【闘病】シェーグレン症候群を発症して10年 近年は「毎年入院するように」
闘病者のりんさん(仮称)は、2009年にシェーグレン症候群と診断を受け、合併症とも闘いながら日々過ごしています。シェーグレン症候群は国内に約7万人の患者がいるとされる難病の1つで、現代の医療でも根本的な治療法は発見できていません。りんさんのシェーグレン症候群を患った経緯を通して、病気についての理解を深めていきましょう。そして、同じ病で苦しむ人が身近にいる方は、どのような手助けをすればよいのかというヒントにしてください。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年4月取材。
体験者プロフィール:
りんさん(仮称)
50代の女性。2004年頃から健康診断で「TTT(チモール混濁試験)」の結果に異常が指摘されていた。2009年9月頃に手の痺れで病院を受診したところ、精密検査の結果、10月に「シェーグレン症候群」と診断される。また、2011年には合併症で「原発性胆汁性胆管炎」の診断、さらに2019年には「全身性強皮症」との診断も受けた。現在は毎月の定期通院と検査、投薬治療を続けている。
記事監修医師:
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
思いもよらない病名と症例数の少なさという困難に直面
編集部
初めに「シェーグレン症候群」について教えていただけますか?
りんさん
シェーグレン症候群は膠原病の一種で、ドライアイ、ドライマウスなどの乾燥症状が主な症状と言われています。40~60代の女性に多いとされる疾患で、私が発症したのも好発年齢でした。私の場合、診断直後はドライアイもドライマウスもなかったのですが、実は唾液量と涙の量が圧倒的に少なかったことがわかりました。シェーグレン症候群は症状が十人十色なので一概には言えませんが、私は手が何日も痺れるので「おかしいな」と思ったことから、近医を受診しました。
編集部
診断までの経緯も教えていただけますか?
りんさん
近医では、いつもより顔が赤かったことで「膠原病ではないか」と目星をつけられ、詳しい検査を行いました。ただ、当初は「膠原病の心配はないでしょう」と言われたので安心して検査結果を聞きに行ったところ、「血液検査で異常値が出ている」と指摘されました。すぐに紹介状を持って、大学病院の膠原病内科を受診し、精密検査を行ってシェーグレン症候群と診断されたという経緯です。
編集部
大学病院ではどのような検査を行ったのでしょうか?
りんさん
確定診断のために、涙の量を測るシルマーテスト、唾液腺疾患のMRI、唾液腺生検、皮膚生検などを行いました。
編集部
シェーグレン症候群と告知されたときの心境はどのようなものだったでしょうか?
りんさん
「いつも元気だね」と言われてきた人生でしたので、まさか自分が難病になるなんて考えもしませんでした。友達や周りの方が心配してくれましたが、家族には心配をかけるので言いませんでした。
編集部
シェーグレン症候群の治療はどのように進めると説明されたのでしょうか?
りんさん
シェーグレン症候群は国指定の難病で、現時点では根本的な治療法はありません。大学病院でも検査と人工涙液、人工唾液の処方、ステロイド薬や漢方薬などの投薬が主流でした。また、私が住む地域では圧倒的に症例が少なかったため、主治医も手探りのような感じを受けました。私がシェーグレン症候群の診断を受けたときは、まだ厚生労働省が東京都しか特定医療費(指定難病)受給者証の認可をしておらず、治療費用は毎回1万円以上を超えて大きな負担でした。
調子の良い日は体を動かしたり、外出したりするのが楽しみ
編集部
シェーグレン症候群と診断されてから、生活にどのような変化があったのでしょうか?
