目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. 社会問題「認知症」の原因や治療を医師が徹底解説 「物忘れ外来」って何するの?

社会問題「認知症」の原因や治療を医師が徹底解説 「物忘れ外来」って何するの?

 公開日:2024/12/10
社会問題「認知症」 原因や治療を医師が徹底解説 「物忘れ外来」って何するの?

認知症やもの忘れは、急速に高齢化が進む現代社会において、避けて通れない重大な課題となっています。これらの症状は患者本人のみならず、家族や社会全体に深刻な影響を及ぼします。そこで、認知症の原因やその治療などについて、「ふじさわ脳とからだのクリニック」の永尾征弥先生に解説してもらいました。

永尾 征弥

監修医師
永尾 征弥(ふじさわ脳とからだのクリニック )

プロフィールをもっと見る
2003年富山医科薬科大学医学部(現・富山大学医学部)卒業。大学の医局や救急病院などで、20年ほど脳神経外科医として勤務。救急病院で脳卒中を中心とした診療や、総合病院で地域医療に携わりつつ企業の産業医として従事。現在は神奈川県藤沢市の「ふじさわ脳とからだのクリニック」で、もの忘れ外来などに携わっている。

認知症って若くてもなるの?

認知症って若くてもなるの?

編集部編集部

認知症について教えてください。

永尾 征弥先生永尾先生

認知症はもの忘れから始まることが多く、その後に様々な認知機能の低下により日常生活が困難となってしまう病気です。主な症状は記憶力の低下、判断力の低下、言葉の理解の困難、行動の変化などで、その後の経過とともに運動機能の低下、移動能力の低下、栄養状態の悪化などが起こり、最終的に寝たきり状態となる可能性が高い疾患です。

編集部編集部

認知症の人は多いのですか?

永尾 征弥先生永尾先生

現在の日本では65歳以上の約6人に1人、600万人以上の方が認知症を患っているとされており、その数は年々増加しています。また、日常生活に何らかの介助が必要となる方(要介護者)の原因疾患としては認知症が最も多く、次いで脳血管障害(脳卒中)となっています。

編集部編集部

やはり高齢者に多いのですか?

永尾 征弥先生永尾先生

基本的には高齢者に多く見られる疾患ですが、「若年性認知症」という言葉もあるとおり、高齢者の方だけでなく、若年層にも社会的影響を及ぼす可能性がある重要な疾患です。また、若年性認知症だけでなく、頭部外傷やアルコールなどがきっかけに起こる認知障害も、年齢を問わず発症する可能性があります。

認知症にも種類があるの? 医師が解説

認知症にも種類があるの? 医師が解説

編集部編集部

認知症の原因にはどんなものがありますか?

永尾 征弥先生永尾先生

認知症の原因疾患は様々ありますが、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症の4つが代表的です。このうち血管性認知症は、脳梗塞や脳出血など、脳血管障害が原因で起こるものなので、発症のタイミングが比較的はっきりしているという特徴があります。

編集部編集部

ほかにはどのような特徴がありますか?

永尾 征弥先生永尾先生

レビー小体型認知症は認知症の症状だけでなく、手足の震え、歩行障害など、パーキンソン病のような体の症状も表れることが特徴で、前頭側頭型認知症は比較的若い年齢層で起こり、もの忘れよりも性格の変化や意欲の低下、言語障害などを引き起こすことが多く見られます。

編集部編集部

アルツハイマー型認知症はどうですか?

永尾 征弥先生永尾先生

最も代表的な認知症で、認知症の中で約60%を占めているのがアルツハイマー型認知症です。多くが65歳以上のお年寄りに発症しますが、若い人にも発症することがあります。この病気は、最初はもの忘れから始まり、その後認識能力の低下、判断力の低下、精神症状などが徐々に進行していきます。症状を完全に治すことはできませんが、病気の進行を遅らせる薬を使用することができます。

超高齢化社会のもの忘れ治療について医師が解説

超高齢化社会のもの忘れ治療について医師が解説

編集部編集部

最近は「物忘れ外来」とか「認知症外来」など、認知症に特化した外来ができてきていますよね?

永尾 征弥先生永尾先生

そうですね。日本認知症学会専門医や日本認知症予防学会の認知症予防専門医、認知症サポート医といった専門家が、検査・診断をし、適切にサポートしていく専門窓口が増えてきています。認知症の有無だけでなく、原因疾患の種類や進行度合いも評価することができます。

編集部編集部

認知症と診断されたら治療はどんなことをするのですか?

永尾 征弥先生永尾先生

食事や運動、睡眠、社会活動などの生活習慣の改善についてのアドバイスや生活習慣病の管理、適応があれば認知症の進行を遅らせ、症状を軽減することを目的とした薬物治療などを行います。また、医療機関によっては行動療法やリハビリテーションなどを取り入れているところもあります。社会と関わることや日常生活に運動を取り入れることで、認知症の進行を遅らせることが期待できるため、デイケアやデイサービスなどもご案内することはあります。

編集部編集部

ほかに何か認知症について知っておいた方がいいことはありますか?

永尾 征弥先生永尾先生

「認知症は、子どもに戻ると考えれば良い」と言われることがあります。確かに間違ってはいないのですが、認知症の場合、子どものように成長し学習していくことは難しく、むしろ少しずつ症状が進行していく疾患です。認知症患者さんに寄り添う方々には、まずはその点を理解していただき、「どうやってうまく付き合っていくか」という認識で関わっていただけたらと思います。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

永尾 征弥先生永尾先生

認知症は徐々に進行していく疾患ですが、すべてご家族だけで抱え込むのは本当に大変です。そこでデイケアやデイサービス、ヘルパーさんなどの社会的資源をうまく取り入れるなど、周りの手を借りることがとても大切です。認知症外来では、認知症患者さんだけでなく周りの人もストレスを抱えずに生活していけるよう、介護保険のご案内やさまざまなサービスのご紹介なども行っています。早期に発見し、早期に対応していくことが重要な疾患ですので、今、ご家族のどなたかのもの忘れが気になってきていたり、いつもやっていることをやろうとしなくなっていたり、何か気になる点がある方は、ぜひ早めにお近くの認知症外来にご相談いただけたらと思います。

編集部まとめ

認知症やもの忘れは、現代社会において深刻化している問題で、私たち一人ひとりが認知症について関心を持ち、疾患を理解することが重要です。早期に専門家に相談し、適切な診断と治療を受けることで、認知症の進行を遅らせて、本人や周りの方の生活の質を維持することが可能です。思い当たる症状のある方、ご家族の方は、お近くの認知症外来などに相談してみてはいかがでしょうか。

日本認知症学会の一般の方向けのサイト
https://dementia-japan.org/general/

日本認知症予防学会のもの忘れ簡易スクリーニング検査
https://ninchishou.jp/publics/index/288/

医院情報

ふじさわ脳とからだのクリニック

ふじさわ脳とからだのクリニック
所在地 〒251-0026 神奈川県藤沢市鵠沼東1-2
アクセス 「藤沢」駅より徒歩5分
江ノ電バス「奥田」バス停より徒歩1分
診療科目 脳神経外科、内科

この記事の監修医師