ピルは「月経困難症」や「子宮内膜症」などの治療にも有効 避妊だけが効果じゃない
ピルは、避妊のみならず、ほかにも様々な効果・効用があります。そこでピルの種類、処方の流れや注意点について「メディカルパークダイレクトタワー横浜」の沼崎 令子先生に解説してもらいました。「ピルを始めたいけれど、どうやって処方を受ければいいのか分からない」「そもそもどんな薬なの?」という方は必見です。
監修医師:
沼崎 令子(メディカルパークダイレクトタワー横浜)
目次 -INDEX-
ピルとは?
編集部
ピルについて教えてください。
沼崎先生
「ピル」はもともと避妊のための薬剤であり、女性ホルモンである黄体ホルモン(プロゲステロン)と卵胞ホルモン(エストロゲン)の2種類を含む薬剤です。ピルにはいくつかの種類があり、含まれるエストロゲンの量によって分類されます。エストロゲンの量が少ないものは「低用量ピル」、やや多いものは「中用量ピル」と呼ばれています。
編集部
どのような違いがあるのですか?
沼崎先生
低用量ピルが認可されるまでは、ピルといえば中用量ピルが一般的でした。低用量ピルが認可されてからは、低用量ピルが処方されることがほとんどです。中用量ピルの方が副作用のリスクが高いというのがその主な理由です。低用量ピルは避妊に関して優れた避妊方法のひとつであり、安全性も高いと考えられています。また、ピルは①避妊を目的として用いるピル(OC/自費診療)と②月経困難症や子宮内膜症など疾患の治療を目的として用いるピル(保険診療)に分けられます。低用量ピルの投与方法としては、月1回月経がくる「周期投与法」と月経がくる回数が少なくなる「連続投与法」があります。
編集部
ピルにはどんな副作用がありますか?
沼崎先生
ピルの一般的な副作用には吐き気や眠気、頭痛、体重増加、乳房の圧痛、ニキビなどがあります。特に飲み始めの時期に顕著に出ると言われていますが、3か月くらい継続内服すると徐々に気にならなくなる方が多いようです。また、血栓症のリスクは通常1万人あたりに1~5人ですが、ピルを内服している場合では1万人あたりに3~9人とわずかに増加します。ただし、妊婦さんでは1万人あたりに5~20人と言われており、リスクは妊娠中より低いと考えられています。また、まれに肝機能障害を起こすことがあります。
編集部
避妊以外の効果についてもう少し教えてください。
沼崎先生
避妊以外の副効用として月経痛や月経前症候群、過多月経の改善効果、月経周期の乱れなどに対する効果も認められています。ドロスピレノンという卵胞ホルモンを含むLEP製剤は月経前不快気分障害(PMDD)を改善する効果があります。また、将来的な卵巣がんや子宮体がん、大腸がんのリスクを減少させるとも報告されています。また月経周期を移動させることも可能です。こういった効能があるため、先ほどお話ししたようにピルは、①避妊目的と②月経困難症や子宮内膜症など疾患の治療に分けられているのです。
ピルはどこで買えるの?
編集部
ピルを飲むことで、その後の妊娠に影響はないのですか?
沼崎先生
医師の指示通りに服用していただき、妊娠を考えた時にきちんと服用をストップすれば、その後の妊娠に悪影響を及ぼすことはありません。
編集部
ピルはどこで買えますか?
沼崎先生
ドラッグストアやインターネットなどで購入している方もいるようですが、必ず医師の処方のもとで購入することをお勧めします。理由としてはいくつかありますが、まずはインターネットなどで販売されているピルの一部には、成分やその含有量が不明瞭なものがあると考えられること、次にそもそもピルを投与してはいけないケースや慎重に投与しなければならないケースなどがあり、医師の診察を受けずに服用することにはリスクが伴うこと、そして、先述の副作用などで、もし何かあった場合に対応が遅れる可能性があるからです。面倒に感じる人もいるかもしれませんが、こうした理由から医師の診察を受け、適切な処方のもとに購入することを強くお勧めしています。
編集部
医師からピルを処方してもらうにはどうしたら良いですか?
沼崎先生
まず、婦人科や産婦人科の医師に相談する必要があります。初診では、問診や健康状態の確認が行われ、ピルの適応があるかどうかを判断します。
編集部
どのような診察が行われますか?
沼崎先生
ピルの初回処方時の問診チェックシートに記載していただきます。内容は月経の状況や妊娠・授乳の有無、喫煙や片頭痛の有無、合併症などについて確認します。その後、超音波検査や診察、子宮がん検診、半年から1年に一度の採血検査などが行われます。
ピル処方における注意点は?
編集部
ピルを処方してもらう際、注意点などはありますか?
沼崎先生
喫煙している方は、血栓のリスクが上昇するので注意が必要です。また「35歳以上で、1日15本以上の喫煙者」の方には処方できません。また50歳以上の方、前兆(視界にギザギザした光が現れるなど/眼窩閃輝暗点)を伴う頭痛のある方、授乳をしている方、手術を控えている方、重症の糖尿病、高血圧、心疾患、肝機能障害の方には投与できません。
編集部
制限は多いのですね。
沼崎先生
はい。また禁忌以外の喫煙されている方や片頭痛のある方、乳がんの既往、てんかん、潰瘍性大腸炎、クローン病、軽症の糖尿病・高血圧、肝機能障害などのある方、治療を必要とするような子宮筋腫のある方は、投与可能ですが注意が必要です。こういった条件があるため、喫煙習慣や常用している薬、持病などについては、きちんと申告するようにしましょう。
編集部
ほかに注意した方がいいことはありますか?
沼崎先生
たとえば月経前症候群などで相談に来られた場合でも、必ずしもピルが処方されるとは限りません。医師と患者さんが相談しながら、漢方薬などで対応する場合もありますので、ピルにこだわりすぎないような意識が必要です。ホルモンの働きを抑える薬なので、繰り返しになりますがネットの個人輸入などではなく、専門医に処方してもらうようにしてほしいです。処方する段階で、副作用などの説明もあると思いますので、きちんとそれを聞いて、同意の上で服用しましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
沼崎先生
低用量ピルは、優れた避妊方法のひとつであり、安全性も高いと考えられています。また月経困難症、過多月経、PMSなどの治療薬としても有用です。しかし、副作用もありますので、病院で医師と相談しながら適切に内服管理することが大切だと思います。
編集部まとめ
ピルを服用する際は、医師の指導に従い、正しい方法で購入、内服することが大切です。信頼できる医師の診察をうけ、喫煙習慣や常用している薬、持病などを申告するのはもちろん、不安や疑問があれば、遠慮せずに専門医に相談するようにしましょう。
医院情報
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診療科目 | 婦人科、産科 |