男性更年期障害が「いつなってもおかしくない」病気なワケ【やる気でない人は注意】
更年期障害というと女性のイメージが強いかもしれませんが、実は、男性にも起こることがあります。しかも女性に比べて、男性の更年期障害は発症の年齢にばらつきがあるという特徴があります。男性の更年期障害の症状や注意点などについて、ゆきがや泌尿器クリニックの三山先生に詳しく教えてもらいました。
監修医師:
三山 健(ゆきがや泌尿器クリニック)
男性の更年期障害とは?
編集部
男性の更年期障害とはなんですか?
三山先生
男性の更年期障害とは加齢性腺機能低下症、LOH症候群と呼ばれる疾患です。一般には、加齢に伴う男性ホルモンの分泌量低下が原因として発症します。
編集部
更年期障害というと、女性のイメージが強くあります。
三山先生
確かに一般的な認知度でいえば、女性の更年期障害の方が上かもしれません。女性の更年期障害は、閉経の前後5年間に起こる心身の不調のことを言い、女性ホルモンの分泌量が低下することで起こります。一方、男性においても、男性ホルモンの一種であるテストステロンの分泌量が減少することで、更年期障害が起こります。
編集部
男性の場合も女性と同様、性ホルモンの減少で起きるのですね。
三山先生
ただし、更年期障害は症状の強さと検査値が相関しないことがあります。実際、「本当はメンタルの不調だったのに、たまたま男性ホルモンの数値が低かったために更年期障害と診断されてしまった」というケースや、反対に「男性ホルモンの数値が正常だったためにうつ病と診断されてしまったけれど、本当は更年期障害だった」というケースもあります。そのため診断では問診が重要。検査値だけを判断基準としないことが大切です。
編集部
男性の場合、どのような症状が見られるのですか?
三山先生
主に、身体症状、精神症状、性機能症状の3つに分類されます。身体症状では疲れやすくなったり、倦怠感を覚えたりするほか、発汗やほてりが起きたりします。また、肥満やメタボリックシンドロームになりやすかったり、頻尿の傾向が強くなったりします。
編集部
精神症状では?
三山先生
イライラ、不安、パニック、うつ、不眠、興味や意欲の喪失、集中力や記憶力の低下といった症状が見られるようになります。くわえて、性機能症状ではEDや性欲の低下などが見られることがあります。
男性更年期障害の特徴
編集部
男性の更年期障害は、だいたい何歳くらいで起きるのですか?
三山先生
男性ホルモンの分泌量は、20歳くらいをピークに少しずつ減少していきます。注意したいのが、女性と違って緩やかにホルモンの分泌量が減少していくということです。女性の場合、閉経の前後5年間で女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が急激に減少します。そのため、この時期に更年期障害が起こりやすいのですが、閉経して5年くらい経つとホルモンバランスが落ち着くのに伴い、徐々に更年期障害の症状がおさまってくることが一般的です。
編集部
男性の場合は違うのですか?
三山先生
男性の場合、そのような急激な変化がなく、20歳以降は緩やかにホルモンの分泌量が減少していきます。裏を返せば男性の場合、いつでも更年期障害が起きる可能性があるということ。実際、早い人では30歳代で症状が出現することもあります。
編集部
女性の場合は閉経して5年くらい経つと症状がおさまるということでしたが、男性の場合はどうでしょう?
三山先生
男性の場合には女性と違って大きな変化が見られないため、はっきりとした終わりのサインがないとされています。そのため、思っているよりも長く症状を引きずることがあります。
編集部
男性の更年期障害は終わりがわかりづらいのですね。
三山先生
はい、女性と違って男性の更年期障害は、「始まりがわかりづらく、終わりのサインもない」のが特徴です。また女性の更年期障害に比べ、社会的な認知度もいまいち高くないため、誰にも相談できずにひとりで悩んでいる男性が多いのも現状です。
編集部
人知れず更年期障害で悩んでいる男性も多いのですね。
三山先生
注意したいのは、やる気が出ない、集中力がない、うつっぽいなどの理由でメンタルクリニックを受診し、うつ病と診断されてしまうケース。実際は更年期障害の症状としてうつなどが現れているにも関わらず、クリニックでうつ病と診断されてしまったため、誤った治療を長く続けているケースも多いのです。うつ病の治療を続けてもあまり効果が感じられないという場合には、更年期障害を疑ってみるのも良いと思います。
男性更年期障害の注意点と治療法
編集部
症状が何十年も続く男性もいるのは大変ですね。
三山先生
特に気をつけたいのは、男性ホルモンの減少は生活習慣病に関係するということです。研究により、テストステロンの数値が低い場合、抑うつ状態、性機能・認知機能の低下のほか、糖尿病や肥満、メタボリックシンドローム、骨粗しょう症、心血管疾患(動脈硬化・血管内皮機能の低下)などのリスクが高まるということもわかっています。そのほか男性ホルモンが減少すると、認知症やサルコペニア(筋肉減少症)のリスクが上昇することもわかっています。
編集部
男性の更年期障害はどのようにして治療するのですか?
三山先生
更年期障害の自覚症状があり、かつ血液検査によって男性ホルモンが低いことがわかった場合には、加齢性腺機能低下症と診断されます。まずは運動習慣を身につけたり、食事内容を見直したりすることを試みますが、それでも症状が改善しない場合には漢方薬を中心に処方することもあります。
編集部
そのほかに治療法はありますか?
三山先生
男性ホルモンの値が極めて低く、症状が強くて日常生活に支障が及んでいる場合には、医師との相談の上、テストステロン補充療法を行うこともあります。症状が強く、悩んでいる場合には、ぜひ躊躇せずに泌尿器科など、男性更年期障害の治療を積極的に行っている医療機関へ相談していただければと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
三山先生
うつっぽい、もの忘れが激しいという悩みに対し、家族から「性格のせい」「だらしない」「怠けている」などと批判され、苦しんでいる男性は少なくありません。しかし、そうした症状が更年期障害からきている場合も多く、ホルモンバランスの不調はれっきとした体の不調です。更年期障害の症状に少しでも当てはまると感じる場合には、まず、専門医に相談を。更年期障害を多く扱う泌尿器科医を受診すれば、すぐに採血検査などをしてホルモンの数値を調べることができます。メンタルクリニックで治療を受けているけれどあまり良くならないと感じる人も、ぜひ一度、更年期障害の専門医に相談していただければと思います。今まで悩んでいた症状治療の新しい糸口見つかるかもしれません。
編集部まとめ
症状が長く続く人の場合、数十年も悩まされることもある男性更年期障害。女性と違ってまだあまり知名度が高くないため、誰にも相談できず悩んでいる人も多いと思います。医療の手助けを借りれば心身が楽になることもあるので、もし困っていることがあれば早めに相談してみましょう。
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診療科目 | 泌尿器科 |