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【闘病】「乳がん」を早期発見・治療できた理由 『わずかな異変』から発見できたのは…

 公開日:2025/01/02
【闘病】「乳がん」を早期発見・治療できた理由 なぜ検査でわずかな変化を確認できた?

乳がんになる女性の割合は増加傾向にあり、今では一年に9万人以上が乳がんと診断されているというデータもあるほどです。お話を聞いたのは、自覚症状は全くなかったにもかかわらず、人間ドックをきっかけに乳がんが発見された坪井さん(仮称)。予期せぬ診断に驚きつつも、手術と放射線治療を経て、今では元気に仕事に励んでいます。乳がん経験を通じて、感じたことや読者に伝えたいことを話してもらいました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年8月取材。

坪井久子さん

体験者プロフィール
坪井 久子(仮称)

プロフィールをもっと見る

1963年生まれ、千葉県在住。自覚症状なく2021年の12月に受けた人間ドックがきっかけで、2022年、マンモトーム生検を行い3月に乳管がんと診断される。4月に部分切除手術、7月に放射線治療16回を受け、3カ月の休職後、職場復帰。現在は、ホルモン治療の薬を飲みながら、元気に働いている。部分切除の良さ、早期発見・早期治療の大切さを伝えたいと応募。

寺田 満雄

記事監修医師
寺田 満雄(名古屋市立大学病院乳腺外科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

きっと大丈夫、と思っていた

きっと大丈夫、と思っていた

編集部編集部

最初に不調や違和感に気づいたのはいつですか?

坪井久子さん坪井さん

人間ドックでエコーとマンモグラフィを毎年受けていました。その結果、「要精検」の通知が来たのが最初です。再検査の予約をしたと知人に話すと、「私も再検査を受けたけど何でもなかったから大丈夫」という人が3人もいたので、「そんなものなんだ」という気持ちでマンモトーム生検を受けました。マンモトーム生検とは、乳房内の病変に約5mmほどの針を刺して組織を吸引・採取する検査なのですが、とにかくとても痛くて、結果がどうこう考える余裕もないうちに終わりました。

編集部編集部

そこからどのように診断となったのですか?

坪井久子さん坪井さん

マンモトーム生検の結果を聞きに行った日、医師の机の上にレポートがあり、話を聞く前に「悪性」の文字が見えてしまいました。「あんなに痛い目にあったけど、きっと何でもないと言われる」「精密検査に行ったことのある知人が3人とも何でもなかったのだから、きっとわたしも大丈夫」と思い込んでいたので、血液が逆流するような衝撃でした。頭が真っ白になりそうだったのですが、「しっかり先生の話を聞かなくちゃ」と、そこはがんばって耐えました。

編集部編集部

先生からの話はどのような形でしたか?

坪井久子さん坪井さん

非浸潤性乳がん。ホルモン陽性・ステージ0とのことでした。乳管や小葉の中にがん細胞がとどまっているのがステージ0です。検査技術の向上で、ステージ0で見つかることが増えているようです。先生は、私が傷つかないように話してくれていました。最初は頭が真っ白でしたが、十分なデータを示してくれていたので、迷うことなく信頼して治療に向かおうという気持ちが生まれました。

「わたしはがん患者なんだ」

「わたしはがん患者なんだ」

部分切除後2カ月半から始めた放射線治療の時の写真。皮膚の黒ずみは時間と共に薄らいでいった。脇に見えるのは手術跡

編集部編集部

どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?

坪井久子さん坪井さん

まず手術で病変を取れるだけ取って、その後、化学療法や放射線療法を行うという治療方針でした。

編集部編集部

そのときの心境について教えてください。

坪井久子さん坪井さん

先に、マンモトーム生検で組織を取って調べていたので、がんの顔つきや悪性度がすべてわかっており、それに基づいて提案された治療方針だったので、全面的に信頼してお任せしました。マンモトーム生検のような針生検のなかった一昔前であれば、手術をしてがんを取ったあとに調べてからでないとわからない情報です。ただ、部分切除か全摘出かは自分で決断させてもらいました。知人などで、年齢が上の人からは全摘出をすすめられましたが、私の主治医(若い女性の医師)からは部分切除をすすめられたということもあり、部分切除にすることにしました。

編集部編集部

実際の治療はどのようにすすめられましたか?

