【闘病】原発で「肺カルチノイド」という希少がん発覚 治療中の『乳がん』とは関係なし
坪井さん(仮称)は、乳がん(坪井さんの乳がん闘病体験談)切除術のためにおこなった検査がきっかけで、「肺カルチノイド」という別のがんが見つかりました。 どちらのがんも症状は全くなく、画像検査で見つかったものでした。「症状のないうちから検査や検診を受けることでがんが見つかり、早期に治療が開始できた」という経験を2度も体感した坪井さんに、検診を受けることの大切さや、早期治療への思いを語ってもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年8月取材。
体験者プロフィール:
坪井 久子(仮称)
1963年生まれ、千葉県在住。2022年、乳がん手術の前に撮影したPET-CTで肺に6mmの影が写る。乳がん治療が落ち着いた2022年冬から肺の検査を始め、大きさの変化の様子などから、肺カルチノイド・ステージ1の疑いと伝えられる。2023年7月、右肺中葉部の切除手術を受け、経過は順調。40日後に職場復帰。半年後には3kmの長距離走の大会に出場した。早期発見・早期治療の大切さを伝えたい。
記事監修医師:
川島 峻(新宿アイランド内科クリニック院長)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
偶然に見つかった肺のがん
編集部
最初に不調や違和感に気づいたのはいつですか?どういった状況だったのでしょうか?
坪井さん
不調も違和感もありませんでした。人間ドックをきっかけに乳がんが見つかり、転移の有無を確認する目的で、手術前に全身のPET-CTを撮りました。その時に、肺に小さな異常も見つかり、がんがあるかもしれないと説明を受けたのが最初でした。
編集部
PET-CT検査とはどういう検査ですか?
坪井さん
PET-CT検査は、がん細胞が正常細胞よりも多くのブドウ糖を摂取する性質を利用した検査です。FDGという薬剤を体内に投与し、特殊なカメラで撮影し、X線検査やCT検査の画像と組み合わせることで、がんの部位や形態を特定できます。
編集部
その異常に対してどうされたのですか?
坪井さん
その時は、小さいものだったことと、乳がんの部分切除を控えていたので様子を見ることにし、乳がんの治療がひと段落して数か月後に、乳腺科の先生に「肺を調べて欲しい」と伝えて、呼吸器内科につないでもらいました。そこで肺の組織を採る生検を受けました。「肺の組織を取る」なんて痛いのではないかと心配しましたが、しっかり麻酔を使ってもらい、全く苦痛無く検査していただきました。
編集部
告知はどのような形でしたか?
坪井さん
生検では、うまく病変の組織を採ることができなかったようですが、ほかのいろいろなデータや大きさの変化などから、「肺カルチノイド」という進行の遅い希少がんの可能性が高いと告げられました。そして、今はステージ1であり、切除だけの治療となるという説明を受けました。その時点での自覚症状はなく、進行も遅いがんとは言われましたが、乳がんの早期発見・早期治療で体に負担の少ない治療ができていたので、今回も早期に治療しようと思いました。
編集部
どんな病気なのでしょうか?
坪井さん
右肺の中葉に「肺カルチノイド」というがんができていて、進行が遅いものの、中央の気管に近いところなので、将来的にがんが大きくなると呼吸器症状が出てくるとのことでした。今回の肺カルチノイドは原発で、「その前年に見つかっていた乳がんとは関係ない」とも言われました。
切除術の後、半年で3kmの長距離走に挑戦
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
坪井さん
手術で切除すると説明がありました。手術は胸腔鏡を使ったもので、メスで切開するわけではなく、手術時間は3時間、入院期間は7~10日、入院中に死亡する可能性は1%以下ということでした。退院後は薬などを使わなくてもよいとのことでした。
編集部
乳がんに続き、新たながんの存在を知ったときの心境について教えてください。
坪井さん
早期がんだったので、がんの転移の不安などはありませんでしたが、「2つめのがんを抱えている」という重い気持ちと、痛みに対する恐怖はありました。 胸腔鏡手術なので小さな傷が3つだけなのですが、傷口は小さくても術後に痛みがあるのは前回の乳がん手術で体験済みだったので、2年連続で痛いがんの手術をすることで気分が沈みがちでした。
編集部
実際の治療はどのように進められましたか?
坪井さん
入院した翌日に手術をしました。穴をあける3箇所のうち1箇所は、前回の乳がん手術と同じ穴を使ったようで、傷は2つ増えただけでした。術後も痛みを感じましたが、硬膜外麻酔を使うとすっと痛みが消えました。
実際の手術跡
編集部
手術後はどのように過ごされましたか?
坪井さん
入院中に病棟の廊下を歩いてリハビリをしました。筋肉の回復だけでなく、呼吸器の回復を促すという意味もありました。最初はゆっくり痛みに耐えながら歩きましたが、退院する頃にはスムーズに歩けるようになっていました。やがて、採取した組織を検査してもらったところ、予想通り肺カルチノイドであったと後日教えていただきました。
編集部
受診から現在に至るまで、何か印象的なエピソードなどあれば教えてください。
坪井さん
手術の前にスポーツジムのトレーナーさんに相談し、呼吸器を鍛えるためのウォーキングを教わりました。そのおかげもあってか、手術の数日後には歩けるようになり、肺を部分切除してもしっかり歩けることに嬉しく思いました。術後半年で、3kmの長距離走の大会に出ました。ゆっくりなペースでしたが、回復できたことが実感できて嬉しく思えました。術後1年の現在、術前と同じように運動ができています。息苦しさもありません。
がんが見つかったら、怖がらずに早期治療
編集部
病気の前後で変化したことを教えてください。
坪井さん
くよくよしない。悪いところが見つかったらすぐに治療するということです。いまでは歯の治療にもしっかり通っていますし、先日は足に腫物ができたのですが、病院に行き取ってもらいました。「早めに医療にかかった方が苦痛も少なく、長い目でみると経済的にも良いのだ」と実感しています。
編集部
今までを振り返ってみて、後悔していることなどありますか?
坪井さん
がんになった原因はなんだろうと考えましたが、あまり思い当たることがありません。強いていうなら、これまでの人生、健康を顧みないで働きすぎたかなと思います。今もフルタイムで働いていますが、「疲れたら休む」ように心がけています。
編集部
現在の体調や生活はどうですか?
坪井さん
元気です。2年連続の手術で気分が沈むこともありましたし、「なんで私が」と思うこともありました。でも、最近は手術したことも忘れるほど心も体も元気で、今日もジムに行ってきました。
編集部
医療機関や医療従事者に望むことはありますか?
坪井さん
感謝しかありません。入院中にとてもよくしていただきました。医師の指示に従って、早く手術を決意して良かったと思っています。
編集部
最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
坪井さん
自覚症状は全くなく、PET-CTで見つかった肺カルチノイドでした。「大きくなって見つかるよりも、ステージ1で見つかって幸運だった」と思っています。「がんが見つかったら、怖がらずにさっさと切除する」ことで回復も早く、その後も健康でいられると思います。
編集部まとめ
2年連続となるがん手術で、気分が沈んだり、痛みに対する恐怖を感じたりした時期もあったとのことですが、術後半年で3kmの長距離走に挑戦するほどの回復は感服します。2年連続は不運とも取れますが、検査を受け続けたからこそと考えれば、その大切さがあらためてわかります。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。