ひとりの状態に合わせて提供する専門的なプログラムなので、ぜひ安心して受けていただけたらと思います。

編集部編集部

費用についても気になります。

飯田圭先生飯田先生

先述した適応に当てはまる人は、医療保険が使えます。負担割合により金額が異なりますが、3割負担の場合は1回1時間ほどで約2000円、1割負担の場合は約700円となります。心臓リハビリテーションに必要な各種の検査(運動負荷試験、心エコー、血液検査など)や体力測定(身体機能評価)、栄養指導などをおこなった場合は、料金が別途かかります。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

飯田圭先生飯田先生

心臓リハビリテーションは多くのメリットがあるにもかかわらず、まだ認知されていないと感じます。一度かかると完治しない心不全を事前に予防できるため、心臓病を患っていない人にも理解が広まってほしいですね。必要な人にきちんと届けられるように、我々医療従事者も今後ますます体制を整えていきたいと思っています。

編集部まとめ

心不全は進行性の病気で、一度かかると完治しないため、予防と早期発見が大事です。心臓リハビリテーションを生活に取り入れ、無理のない範囲で予防に取り組んでいきましょう。興味のある人は、ぜひ主治医や心臓リハビリテーションをおこなっている施設に問い合わせてみてください。

医院情報

飯田医院

飯田医院
所在地 〒356-0038 埼玉県ふじみ野市駒林元町2-1-37
アクセス 東武東上線「ふじみ野駅」 徒歩12分
診療科目 内科、循環器内科、呼吸器内科

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