目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. 白内障手術で「眼内レンズ」を選ぶポイントをご存じですか? 眼科医が解説

白内障手術で「眼内レンズ」を選ぶポイントをご存じですか? 眼科医が解説

 公開日:2025/08/29

白内障の手術では、視力を回復させるために「眼内レンズ」という人工レンズを挿入しますが、そのレンズにも種類があるのだそうです。そこで白内障と、その手術で用いられる眼内レンズについて、三上 武則先生(上大岡mioka眼科)に話を聞きました。

三上 武則

監修医師
三上 武則(上大岡mioka眼科)

プロフィールをもっと見る
富山医科薬科大学医学部卒業(現・富山大学医学部)、横浜市立大学大学院医学研究科博士課程修了。その後、横浜市立大学医学部眼科、秦野赤十字病院や横須賀中央眼科などで経験を積み、現在は上大岡mioka眼科 院長。医学博士、日本眼科学会認定専門医、眼科PDT認定医、屈折矯正手術認定医、オルソケラトロジー認定医、水晶体嚢拡張リング(CTR)認定医。

白内障ってどんな病気?

白内障ってどんな病気?

編集部編集部

白内障について教えてください。

三上 武則先生三上先生

目をカメラに例えたとき、その中でレンズの役割をしているのが水晶体です。この水晶体が何らかの理由で白く濁り、視力が低下する状態が白内障です。水晶体が透明でなくなると、光がうまく目に入らず、視界がぼやけるため、日常生活に支障をきたすことがあります。

編集部編集部

どうして水晶体が濁ってしまうのですか?

三上 武則先生三上先生

水晶体が濁る原因はひとつではありませんが、大半は加齢が原因です。ほかにも、ぶどう膜炎や緑内障といった目の病気に伴って起こる白内障や、糖尿病・アトピー性皮膚炎が関連して起こる白内障、長期間のステロイド使用、遺伝や風疹などの胎内感染による先天性白内障、眼の外傷が原因で起こる白内障などもあります。

編集部編集部

白内障になる人は多いのですか?

三上 武則先生三上先生

白内障は主な原因が加齢なので、どんな人にでも起こりうる疾患で、当然のことながら高齢になるに従って発症者は増えてきます。実際に診断を受けていない人も含めると、70歳以上の人では8割以上が白内障をきたしていると言われています。

白内障治療を医師が解説

白内障治療を医師が解説

編集部編集部

白内障の治療について教えてください。

三上 武則先生三上先生

白内障と診断されても、日常生活に支障がなければ、通常は経過観察をおこないます。点眼薬による治療もありますが、これは進行を遅らせるためのもので、白内障を治すことは期待できません。

編集部編集部

白内障を根治する方法はないのですか?

三上 武則先生三上先生

根本的な治療をおこなうには、手術が必要となります。濁った水晶体を取りのぞき、代わりとなる眼内レンズを挿入するという手術で、日帰りでもおこなえる非常に安全性の高い手術です。点眼麻酔を使いますので手術中の痛みもありませんし、切開もわずかなので、傷口を縫合する必要もありません。

編集部編集部

目に新しいレンズを入れるのですね。

三上 武則先生三上先生

そうです。現在使われている眼内レンズは、医学の進歩により半永久的に品質が劣化しないため、手術後何年経過しても、基本的にレンズを交換する必要はありません。レンズには種類があり、患者さんと事前に相談して決めていくことができます。

白内障手術の眼内レンズの選び方は?

白内障手術の眼内レンズの選び方は?

編集部編集部

眼内レンズの種類について、もう少し詳しく教えてください。

三上 武則先生三上先生

眼内レンズは大きく分けると主に「単焦点眼内レンズ」と「多焦点眼内レンズ」の2種類があります。単焦点・多焦点の「焦点」というのは、要はピントを合わせる位置のことで、これが1つか、2つ以上かという点で分けられています。

編集部編集部

それぞれについて教えてください。まずは単焦点レンズから。

三上 武則先生三上先生

単焦点眼内レンズは、特定の位置をよりクリアに見たい人に適しています。このレンズでは遠方、中間距離、近方のいずれかの距離にピントを合わせることができ、選んだ距離にあるものは、多焦点レンズよりも鮮明に見えます。ただし、ピントを合わせていない距離のものを見る際には、眼鏡が必要になります。また、単焦点眼内レンズは健康保険が適用されるため、経済的な負担も軽減されます。

編集部編集部

では、多焦点レンズは?

三上 武則先生三上先生

多焦点レンズは、1つで複数の距離にピントを合わせることができ、眼鏡を使う回数が少なくなります。見える範囲は広がりますが、単焦点レンズよりもピントが少し甘く、まぶしさを感じやすいことがあります。また、慣れるまで違和感を覚える場合もあります。多焦点レンズは保険が適用されないため、こちらは一部を除き自費診療となります。

編集部編集部

選ぶときのポイントなどあれば教えてください。

三上 武則先生三上先生

手術後にできるだけ眼鏡をかけたくない人には多焦点レンズがおすすめですが、多焦点レンズは目の適応力を確認する検査や医師の診断が必要で、目の状態によっては使用できない場合もあります。また、多焦点レンズは保険が一部のみ適用される点にもご注意ください。一方、単焦点レンズは基本的にどの方にも適用可能で、幅広く利用されています。

編集部編集部

最後に読者へのメッセージをお願いします。

三上 武則先生三上先生

白内障手術は近年、とくに機器や技術の進化により、安全性が高く、負担の少ない治療方法となりました。まぶしい、見えづらいといった症状を感じたら、我慢せずに眼科で相談してみましょう。見えづらさが、近視などの屈折異常によるものか、白内障などの病気によるものかは眼科医にしかわかりません。早めの対応が、より快適な視界を長く保つための第一歩です。

編集部まとめ

白内障手術における眼内レンズの選択は、術後の生活に大きく影響する重要なポイントです。自分のライフスタイルや見え方の希望などを医師にしっかり伝え、最適なレンズを選ぶことで、快適な視界を長く保てるようになります。納得のいく選択をして、よりクリアな視野を長く維持しましょう。

医院情報

上大岡mioka眼科

上大岡mioka眼科
所在地 〒233-0002 神奈川県横浜市港南区上大岡西1-18-5 ミオカ中2階(M2)
アクセス 京浜急行「上大岡」駅より徒歩3分
横浜市営地下鉄「上大岡」駅より徒歩2分
診療科目 眼科

この記事の監修医師