足の裏の痺れ、原因は「足根管症候群」かも? 放置すると手術の可能性も…
足の裏にしびれや痛みがあると、普段の生活で歩くことすらつらくなります。そのような症状の背景には「足根管症候群」という病気が隠れているかもしれません。放置すると痛みやしびれが残り手術の可能性もあるそうです。そこで今回は、足根管症候群の原因や治療法、足の健康を守るための方法について、下北沢病院副院長の長﨑和仁先生に解説していただきました。
監修医師:
長﨑 和仁(下北沢病院)
足根管症候群について知る
編集部
はじめに、足根管症候群という病気について教えてください。
長﨑先生
足の裏を支配する神経は、足首の「内くるぶし」の下のトンネル(脛骨・距骨・踵骨の骨と屈筋支帯という靭帯でかこまれた空間:足根管)を通って、足の裏から足趾に向かって走行していますが、そのトンネルには神経のほかに 動脈、静脈、結合組織でみたされています。何らかの原因でトンネル内が狭くなり神経が締め付けられると痛みなどの症状が出ます。そのような病態のことを足根管症候群といいます。
編集部
足根管症候群なりやすい人はどのような人ですか? 原因についても教えてください。
長﨑先生
原因は不明なことが多いですが、外傷、ガングリオン(ゼリー状の液体のかたまり)などの腫瘍(しゅよう)性病変による圧迫、足根骨癒合症などの先天性骨異常による圧迫、偏平足などによる圧迫、きつい靴などの履き物による外部からの圧迫などによって起こるとされています。
編集部
足根管症候群では、どのような症状が出ますか?
長﨑先生
踵以外の足の裏から足の指にかけてしびれや痛みがでます。足の甲や足首より上の方にしびれや痛みが出ることはありません。足をつくと、砂利の上を歩いているような、草履をはいているような感覚の触覚異常や、冷たくないのに冷たく感じるなどの温度感覚異常を伴うこともあります。
「放置するリスク」と「治療方法」とは
編集部
放置していると、どのようなリスクがありますか?
長﨑先生
神経や血管の損傷を引き起こし、足の痛みやしびれが長期化する恐れがあります。放置していると手術の可能性もあるので、早期発見、早期治療にて、症状の改善が期待できます。
編集部
治療法についても教えてください。
長﨑先生
足の形に合った靴を履いたり、足底挿板(インソール)を作成し神経の圧迫や緊張を和らげたります。抗炎症剤やビタミン剤などの薬物療法や、ガングリオンがある場合は注射にて液体を抜き取り神経の圧迫を和らげる場合もあります。
編集部
インソールや薬物療法で治らない場合、どのような治療になりますか?
長﨑先生
保存的治療でも症状が緩和しない場合は、手術療法をおこないます。ガングリオンなどの腫瘍性病変がある場合は摘出術、足根骨癒合症がある場合は骨のでっぱりを削る手術、そして足根管を通過している神経や血管の上に覆いかぶさっている靭帯(屈筋支帯)を切開する減圧術などがあります。
セルフチェック方法と予防方法を知る
編集部
足根管症候群かどうかをセルフチェックする方法はありますか?
長﨑先生
足首の内くるぶしのトンネル内の神経が通っている部分を強く押したり、叩いたりすることで、しびれや痛みが生じた場合は足根管症候群を疑います。
編集部
どのようなタイミングで、受診するべきですか?
長﨑先生
足の裏のしびれや痛みが感じられる場合は、ほかの病気の可能性の鑑別も必要であるため、専門家の診断のもと適切な治療を受けましょう。症状が進行すれば慢性化しますし、手術を要する病態もあるため、症状が悪化しないうちに早めに受診することをおすすめします。
編集部
足根管症候群を予防する方法について教えてください。
長﨑先生
定期的な運動をおこない足の筋力を維持すること(運動不足の解消)、足首をサポートするような適切な靴を履くこと、肥満症は病態を悪化させてしまうため適正体重を維持することなどが挙げられます。特に、ふくらはぎの筋肉のストレッチが有用とされております(20秒3セットが目安)。
編集部まとめ
足根管症候群は、足の裏に痛みやしびれを引き起こす病気で、放置すると症状が悪化し、日常生活に大きな影響を及ぼす可能性があると教えていただきました。適切な靴の選び方や運動療法が重要で、早期発見・治療のためにも症状を感じた場合は医療機関を受診することが症状の予防や軽減に役立ちます。本稿が、読者の皆様にとって、足の健康を考えるためのきっかけとなりましたら幸いです。