脇の下のトラブル「ワキガ」と「多汗症」どっち? 診断基準や対処法を医師が解説!
脇の下のトラブルとして多くの人が悩んでいる「ワキガ」と「多汗症」。一体、どのような違いがあるのか、正しく理解していますか? 適切に治療するには症状を正しく理解することが必要です。「秋葉原フロンティアクリニック」の鴫原先生に詳しく教えていただきました。
監修医師:
鴫原 康(秋葉原フロンティアクリニック)
ワキガと多汗症の違いを医師が解説
編集部
まず、ワキガについて教えてください。
鴫原先生
ワキガは「腋臭症(えきしゅうしょう)」とも言い、症状として脇の下が特異な悪臭を放ちます。アポクリン腺から出る汗が原因とされ、その汗が皮脂腺からの脂肪分などと混ざり、皮膚の常在菌で分解されることで強いにおいの原因物質が生成されます。
編集部
ワキガのある人とない人がいますが、一体何が違うのですか?
鴫原先生
ワキガの原因としては、遺伝が挙げられます。つまり、遺伝によってもともとアポクリン腺の数が多い人はワキガになりやすいのです。
編集部
ワキガの人でも、においが強い人とそうでない人がいますが、何が違うのでしょうか?
鴫原先生
においの強さは性ホルモンの分泌の影響を受けやすく、特に性ホルモンの分泌が盛んな10代後半~20代はにおいが強くなります。また、肉や脂っこい食事を好んでとると、においが強くなることもあります。
編集部
一方、多汗症とはなんですか?
鴫原先生
文字通り、異常に多くの汗をかく疾患のことです。手の平、顔、脇、足の裏、頭部など限られた部位だけで汗をかく場合もありますし、全身で汗をかく場合もあります。
編集部
なぜ、多汗症になるのでしょうか?
鴫原先生
様々な原因があります。例えば、全身に汗をかくタイプの多汗症では、ホルモンバランスの乱れや神経障害、薬剤の影響によるもの、精神的な緊張によるもの、感染症の影響によるものなどのほか、原因不明のものもあります。また、局所的に汗をかくタイプの多汗症では、精神的な緊張や神経障害によるもの、皮膚疾患などが原因となることが多いとされています。
編集部
多汗症は、ただの汗かきと違うのですか?
鴫原先生
たくさん汗をかく人は、暑い日や運動をしたときなど、外的な刺激に反応して汗をかきます。一方で多汗症の場合には、そうした刺激とは関係なく、日常生活に支障が生じるほど大量の汗をかくことがあります。季節や状況などに関係なく大量に汗をかいたり、衣服に汗染みができるほどだったりする場合には、多汗症が疑われます。
ワキガと多汗症の違い
編集部
ワキガも多汗症も、どちらも脇の下のトラブルですが、症状が違うのですね。
鴫原先生
はい。厳密に言うと、ワキガと多汗症では仕組みが異なります。ワキガはアポクリン腺から出る汗が菌などと結びついてにおいを発します。しかし、多汗症の場合には、エクリン腺から大量の汗が出ます。
編集部
アポクリン腺とエクリン腺には、どのような違いがあるのですか?
鴫原先生
人間の汗腺にはアポクリン腺とエクリン腺の2種類があり、エクリン腺はほぼ全身に存在し、気温や精神的な緊張によって汗をかきます。その一方、アポクリン腺は主に脇の下にあり、性ホルモンの影響などで分泌が盛んになります。
編集部
エクリン腺から出る汗には、においはないのですか?
鴫原先生
はい。エクリン腺から出る汗はサラサラしており、基本的に無臭です。ただし、時間が経過すると汗臭くなっていきます。エクリン腺から出る汗がにおうのか、それともアポクリン腺から出る汗がにおうのかは、においの出る場所を探してみるといいと思います。もし、脇からにおうならアポクリン腺、全身からにおうならエクリン腺から汗をかいていると判断していいでしょう。
編集部
ワキガと多汗症は、どのようにして診断するのですか?
鴫原先生
まずは問診により、どのようなときに汗をかくか、どんなときに症状が気になるかなどを詳しく確認します。また、医師がワキや汗の状態を目で確認する視診もおこないます。加えて、多汗症の重症度を調べるために、発汗量の測定をおこなうこともあります。ワキガの場合は、自覚症状がないことも多いので、脇にガーゼを挟んでいただいてにおいを確認するなど、他覚症状によって診断することもあります。
ワキガと多汗症の治療法・予防法
編集部
ワキガや多汗症は、治療することができるのですか?
鴫原先生
どちらも医療機関で治療することが可能です。ワキガの場合は、まず不規則な生活習慣や喫煙の習慣を改善するなど、生活習慣の見直しが必要です。そのほか、脇毛を処理したり、市販の制汗剤を使ったりするほか、医療用のボツリヌス毒素の局所注射や塩化アルミニウム溶液の塗布をおこなうことがあります。
編集部
ほかにも、ワキガの治療法はありますか?
鴫原先生
ワキガの原因となるアポクリン腺を手術で切除する方法もあります。さらに最近では、マイクロ波を照射してアポクリン腺を破壊する治療法もあり、高い効果を得ています。
編集部
どのように、多汗症を治療するのでしょうか?
鴫原先生
ワキガと同じく、医療用のボツリヌス毒素の局所注射や塩化アルミニウム溶液の外用をおこなうことがあります。また、近年は新しいタイプの治療薬が開発されており、拭き取りタイプの薬や塗り薬なども選択できるようになっています。そのほか、手術による交感神経の切除などをおこなうこともあります。ただし、これらの治療は効果が一時的であったり、副作用がみられたりすることもあるため、ワキガ治療同様、マイクロ波を照射して汗腺を破壊する治療をおこなう医療機関も増えています。
編集部
どちらも自分で予防することができるのですか?
鴫原先生
例えば、汗をこまめに拭き取ることは、においの原因となる雑菌の繁殖を防ぐのに有効です。スパイスの多い食べ物や辛い食べ物は発汗を促す作用があるので、食べすぎないようにしましょう。また、通気性がよく、蒸れにくい素材の衣服を身につけることも、ワキガや多汗症の予防には有効です。ただし、これらのセルフケアは、症状を軽減することはあっても治すことはできません。完全に治したい場合には、医療機関での治療を検討しましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
鴫原先生
ワキガも多汗症も、年代問わずに悩んでいる人が多い疾患です。特に多汗症の場合、ストレスが大きく関係していることから、「社会人になって急に多汗症になった」「対人関係のストレスで突然、大量に汗をかくようになった」という人も少なくありません。ワキガや多汗症は、命に関わるような重大な疾患ではありません。しかし、精神的なストレスにつながることもあり、場合によっては仕事やプライベートに支障が生じ得ます。悩んでいる場合は、ぜひ医療機関にご相談ください。
編集部まとめ
ワキガや多汗症は、自分である程度予防することはできても、完全に治すなら医療機関で治療をおこなうのが一番の近道とのことでした。症状で気になっているのであれば、ぜひ一度カウンセリングを受けてみてはいかがでしょうか。
医院情報
所在地 | 〒101-0021 東京都千代田区外神田2-3-7 アーバンファーストビル2F |
アクセス | JR・地下鉄日比谷線「秋葉原駅」 徒歩5分 JR・地下鉄丸ノ内線「御茶ノ水駅」 徒歩6分 |
診療科目 | 形成外科(わきが・多汗症) |