くも膜下出血や脳腫瘍が潜んでいる頭痛とは? 「頭痛もちだから…」と放置が良くないワケ
頭痛に悩む人は非常に多いと言われています。中には「頭痛もちだから」と日常的に頭痛を我慢している方も多いのではないでしょうか? 頭痛を放置することは、思わぬ悪影響を引き起こす可能性があります。そこで頭痛の原因となる病気や頭痛を我慢することの悪影響などについて、「ふじさわ脳とからだのクリニック」の永尾征弥先生に解説してもらいました。
監修医師:
永尾 征弥(ふじさわ脳とからだのクリニック )
頭痛にも種類があるってホント? 特徴も教えて!
編集部
頭痛に悩む人は多いのですか?
永尾先生
多いと思います。日本頭痛学会の調査によると、日本人の約40%以上が頭痛に悩まされているとされています。頭痛と言ってもさまざまな要因があり、何かの病気が原因で起こる頭痛(二次性頭痛)とそうでない頭痛(一次性頭痛)に分けられます。また、どちらにも分類されない有痛性脳神経ニューロパチー、顔面痛などによる頭痛もあります。
編集部
頭痛にも種類があるのですね。
永尾先生
そうですね。一次性頭痛の中でいうと、片頭痛と緊張型頭痛(肩こり頭痛)が最も一般的な頭痛で、日本国内の成人男女において、片頭痛の有病率は約8%、緊張型頭痛の有病率は約54%と報告されています。肩こりと関係が深い「緊張型頭痛」は、頭部が重たい感じや、こめかみが締め付けられるような感じなどが特徴です。
編集部
片頭痛はどんな特徴がありますか?
永尾先生
片側におきる頭痛の全てが片頭痛というわけではありません。片頭痛の特徴は、「頭痛の前兆としてキラキラ、ギザギザしたものが見える」「局所が拍動するようにズキズキ痛む」「吐き気を伴うことがある」「動くと頭痛が悪化する」といったことが起こります。生活に支障をきたす頭痛は片頭痛であることが多いです。
編集部
なるほど。
永尾先生
さらに、片頭痛は女性に多く見られる傾向があり、特に月経周期と関連する月経固有の片頭痛が、女性の生活に大きな影響を及ぼすことが知られています。
キケン? 受診したほうがいい頭痛とは?
編集部
二次性頭痛の原因にはどんなものがありますか?
永尾先生
頭部外傷やくも膜下出血、脳出血などの血管障害、脳腫瘍、副鼻腔炎などによる頭痛があります。特にくも膜下出血は、突然激しい頭痛が起こります。脳血管障害全般に言えることですが、治療までに時間がかかるほど後遺症も大きくなる傾向にあるので、このような頭痛の場合は早急に救急外来を受診しましょう。
編集部
脳腫瘍だとどのような症状がありますか?
永尾先生
脳腫瘍の場合は、できる場所によって症状がさまざまです。手足の運動麻痺やバランスの障害、言語の障害など、普段できていたことが少しずつできなくなった場合などは脳腫瘍が徐々に大きくなっている可能性があります。ほかには、「慢性的な頭痛の頻度が増えて、痛みも強くなってきた」「とくに早朝に頭痛が強い」といったことも脳腫瘍による頭痛の特徴です。
編集部
副鼻腔炎の場合はどうですか?
永尾先生
鼻水や鼻詰まりを伴う頭痛やアレルギー性鼻炎・風邪の後に残った頭痛は、副鼻腔炎の可能性があります。ほかにも「額や頬のあたりを指で叩くと痛い」「頭を下げると液体が動くような感じがして痛む」といった症状も副鼻腔炎が疑われます。
編集部
いずれも受診した方がよいのですか?
永尾先生
そうですね。突然の激しい頭痛や手足、言語の障害、視野の障害など脳血管性障害が疑われる場合は早急な受診、脳腫瘍や副鼻腔炎が疑われる場合もなるべく早めの受診をお勧めします。ほかには、発熱を伴う場合も、髄膜炎などの可能性がありますので受診した方が良いでしょう。
「頭痛持ちだから…」と痛みを我慢することの悪影響
編集部
先ほどの「一次性頭痛」の場合は受診しなくて良いのでしょうか?
永尾先生
一次性頭痛であれば、先述の頭痛と比べて早急に受診する必要はありません。しかし、これは「一次性頭痛は放置してもいい」という意味ではありません。一次性頭痛でも生活に支障をきたしているケースもありますので、痛み止めを飲んで我慢する必要はありません。頭痛外来を受診すれば適切な治療方法を提案してもらえますので、我慢せずに相談してみてください。
編集部
痛みを我慢しているとどんな悪影響があるのですか?
永尾先生
痛みを我慢して頭痛を放っておいたり、自己判断して間違った対処方法を続けていたりすると、慢性化し生活に支障をきたすことがあります。頭痛の頻度が少なく、日常生活に支障をきたしていない人が、時々市販の頭痛薬を使用することは問題ありません。しかしながら、頭痛の頻度が多い場合は市販の頭痛薬でその頻度を減らすことはできず、逆に頭痛薬を使用する回数が多くなることで、薬が頭痛の原因となる薬物乱用頭痛を引き起こす可能性があります。
編集部
頭痛外来では、どんな治療をするのですか?
永尾先生
頭痛の発作に対する治療と頭痛の発作を予防する治療に分けられます。薬を使うにしても、それぞれの病態にあった正しい薬を選択し、効率の良い痛みの取り方を教えていただけます。さらには、飲み薬の治療や注射の治療だけでなく、頭痛を起こさないような生活習慣についてのアドバイスなども受けられます。慢性頭痛については薬物治療だけではなく、頭痛に向き合った生活習慣を身につけることが極めて大切となるのです。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
永尾先生
「慢性的な頭痛は病気ではない」「痛み止めを飲んでおけば良い」というイメージがあるかもしれませんが、そんなことはありません。頭痛の専門外来などに相談することで、症状が緩和されたり、頻度が少なくなったり、生活が楽になることが期待できますので、「頭痛持ちの体質だから」と我慢せず、まずはお近くの頭痛外来などに相談してみてください。合わせて、頭痛に苦しむ人が周囲にいた場合には「頭痛ぐらい大した事ないでしょ」というような認識はしないようお願いします。現時点で、頭痛で医療機関にかかっている人も、もし効果を感じられなければ、一度しっかりとした頭痛専門外来に相談してみることをお勧めします。
編集部まとめ
頭痛について、専門医に解説していただきました。頭痛を単なる体質として放置することで、長期的に健康や生活に悪影響を及ぼす可能性があります。頭痛が辛い、生活に影響が出ているという場合には、専門の医療機関に相談することが大切です。「体質だから」「痛み止めがあるから」と我慢せず、早めの対処を心掛けましょう。
医院情報
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診療科目 | 脳神経外科、内科 |