【60代女性5人に1人発症】骨粗しょう症の治療法はご存じですか? 骨折はどう防ぐ?
骨粗しょう症を発症すると骨折をしやすくなるだけでなく、寝たきりのリスクが高くなり、その結果、死亡率が高くなることがわかっています。その一方、「骨粗しょう症は治らない」という話を聞くことも。もし治らないなら、一体どのような目的で治療が行われるのか、あおき整形外科リハビリクリニックの青木先生に教えてもらいました。
監修医師:
青木 隼人(あおき整形外科リハビリクリニック)
骨粗しょう症とは?
編集部
骨粗しょう症とはどのような病気ですか?
青木先生
老化などが原因となって骨の量が減少し、骨がスカスカになり、もろくなる病気のことを言います。その結果、骨折のリスクが高まります。
編集部
なぜ骨粗しょう症が発症するのですか?
青木先生
主な原因は老化です。骨を構成するカルシウムやマグネシウムなどのミネラル量のことを骨密度といいますが、骨密度は20〜30歳頃をピークに、年齢を重ねるにつれて減少してしまいます。その結果、60代女性で5人に1人、70代女性で3人に1人、80代女性になると2人に1人が骨粗しょう症を発症しているとされています。
編集部
女性に多く発症するのですか?
青木先生
はい、女性は生まれつき骨格が小さく骨量が低いことが原因となり、骨粗しょう症を発症しやすいとされています。そのほか加齢、とくに閉経により女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌量が減少することも、骨粗しょう症が女性に多く発症する原因のひとつです。
編集部
エストロゲンと骨粗しょう症はどのような関係があるのですか?
青木先生
エストロゲンには骨の健康を保つ働きがあります。そもそも人間の骨は新陳代謝を繰り返しており、古くなった骨を壊す細胞(破骨細胞)と新しい骨を作る細胞(骨芽細胞)がバランスよく機能することで、常に良い状態が保たれています。しかし、エストロゲンの分泌量が減少するとこれらの細胞の比率が崩れ、骨を守る力が低下してしまいます。その結果、骨がもろくなり、骨粗しょう症を発症してしまうのです。
編集部
そのほかには、どのような原因が考えられますか?
青木先生
骨粗しょう症の発症リスクになるものには、喫煙、多量の飲酒、低体重、ステロイド服薬歴、カルシウム不足、運動不足などがあります。また、家族に骨粗しょう症の人がいる場合には発症しやすいということがわかっています。
骨粗しょう症の症状と診断方法は?
編集部
骨粗しょう症を発症したら、どのような症状が見られるのですか?
青木先生
一般に、骨粗しょう症は自覚症状がないまま進行していきます。実際、骨折して初めて気づくことが多いため、「沈黙の疾患」と呼ばれることもあります。背中や腰が痛い、腰が曲がってきた、身長が縮んだなどの症状で自覚することもあります。なお、骨密度が非常に低い方でも、腰の痛みや背中の痛みがとくにないという方も多くいらっしゃいます。
編集部
骨粗しょう症はどのような検査で診断されるのですか?
青木先生
胸椎や腰椎のX線写真を撮影し、骨折や変形の有無を確認します。「いつの間にか骨折」(脆弱性骨折)と呼ばれるもののように、自分で気づかないうちに骨折していることもあるので、X線検査はとても重要です。また、骨密度を測定します。骨密度によって骨の強さを判定することができ、「若い人の平均値と比べて自分の骨密度が何%であるか?」が示されます。
編集部
骨密度はどのようにして測定するのですか?
青木先生
骨密度を測定する方法にはさまざまなものがありますが、一般的なのはDXA(デキサ)法といって、2種類の異なるX線を照射する方法です。検査結果の信頼度を高めるために、腰椎と股関節で骨密度を計測することが可能で、当院では信頼度を高めるために2箇所で測っています。
編集部
そのほかに必要な検査はありますか?
青木先生
カルシウムやビタミンDなど必要な栄養素が摂取できているか評価したり、治療方針を決定するため骨代謝マーカーを調べることで骨の新陳代謝の状態を推測したりします。
骨粗しょう症の治療法は?
編集部
骨粗しょう症の治療はどのようにして行うのですか?
青木先生
治療の中心は薬物療法です。治療薬には「骨吸収(古い骨が壊されること)を抑制する薬」「骨の形成を促す薬」「骨に必要な栄養素を補う薬」などさまざまなものがあります。基本的にはこれらの薬を組み合わせて使用します。
編集部
そのほかにはどのような治療法がありますか?
青木先生
食事療法と運動療法も重要です。たとえば食事では骨の主成分であるカルシウムやタンパク質を積極的に取るほか、骨の代謝に必要なビタミンDやビタミンKも取るようにします。また骨は運動をして負荷をかけることで丈夫になりますし、筋肉を養うことで体幹が鍛えられ、転倒防止の効果を期待できます。そのため、ウォーキングやジョギングなど骨に刺激を与える有酸素運動と、筋肉を育てる筋トレをバランスよく行うことが大切です。
編集部
ずっと治療を続けなければならないのですか?
青木先生
状態が良くなれば治療を中断できることもありますが、基本的に骨粗しょう症の治療は年単位で継続する必要があります。しかし、実際は「骨粗しょう症による自覚症状がない」「痛みが消えた」「治療効果を感じない」などの理由で、自己判断で治療を中断してしまう人が少なくありません。ところが、治療を中断すると、治療をする前のもとの状態に戻ったり、もとより悪くなったりする場合もあるのです。治療の中断を考える場合には、自身で判断するのではなく、医師の指示を仰ぐことをおすすめします。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
青木先生
これまで整形外科医として働いてきた中で、骨粗しょう症により大腿骨近位部骨折を起こした高齢の方をたくさん見てきました。大腿骨近位部骨折を起こすと緊急での手術や入院が必要になり、ご本人はもちろん、ご家族の負担も大きくなります。また、手術後にはリハビリも必要ですし、活動性が下がることによって認知症が一気に進行することもあります。現在、日本は国をあげて骨粗しょう症による骨折の対策に取り組んでいますが、大事なことは骨粗しょう症そのものを予防して、骨折を起こさないことだと考えております。一度骨密度が低下すると上昇させるのは大変なので、日々の予防と定期的な検査が重要です。中高齢の人は定期的に骨密度を測定したり、運動や食事に気をつけたりして、骨粗しょう症予防に努めましょう。
編集部まとめ
太陽の光を浴びて運動したり、バランスの良い食事を心がけたりすることは骨粗しょう症の予防につながります。まだ若いから大丈夫と油断せず、骨量の低下が急速に進み始める50代になったら、骨粗しょう症を意識した生活を送るようにしましょう。
医院情報
所在地 | 〒168-0072 東京都杉並区高井戸東4-11-5 高井戸東パークホームズ1F |
アクセス | 京王井の頭線「高井戸」駅より徒歩10分 |
診療科目 | 整形外科、リハビリテーション科 |