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女性に多い「バセドウ病」「橋本病」は何が違う? 同じ甲状腺疾患でも症状や治療は変わる?

 公開日:2024/10/18
女性に多い甲状腺疾患「バセドウ病」「橋本病」は何が違う? 症状や治療も変わる?

バセドウ病橋本病は、女性に多く見られる甲状腺疾患です。どちらも甲状腺に異常が起きることで発症する疾患ですが、一体どのような違いがあるのでしょうか? 症状や治療法などの違いについて、永島メディカルクリニックの永島先生に詳しく教えてもらいました。

永島 秀一

監修医師
永島 秀一(永島メディカルクリニック)

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2001年山梨大学医学部卒業。自治医科大学附属病院のほか、地域中核病院や内科クリニックで勤務し、この間に自治医科大学大学院を卒業。自治医科大学附属さいたま医療センター内分泌代謝科准教授をへて現職。日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本糖尿病学会 専門医・研修指導医、日本内分泌学会 内分泌代謝科(内科)専門医・研修指導医、日本動脈硬化学会評議員。

バセドウ病とはなに? 自己免疫疾患とは?

バセドウ病とはなに? 自己免疫疾患とは?

編集部編集部

バセドウ病とはなんですか?

永島 秀一先生永島先生

簡単にいうと、甲状腺ホルモンが過剰に作られることで、体にさまざまな症状が出現する疾患のことをいいます。自己免疫疾患の一種とされています。

編集部編集部

自己免疫疾患とはなんですか?

永島 秀一先生永島先生

人間に生来備わっている免疫系が、正常に機能しなくなることで発症する疾患のことをいいます。人間には細菌やウイルスなどの病原体を排除するための仕組みが備わっており、それが免疫系と言われています。この免疫系が暴走し、自分の正常な組織や細胞に対して過剰に反応して、攻撃してしまうのが自己免疫疾患です。

編集部編集部

なぜバセドウ病は自己免疫疾患の一種なのですか?

永島 秀一先生永島先生

甲状腺ホルモンは、脳の下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)が甲状腺のTSH受容体を刺激することで分泌されます。いってみれば、TSHが受容体という“鍵穴”に結合することで、甲状腺ホルモンが分泌されるのです。しかし何らかの原因により、TSH受容体に対する抗体が体内で作られ(これを自己抗体といいます)、これがTSH受容体を刺激し続けることがあります。その結果、甲状腺ホルモンが過剰に産生・分泌されてしまうのです。バセドウ病はこうした自己抗体が関係する病気のため自己免疫疾患の一種とされています。

橋本病とバセドウ病の違いとは?

橋本病とバセドウ病の違いとは?

編集部編集部

バセドウ病と似た疾患に橋本病もありますが、これらはどう違うのですか?

永島 秀一先生永島先生

バセドウ病は甲状腺ホルモンを過剰に分泌する疾患ですが、反対に橋本病では甲状腺ホルモンの分泌量が低下してしまいます。なぜなら橋本病の場合、甲状腺に炎症を起こす抗体が体内で作られて、慢性的な甲状腺の炎症が引き起こされるためです。それにより、甲状腺ホルモンの分泌量が減少してしまうのです。

編集部編集部

橋本病も自己免疫疾患の一種なのですか?

永島 秀一先生永島先生

はい。バセドウ病と同じく甲状腺を異物とみなすことで発症します。ただし、標的とするものが両者で異なり、バセドウ病の場合には甲状腺刺激ホルモン(TSH)の受容体が攻撃されることで発症しますが、橋本病の場合には甲状腺の細胞内にあるたんぱく質が標的となります。

編集部編集部

それぞれ、どのような原因で起きるのですか?

永島 秀一先生永島先生

どちらも原因は解明されていませんが、バセドウ病や橋本病になりやすい体質を持っている人が何らかのウイルスに感染したり、強いストレスを抱えたり、また、妊娠・出産したりしたことがきっかけとなって発症するのではないかと考えられています。

編集部編集部

バセドウ病や橋本病は遺伝性ですか?