坪井久子さん坪井さん

手術はロボット手術で、傷跡は小さな三カ所のみでした。手術の結果、リンパへの転移はなかったのですが、乳管の外にわずかな浸潤があったので、ステージ0からステージ1へ変更になりました。その後、遺伝子検査(オンコタイプDX)を行いました。検査の結果、私のがんは、化学療法(抗がん剤)をしてもしなくても、転移や再発の確率は変わらないタイプとのことだったので、化学療法は行っていません。

編集部編集部

抗がん剤は使わずに済んだのですね。

坪井久子さん坪井さん

はい。がんの治療で一番怖いと思っていたのが抗がん剤だったので、この時はとても嬉しく思いました。ただ、放射線治療は行いました。治療自体は、数分間横になっているだけなのですが、連続で16回受けなくてはならない治療で、日を追うごとに、怠さや患部の肌の異常が強くなっていきました。毎日13時に治療を受けていたのですが、治療が終わって帰宅するとぐったりして眠ってしまう毎日でした。放射線治療が終わってほっとしたのも束の間、その2週間に肌荒れのピークが来ました。終わっても油断できない治療ということを実感しました。職場から、3カ月という長めの休暇をいただいていたため、治療に専念できたのが幸いでした。

編集部編集部

病気の前後で変化したことを教えてください。

坪井久子さん坪井さん

治療をした年とその翌年は、「わたしはがん患者なんだ」と気分が沈むこともありましたが、今では頭の中から出て行ったようです。毎朝、ホルモン療法のための薬を一粒飲んでいますが、わたしは心も体も元気で、教員としてフルタイムで仕事もしています。

同じところで検査していたから、わずかな変化に気づいてもらえた

同じところで検査していたから、わずかな変化に気づいてもらえた

編集部編集部

現在の体調や生活はどうですか?

坪井久子さん坪井さん

現在、治療から丸2年が経過していますが、元気です。手術の傷は、前から見たら全くわかりません。胸や脇を見ると2か所傷跡はあるのですが、普通に生活していると、そんなところは見られないので、生活に支障はありません。温泉に行っても、私が乳がんの手術をしたとは誰もわからないと思います。乳房の形も変わっておらず、手術をした右の乳房の方が、手術をしていない左よりもわずかに形が良いくらいです。また皮膚の感覚は1年で戻りました。乳房の感覚は2年でほぼ戻り、手術前と同じ下着を付けても違和感もないぐらいまで回復しています。また、私の乳がんの性質はホルモンに影響されるものなので、薬を飲んでいます。中にはそのせいで、更年期障害の症状がでる人もいるようですが、私はさほど感じていません。がんの告知の時は「なんで私が」と崩れ落ちるような気持ちになりましたし、何度か心が折れる時期もありました。2年半たった今では、乳がんだったことを忘れて生活ができています。

ホルモン療法のための薬

ホルモン療法のための薬

編集部編集部

今までを振り返ってみて、後悔していることなどありますか?

坪井久子さん坪井さん

後悔はありません。症状は全くなかったのですが、人間ドックを受けていたため早期に発見することができ、転移もほとんどない状態で治療を開始できました。早期発見・早期治療のモデルになれるケースだと思っています。

編集部編集部

医療機関や医療従事者に望むことはありますか?

坪井久子さん坪井さん

人間ドックで早期のがんを見つけていただき、最先端の検査・治療を受けさせていただきました。感謝しかありません。また、検査技術の向上、手術の技術の進歩に驚いています。これまでに多くの方の努力や戦いがあった後だからこそ、自分も乳がん患者の仲間入りをして、素晴らしい治療を受けることができたと思います。

編集部編集部

最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

坪井久子さん坪井さん

人間ドックで前年の画像と比べてのわずかな変化に気づいてもらえたので、毎年同じところで検査を受けることの大切さを感じています。私の乳がんは全く自覚症状がなく、むしろ年齢の割に元気でした。症状がなくても、がんが静かに進行している可能性はあります。検診はとても大切だと思います。早期に見つかると治療の時間も費用も苦しみも少なくて済みます。また、私の場合、がん保険に入っていたので、費用の面で非常に助かりました。読者の皆さんにも、早期発見・早期治療の大切さを知ってほしいです。

編集部まとめ

同じ医療機関で検診を受け続けることで、差異が見つけられやすいというのは理にかなった話だと思います。坪井さんも驚かれたように、検査技術や手術の技術は進歩していますが、さまざまな治療の選択肢も、早期発見あってこそ。彼女の経験が、多くの人々にとっての気づきとなることを願っています。

なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

この記事の監修医師