りんさん
体調が悪くなることが多くなり、予定が立てられないことが増えました。例えば、その日になって急に体調が悪くなることもあり、友達に会う予定や旅行が組めず、無理もきかなくなりました。ほかにも、涙や唾液量が少ないため粘膜が乾燥しやすく、感染症にはものすごく気をつけるようになりました。その一方で、生活の大半を過ごす職場では、目指していた仕事の目標を諦めないといけないケースも出てきて悔しい想いもしました。
編集部
仕事は病気発症後も続けているのですね。
りんさん
仕事はずっと続けています。調子の良い日にはヨガをしたり、ドライブやランチに出掛けたりすることもあります。
編集部
これまでりんさんの心の支えになったものは何でしょうか?
りんさん
大好きな友達と話すこと、そしてSNSで同じ病気の仲間と知り合い、病気の情報を共有することです。ストレス発散になるだけでなく、お互いに支え合う存在になっています。
編集部
現在の体調や生活の様子についても教えてもらえますか?
りんさん
2009年に発症してから10年間は普通に生活していましたが、2019年頃から毎年治療で入院するようになりました。この取材を受けている現在(取材時)も入院中で、ステロイドを投薬しています。昨年末に歌手の八代亜紀さんが膠原病による進行性の肺炎で亡くなられていたので、私自身も感染症などには慎重になっていましたが、肺炎を併発し、入院することになりました。
目に見えない病でも、たった一言の声掛けで助かる人がいる
編集部
もし病気と判明する前の自分に声をかけられるなら、何と伝えたいですか?
りんさん
とにかく病気になってからも仕事人間だったので、自分の身体を第一に考えて、「もうそんなに頑張らなくていいんだよ」と言ってあげたいです。
編集部
りんさんからシェーグレン症候群について知らない方、普段意識せず過ごしている方にメッセージをお願いします。
りんさん
私は病気をオープンにしていますが、正直、職場に出ると健康な方と同じ一人前とみなされてしまいます。目に見える病気ではありませんし、配慮してもらえていないと感じることは多々あります。「大丈夫?」と気遣いの一言があるのとないのとでは、気持ちも全然違ってくることを知ってほしいです。
編集部
りんさんが医療従事者に期待することはありますか?
りんさん
まず思うことは、感謝です。夜通し患者さんの心に寄り添って看護してくださり、頭の下がる想いです。強いて言えば、患者さんに対しては、子どもに接するような優しい口調を心がけていただきたいです。
編集部
最後にりんさんの経験を通して伝えたいことと、読者の方へ向けてメッセージをお願いします。
りんさん
体調が悪ければ、わずかな身体の異変も見逃さずにすぐ受診してほしいです。納得いかない診断なら、自分が納得するまで何度でも病院を変えて、きちんとした診断を受けてください。また、健康診断や人間ドックの検査結果を軽く見ないことです。要検査・要治療と出たら、イエローカードかレッドカードと受け止めて、いかなる理由があっても決して放置してはいけません。そして、読者のみなさんも、心のどこかに「私に限ってそんな病気に罹るはずがない」と思っている節があるはずです。「これくらい大丈夫」とか「どうせ風邪だから」と過信していることもあると思います。この記事を読んでくださった方の中で、病院に行くべきか迷っている方がいるなら、すぐに受診して安心していただきたいです。また、シェーグレン症候群に限らず、長期にわたって治療や通院が必要な病気と向き合っている方、これから向き合う方には、「主治医との相性」も治療をするうえでとても重要になってくると伝えたいです。納得できる治療方針を一緒に考えてくださる先生、患者さんの心に寄り添い、聴く耳を持ってくださる先生を探し、安心して治療を受けてほしいと思います。
編集部まとめ
りんさんの話の冒頭にもあった通り、シェーグレン症候群の症状は乾燥が主であり、患者自身も気付かないことがあります。身近な方で「最近急に顔が赤くなってきたな」「よく目薬をしているな」という人がいるなら、シェーグレン症候群ではなくても体調不良の可能性があります。まずは周囲にいる人の体調を普段から観察し、辛いときは助け合える関係を作りましょう。「まさか自分が」と思うこともあるかもしれませんが、万が一のときに助けてもらえる社会にしていくことが大切です。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。