永島 秀一先生永島先生

バセドウ病や橋本病になりやすい体質は遺伝します。研究により、親、兄弟、祖父母がバセドウ病の方は、一般の人に比べて20~40倍くらいバセドウ病になりやすいことがわかっています。しかし、それだけでは発症に至らず、ウイルス感染やストレスなどの要因が重なって発症すると考えられています。

編集部編集部

どちらも女性に多いと聞きました。なぜですか?

永島 秀一先生永島先生

はい。バセドウ病は20~30代の若い女性に多く、男女比は1:3~5くらいといわれています。一方、橋本病は30~40代の女性に発症することが多く、男女比は1:20~30くらいとされています。なぜ女性に多いのかについては現在も研究が進められていますが、明確にはなっていません。もともと自己免疫疾患は女性に多く発症する疾患です。この原因として、エストロゲンなど女性ホルモンの影響が考えられています。

症状と治療法

症状と治療法

編集部編集部

バセドウ病や橋本病ではどのような症状が見られるのですか?

永島 秀一先生永島先生

まずバセドウ病では、動悸、体重減少、手足の震え、暑がり、汗かきなどの症状が起こります。そのほか、疲れやすい、軟便・下痢、筋力低下、イライラ、落ち着きがないといったことが起きることもあります。また、眼球の突出が見られることもあります。一般に更年期障害と似た症状が出現するので、混同されがちという特徴があります。しかし、それぞれ治療法が異なるため、このような症状を自覚した場合は早めに検査をする必要があります。長く我慢していると心臓に負担がかかり、心不全に至ることもあります。

編集部編集部

橋本病ではどのような症状が見られるのですか?

永島 秀一先生永島先生

甲状腺が腫れ、首周辺に圧迫感や違和感を覚えることがあります。橋本病は甲状腺に慢性の炎症が生じる疾患で、甲状腺機能低下症の代表的な疾患ですが、橋本病患者の全員に甲状腺の機能低下が見られるわけではありません。橋本病と診断されても、甲状腺の機能は正常な人はたくさんいます。しかし甲状腺機能低下症を発症すると、全身の代謝が低下することによって、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声、脂質異常症などが見られることがあります。また、うつ病や認知症と間違われることもあります。

編集部編集部

それぞれどのようにして治療するのですか?

永島 秀一先生永島先生

バセドウ病の場合には、主な治療法として薬物治療、アイソトープ治療(放射線治療の一種)、甲状腺を切除する手術の3つがあります。薬物治療で改善が難しい場合や、副作用がある場合などには、放射性ヨウ素を内服することで甲状腺を被曝させて甲状腺を小さくするアイソトープ治療や、甲状腺を切除する外科手術を行うことがあります。

編集部編集部

橋本病の場合には?

永島 秀一先生永島先生

先述のように、橋本病を発症しても多くの患者さんは甲状腺の値は正常です。そのため、まずは採血して甲状腺ホルモンが低下していないかを経過観察します。もし甲状腺の機能が低下して甲状腺ホルモンの分泌量が減少している場合は、甲状腺ホルモン剤を少しずつ開始して、ホルモンの量が正常近くになるまで増量します。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

永島 秀一先生永島先生

バセドウ病や橋本病といった甲状腺疾患は、一般の健康診断や採血では見つかりにくい病気です。そのため、早期発見のためには自覚症状にいち早く気づくことが大切。イライラする、ドキドキする、手が震えるなどの症状ではバセドウ病、だるさ、むくみ、寒がりといった症状のときには橋本病を疑い、医療機関で甲状腺ホルモンの検査を依頼してみてはいかがでしょうか? その際には内科または内分泌科を受診することをおすすめします。

編集部まとめ

バセドウ病、橋本病とも甲状腺の疾患として一括りにされることの多い病気ですが、症状や治療法は異なります。特に、母親など身内でこれらの疾患を発症した人がいる場合は早期発見のため、自覚症状の有無に注意した方がよさそうですね。

医院情報

永島メディカルクリニック

永島メディカルクリニック
所在地 〒337-0042 埼玉県さいたま市見沼区南中野607
アクセス 「南中野」バス停より徒歩5分
診療科目 内科、糖尿病・内分泌内科

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