「モートン病」になりやすい人の特徴をご存知ですか? 症状・原因を医師が解説
「足の指の付け根部分に痛みやしびれを感じる」ということはないでしょうか。足先のしびれが主症状の「モートン病」は、ハイヒールを履く機会の多い30~40代の女性での発症率が高いと言われてきましたが、最近では20代の女性にも増加しているようです。放置すると足の健康を著しく損なってしまう可能性もあるモートン病について、原因や症状、効果的な治療や予防に至るまで、下北沢病院副院長の長﨑和仁先生に伺いました。
監修医師:
長﨑 和仁(下北沢病院)
モートン病とは?
編集部
はじめに、モートン病という病気について教えてください。
長﨑先生
足趾(足の指のこと)の付け根部分に荷重が集中することによって、2本の足趾間にしびれや痛みが生じる病気です。30~40歳位の女性に多くみられますが、最近では20歳代の女性にも認められる傾向があります。モートン病は、足趾の間の神経(趾間神経)が隣り合う中足骨をつないでいる靭帯(深横中足骨靭帯)と地面との間で圧迫されて生じるとされています。
編集部
モートン病はどのような方に多く発症するのですか?
長﨑先生
足の変形(偏平足、外反母趾、足の横幅が広がる開帳足など)がある方、中腰での作業が多い方、つま先立ちを長時間おこなう方、ランニングをやりすぎる方、ハイヒールを常用する方などに多いとされております。
編集部
モートン病では、どのような症状が出ますか?
長﨑先生
第3-4趾間(中指と薬指の間)のしびれや痛み、焼けつくような感じなどの神経症状が認められます。障害部位は、第3-4趾間が最も多い(64%)とされ、第2-3趾(人差し指と中指)間(29%)、第4-5趾(薬指と小指)間(6%)にも生じるとされております。
放置するリスクとセルフチェックの方法
編集部
モートン病を放置していると、どのようなリスクがありますか?
長﨑先生
適切な対策を取らないと、しびれや痛みなどの症状が徐々にひどくなります。さらに悪化すると神経が“こぶ”のようになる「モートン神経腫」が生じる可能性があり、手術が必要になる場合もあります。
編集部
モートン病の治療ではどのようなことがおこなわれますか?
長﨑先生
原因となる神経への圧迫を減らす必要があります。前足部の幅の広い靴を履くようにする、足底挿板(インソール・靴の中敷きのような装具)を作成し中足骨頭部の除圧をする必要があります。足底挿板は、装具技師に依頼し、自分の足の形に合わせて作る必要があります。その他足部内在筋のエクササイズ、足関節背屈ストレッチなどの運動療法を施行します。上記にて症状が改善されない場合は、鎮痛剤の内服やブロック注射などをおこないます。保存的治療にても3ケ月以上回復しない場合は、神経腫切除術などの手術を施行する場合もあります。
編集部
モートン病かどうかをセルフチェックする方法はありますか?
長﨑先生
親指と人差し指で症状がある部位をつまみ、もう片方の手で前足部を絞り込むことで、症状の再現が認められる場合は、モートン病を疑います。
モートン病は予防できる病気なのか
編集部
モートン病に似ている症状が出る病気はありますか?
長﨑先生
フライバーグ病(人指し指の付け根の痛みを伴う中足骨頭の壊死)、関節リウマチ、中足骨疲労骨折などがあります。
編集部
どのようなタイミングで受診するべきですか?
長﨑先生
神経腫になるまで病態が悪化すると手術を要する場合もあるため、症状が悪化しない内に早めに受診することをおすすめします。ほかの病気の可能性もありますので、専門家の診断のもと適切な治療を受けましょう。
編集部
モートン病を予防する方法について教えてください。
長﨑先生
足部内在筋のエクササイズ(タオルギャザー、足の指のグーチョキパー運動)、足関節背屈ストレッチ(アキレス腱伸ばし)などの運動療法、横幅の窮屈な靴やハイヒールなどの足趾を背屈させるような靴の常用を避けることが予防において重要です。
編集部まとめ
モートン病は、足の指の付け根に痛みやしびれを引き起こす病気で、多くの女性に影響を及ぼします。足の変形やハイヒールの常用などが原因とされ、放置すると神経腫が形成され手術が必要になることもあります。しかし、適切な靴の選び方や足のエクササイズ、早期の病院受診によって症状を予防・軽減することが可能とのことでした。日常生活での小さな工夫が健康な足を保つ鍵となります。本稿が皆様の健康維持の一助となりましたら幸いです。