「変形性膝関節症」になりやすい人の特徴 とくに注意した方がいい2タイプの人とは?
現在日本では高齢化に伴い、変形性膝関節症を発症する人の数が増えています。初期のうちに気づくには、一体どのような症状に注意すれば良いのか、またどのような人が発症しやすいのかなど、増本整形外科クリニックの増本先生に教えてもらいました。
監修医師:
増本 項(増本整形外科クリニック)
変形性膝関節症とは?
編集部
変形性膝関節症とはなんですか?
増本先生
主に加齢や外傷により膝関節の軟骨がすり減ったり、変性したりして、痛みや関節の変形を引き起こす疾患のことをいいます。細かく分けると二つのタイプがあり、加齢を原因として発症するものを一次性といいます。それとは別に二次性のものもあり、こちらは骨折や靭帯・半月板損傷などの外傷や感染の後遺症として発症するタイプのものをいいます。
編集部
変形性膝関節症は、どのような人がなりやすいのですか?
増本先生
加齢を原因として発症することが多いため、高齢になるほど罹患率が高くなります。また、膝関節を支える筋肉が、男性に比べて女性の方が弱いことから、男女比は1:4と、女性に多くみられることがわかっています。
編集部
どれくらいの年齢になると発症しやすいのですか?
増本先生
一般に、女性は40歳以降、男性では50歳以降の発症が多いとされています。そのほかにも、太っている人や重いものを運ぶ仕事をしている人、仕事やスポーツなどで膝の負荷が高い人なども変形性膝関節症を発症しやすくなります。
編集部
遺伝することもあるのですか?
増本先生
はい。変形性膝関節症の発症には遺伝的素因が関わることもあることがわかっています。そのほか、もともとO脚の人も膝の内側に負担がかかりやすく、変形性膝関節症を発症しやすいとされています。
編集部
そのほかにも変形性膝関節症を発症しやすい人はいますか?
増本先生
研究によると、認知症の人が発症しやすいことがわかっています。認知症になると運動量が減り、過体重になる人が多いためです。
変形性膝関節症の初期症状
編集部
変形性膝関節症の初期症状には、どのようなものがありますか?
増本先生
まず、膝の痛みを感じることが多くなります。特に多くの場合、膝の内側に負荷がかかりやすくなることから、膝の内側の軟骨がすり減り、関節の隙間が狭くなります。そのため、膝の内側に痛みを感じやすくなります。
編集部
そのほか、どのような症状が見られますか?
増本先生
起きたときや動作のはじめに、膝の違和感や動かしにくさを覚えるようになります。なんとなく膝がこわばる感じがしたり、重だるさを覚えたり、鈍痛を感じたりすることが増えるようになります。また、「長い距離を歩いた後に膝に痛みを覚え、休むと治る」というのも、典型的な症状です。しかし、しばらく体を動かしていると痛みやこわばりを感じなくなるので、多くの人が膝の異変を見過ごしてしまいがちです。
編集部
進行するとどうなるのですか?
増本先生
膝の痛みのために正座ができなくなったり、深く屈む動作をやりづらくなったりします。また階段の上り下りが辛くなるのも中期症状です。そのほか、「これまではしばらく休んでいたら痛みが治っていたのが、休んでも痛みが消えなくなった」というのも中期症状の典型です。膝関節の炎症が進んで、腫れや変形が目立つようになります。
編集部
さらに進むとどうなりますか?
増本先生
末期になると、安静にしていても痛みがでたり、夜眠っていても痛みのために起きてしまったりすることがあります。歩いたり、座ったりといった日常的な動作が困難になり、やがて膝の変形が進んで足を真っ直ぐ伸ばすことができなくなって、歩行が難しくなります。
変形性膝関節症を早期発見するために
編集部
変形性膝関節症は早期発見が大事な疾患ですか?
増本先生
はい。早期のうちは保存治療といって、薬を使用したり、運動療法で膝を支える筋力をつけたりすることで、症状の軽減が期待できます。しかし、症状が進むと手術をしなければならないこともあります。そのため症状に気づいたら放置せず、できるだけ早いうちに治療を開始することが必要です。
編集部
どのような症状に気づいたら、受診したら良いでしょうか?
増本先生
膝関節に痛みや腫れが見られたら、できるだけ早めに医師の診察を受けましょう。特に、痛みが2週間以上続いている場合には受診をお勧めします。「歳をとると膝が痛くなるのは当たり前」といって受診を見送る人も多いのですが、初期であれば医療の介入により症状の進行を抑えることができます。不安があれば早めにご相談ください。
編集部
特に、どんな人は要注意ですか?
増本先生
たとえば、20歳以降に徐々に体重が増えてきた人は要注意です。膝に大きな負荷がかかっている恐れがあります。それから、20~30歳代で関節の靭帯損傷を起こした人も要注意。二次性の変形性膝関節症を発症するリスクが高くなりますので、膝に違和感を覚えたら早めに受診してください。
編集部
そのほかにも注意が必要なのは、どんな人ですか?
増本先生
歩いているときに不安定感を訴える人も、早めに診察を受けることをお勧めします。歩行中に膝がしっかりしない、膝がガクガクするという場合、変形性膝関節症を発症すると変形が早く進む可能性があります。この場合には早めに整形外科を訪れ、できれば動作解析を行ってもらってください。必要があれば理学療法士による運動指導を受けることをお勧めします。
編集部
変形性膝関節症だった場合、自分で治すことはできますか?
増本先生
いいえ、一度擦り減ってしまった軟骨は、自然治癒を見込むことができません。放置するとどんどん関節の変形が進み、症状が悪化します。特に女性は40代、男性は50代以降で膝に違和感を覚えたら、早めに受診するようにしましょう。仕事内容によっては30代など若い人でも膝関節の変性が進み、変形性膝関節症を発症することがあるので、注意しましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
増本先生
変形性膝関節症の診察で大切なのは、症状や痛みなどを客観的にスコアリングすることです。たとえば変形性膝関節症による痛みや機能障害などの尺度としてWOMACというものがありますが、これらを活用して症状を客観的に数値化することで、回復の度合いがわかりやすくなりますし、リハビリをする上での励みにもなります。変形性膝関節症に悩んでいる場合は、こうしたスコアリングを治療に取り入れている医療機関を受診することをお勧めします。
編集部まとめ
高齢化に伴い、患者数が増加する変形性膝関節症。「歳を取ったら膝が痛くなるのは当然」などと油断せず、違和感を覚えたら早めに診察を受けることが、早期回復の鍵になります。ひとりで悩まず、できるだけ早く受診するようにしましょう。
医院情報
所在地 | 〒167-0051 東京都杉並区荻窪5-30-17 |
アクセス | JR「荻窪」駅南口より徒歩1分 |
診療科目 | 整形外科、スポーツ整形外科 |