「クッシング症候群」の3つの主な症状をご存じですか? 原因・治療法も医師が解説!
「クッシング症候群」という病名を聞いたことはありますか? ホルモンの異常により発症する病気で、顔が丸くなったり、血糖値や血圧が高くなったりすることで発見されることもあります。しかし、「ただの肥満」と勘違いされ、見逃されてしまうこともあるそうです。クッシング症候群を早期発見するために必要なことや主な治療法について、「小暮医院」の小暮先生に解説していただきました。
監修医師:
小暮 晃一郎(小暮医院)
クッシング症候群とは?
編集部
まず、クッシング症候群について教えてください。
小暮先生
簡単に言うと、副腎皮質ステロイドホルモンの1つである「コルチゾール」が過剰に分泌されることで、様々な症状が出現する病気の総称です。クッシング症候群は「下垂体性ACTH分泌亢進症」とも呼ばれています。
編集部
コルチゾールとはなんですか?
小暮先生
副腎で合成・分泌されるホルモンがコルチゾールで、肝臓で糖を作ったり、タンパク質の代謝に関わったり、免疫抑制に関与したり、生命を維持する上での重要な働きを担っています。しかし、このコルチゾールが過剰に分泌されると、身体に様々な症状が出現するのです。
編集部
クッシング症候群の原因はなんですか?
小暮先生
まず、クッシング症候群は大きく分けて3つに分類されます。1つが「副腎性クッシング症候群」で、副腎皮質の腫瘍などが原因でコルチゾールが過剰に分泌されるタイプです。2つ目が「ACTH依存性クッシング症候群」です。脳の下垂体から分泌される「ACTH」が、コルチゾールの分泌を調整しています。しかし、何らかの原因でACTHが過剰になり、コルチゾールがたくさん分泌されている状態をACTH依存性クッシング症候群と言います。
編集部
3つ目は?
小暮先生
コルチゾールと同じような作用を持つ薬剤を使用することで発症するクッシング症候群を、「薬剤性クッシング症候群」と言います。喘息などのアレルギー性疾患、リウマチなどの免疫疾患に対して、ステロイドを用いることもありますが、長期にわたって使用しているとクッシング症候群の症状が出現することもあります。
クッシング症候群の主な症状と自覚症状
編集部
クッシング症候群になると、どのような症状がみられるのですか?
小暮先生
- 満月様顔貌:顔に脂肪がつき、丸くなる
- 野牛肩:肩に脂肪がついて丸くなる
- 中心性肥満:体幹部分に脂肪がつくが、手足は痩せて細い
そのほかにも、皮膚が薄くなったり、皮膚に赤い色の筋が表れたり、体幹に近い部分の筋肉が衰えたりすることもあります。
編集部
なぜ、顔が丸くなったり、脂肪がついたりするのですか?
小暮先生
コルチゾールには体重を増加させたり、血糖値を上昇させたりする働きがあるためです。しかしその一方、筋肉自体に障害が出たり、神経細胞が変形したりすることで手足は痩せて細くなるなど、筋力の低下がみられるようになります。
編集部
そのほかに、どのような症状で自覚すればいいですか?
小暮先生
健康診断などで血糖値や血圧、コレステロール値が上昇することで再検査となり、病気の発見につながるかもしれません。また、「月経異常」「うつ症状」「骨粗しょう症」などの症状がみられることもあります。
編集部
どのような症状がみられたら、医療機関を受診すべきでしょうか?
小暮先生
「食べる量は変わっていないのに太ってきた」「顔が丸くなってきた」「肩の上に脂肪が乗ってきた」というような場合は、内分泌内科の受診をおすすめします。また、「お腹が出てきた」「皮膚が薄くなってあざができやすくなった」「筋力の低下が著しい」といった症状がみられる場合も受診を推奨します。加えて、生活する上で支障が生じるのであれば、念のため医療機関で相談しましょう。
クッシング症候群の検査と治療法
編集部
クッシング症候群が疑われるときには、どのような検査をおこなうのですか?
小暮先生
まずは血液検査をおこない、血液中のACTH値やコルチゾール値を測定します。通常、これらの数値は早朝高くなり、夜間に低くなる傾向があります。また、ストレスによっても変化しやすいため、測定するときには少なくとも早朝と夜間にそれぞれ安静にした状態で検査をおこない、日内変動の様子を確認します。
編集部
そのほかには、どのような検査をおこないますか?
小暮先生
CT検査やMRI検査などの画像検査で、副腎や下垂体に腫瘍があるかを確認します。そのほか、薬剤を服用してホルモン値がどう変化するか測定する、内分泌の負荷試験もおこないます。
編集部
クッシング症候群であることがわかったら、どのような治療をおこなうのですか?
小暮先生
副腎や下垂体に腫瘍があることが原因となっている場合には、腫瘍を摘出する手術が必要になります。副腎は両側に1つずつあるため、片方を摘出してももう片方がホルモンを分泌することができますが、術後の一定期間はその機能が不十分になることもあります。その場合は、内服でホルモンを補います。腫瘍が小さくて特定できなかったり、両側の副腎に腫瘍があったりする場合には、薬物療法をおこなうことでコルチゾールの合成を阻害します。
編集部
そのほかの2つのタイプのクッシング症候群に対しては、どのような治療をおこなうのでしょうか?
小暮先生
ACTH依存性クッシング症候群についても同様に、腫瘍ができていれば切除術をおこないます。他方、薬剤性クッシング症候群については、ベースとなっている慢性疾患の治療を優先しておこないます。ステロイドを長期間使用していると、休薬したり、断薬したりすることはなかなか難しいのですが、ほかの薬剤に切り替えられる場合には、そうした方法も検討します。また、高血圧や高血糖などに対しては、症状に応じた治療をおこないます。
編集部
クッシング症候群を放置するとどうなるのですか?
小暮先生
通常であれば感染しにくい細菌や真菌、ウイルスなどに感染しやすくなったり、心血管疾患のリスクが上がったりすることで、寿命が短くなるとも言われています。「治療をしないと5年生存率が50%まで低下する」という報告もあるため、症状に気づいたらできる限り早く医師に相談しましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
小暮先生
体重や身体的な変化に不安があれば、ぜひ内分泌内科を受診してほしいと思います。お近くに内分泌内科がない場合には、一般内科でも大丈夫です。放置すると危険なこともあるので、「お腹周りが出てきて、皮膚に割れ目が目立つようになった」「肩が丸くなってきた、もり上がってきた」など、クッシング症候群に特徴的な所見がみられたら、早めにご相談いただければと思います。
編集部まとめ
クッシング症候群はあまり聞きなれない言葉ですが、放置すると感染症にかかりやすくなるなど、様々なリスクが上昇します。クッシング症候群に特徴的な体の異変がみられたら、早めに受診しましょう。
医院情報
所在地 | 〒376-0011 群馬県桐生市相生町2丁目847-2 |
アクセス | 東武鉄道「相老駅」 徒歩8分 |
診療科目 | 内科 |