「性病」などの所見がブライダルチェックで見つかった… その後どうなるの?
ここ数年でよく耳にするようになった「ブライダルチェック」は、結婚を控えた人のための体のチェックです。具体的にどんな目的で、どんな検査が行われるのでしょうか? そこでブライダルチェックの目的や内容、そして検査で疑わしい所見が見つかった場合の対応などについて「メディカルパークダイレクトタワー横浜」の沼崎令子先生に解説してもらいました。
監修医師:
沼崎 令子(メディカルパークダイレクトタワー横浜)
ブライダルチェックって? どんな検査をするの?
編集部
ブライダルチェックとはなんですか?
沼崎先生
「ブライダルチェック」の定義がはっきりと定められているわけではないのですが、
→「結婚を控えている女性を対象とした婦人科健診」であったり、「結婚前後の男女を対象にした、体のチェックや健診」を指したりすることが多いですね。健診なので、基本的に自費診療となります。
編集部
ブライダルチェックでは何がわかるのですか?
沼崎先生
性感染症の有無をはじめ、将来の妊娠や出産に影響を与えるリスクのある病気について確認します。また、チェックをする段階で、それ以外の病気のリスクがわかることもあります。
編集部
ブライダルチェックの検査内容についても教えてください。
沼崎先生
それぞれのクリニックや受ける方のニーズなどによって異なりますが、たとえば当院では女性を対象に、血液型、血液検査(貧血、肝機能、腎機能など)、感染症検査(B型肝炎、C型肝炎、HIV検査、梅毒検査)や性感染症検査、膣細菌培養検査、子宮内膜症のマーカーであるCA125検査、抗ミューラー管ホルモン(AMH)検査、風疹抗体検査、子宮頸がん検査、経膣超音波検査を行っています。男性には血液型、感染症検査(B型肝炎、C型肝炎、HIV検査、梅毒検査)を行っています。
それぞれの検査で何がわかるの? 医師が解説
編集部
それぞれの検査で何がわかるのですか?
沼崎先生
たとえば、CA125検査や経腟超音波検査でわかる子宮内膜症は、月経痛や過多月経の原因になる可能性があり、また重症化するとチョコレート嚢胞ができたり、卵管の通過性が悪くなったりすることがあります。抗ミューラー管ホルモン(AMH)検査は発育過程の卵胞の数(量)を推測することができます。つまり、卵子がどの程度残っているかを推測する指標として用います(AMH検査の結果は卵子の数を推測するものであり、卵子の質とは関係ない)。なお、AMHが低いと妊娠率も低いと思われていることがありますが、これは誤りです。AMHが低いというのは発育過程の卵胞数が少ないということです。実際に妊娠するかどうかについては、AMHよりも年齢や卵子の質がより重要です。
編集部
性感染症検査では何がわかりますか?
沼崎先生
淋菌、クラミジア、マイコプラズマ、ウレアプラズマ、膣トリコモナスなどの性感染症がわかります。これらの性感染症は帯下(たいげ)の増量のほか、子宮付属器炎を起こす可能性がありますが、抗生剤を投与することで治療可能です。また梅毒は最近増加傾向にあり、これも抗生剤で治療可能です。
編集部
経膣超音波検査ではどんなことがわかりますか?
沼崎先生
子宮の大きさや内膜の厚さ、卵巣の大きさや状態を把握することができ、子宮筋腫や卵巣嚢腫の有無を確認するのに役立ちます。先述の子宮内膜症については超音波検査のほか、CA125検査の併用で診断されます。
ブライダルチェックで疑わしい所見が… どうすればいい?
編集部
ブライダルチェックで疑わしい初見がみつかった時はどうすれば良いのですか?
沼崎先生
内容や程度などにもよります。たとえば貧血であれば、栄養指導や飲み薬などで改善を図る場合も多いですし、超音波検査で子宮筋腫や卵巣嚢腫が見つかったり、子宮頸がんなどが疑われたりした場合には、それぞれ必要な治療や処置、追加検査などを行います。風疹抗体がない場合は、ご結婚前に事前に風疹ワクチンを打ってもいいと思います。なお、風疹抗体がない方は風疹ワクチンの接種が勧められますが、接種後2か月の避妊期間が必要です。
編集部
「必要な治療」とは、例えばどんなことをするのですか?
沼崎先生
子宮筋腫であれば、生活に支障がなければ経過観察となりますが、貧血や周りの臓器が圧迫されるなどの症状が出てきたり、短期間で急に大きくなったりといった異常がみられた場合には、薬物療法や手術療法が検討されます。卵巣嚢腫も、小さければ経過観察ですが、大きかったり、増大傾向にあったりする場合は手術が検討されます。
編集部
子宮頸がんが疑われる場合はどんな検査をして、どのように治療するのですか?
沼崎先生
子宮頸がんの前がん病変として、子宮頸部異形成という病気があります。子宮頸部異形成が疑われた場合は、子宮頸部組織検査が必要になります。その結果で軽度異形成、中等度異形成、高度異形成と分けられます。中等度異形成までは治る可能性もありますのですぐ手術をするわけではなく、HPV(ヒトパピローマウイルス)の検査を行い経過観察する場合が多いのですが、高度異形成以上の場合は手術が必要です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
沼崎先生
ブライダルチェックにより、婦人科疾患や性病の有無を知ることができます。これから結婚して、妊娠を希望されている方にはあらかじめ自分の体の状態を知ることで、疾患の治療やワクチン接種など、将来の妊娠に備えた準備をすることができます。また、ブライダルチェックの検査項目以外でも、ご心配なこと(月経不順など)がありましたら相談してもらえればと思います。若い方には産婦人科の受診はハードルが高いかもしれませんが、ブライダルチェックで実際に病気や感染症が見つかった方もいらっしゃいます。ご自身の体を知るためにも、一度受診していただければと思います。
編集部まとめ
ブライダルチェックで疑わしい所見が見つかっても、適切な追加検査や診断を行うなどの対策が可能ですので、不安にならず、医師としっかり相談し、必要な検査を受けることが大切です。新しい生活を安心してスタートさせるためにも、ブライダルチェックをぜひ活用してみましょう。
医院情報
所在地 | 〒221-0835 神奈川県横浜市神奈川区鶴屋町1-41 THE YOKOHAMA FRONT 301-F |
アクセス | 「横浜」駅西口またはきた西口より徒歩約3分 |
診療科目 | 婦人科、産科 |