【闘病】「生理不順」と思っていたら「子宮体がん」だった 三度の大手術も経験
話を聞いた、はなうたねこさん(仮称)は不正出血だと思っていた症状が実は「子宮体がん」によるものだったと判明しました。子宮体がんの症状は注意しなければ見逃しやすく、発見したときにはかなり進行していることがあります。14年経った現在も元気に過ごしているはなうたねこさんの体験から、子宮体がん発見の難しさと検診の大切さを学びましょう。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年3月取材。
体験者プロフィール:
はなうたねこさん(仮称)
50代女性。2008年頃から少量の不正出血が続いていたが、2年ほど経過した2010年5月に大量出血した。産婦人科で検査をしたところ、子宮体がんとの診断を受けた。子宮・卵巣全摘術、リンパ節切除、抗がん剤治療などを経験し、手術から5年後に治療終了。治療から14年経過し、現在は転移もなく元気に過ごしている。
記事監修医師:
鈴木 幸雄(神奈川県立がんセンター/横浜市立大学医学部産婦人科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
「ただの生理不順」ではなかった
編集部
はじめに子宮体がんについて簡単に教えていただけますか?
はなうたねこさん
子宮体がんは女性の骨盤内にある子宮にできるがんのことです。子宮体がんは子宮上部の袋状になっている「子宮体部」に生じるがんになります。子宮体がんは進行に伴って子宮頸部や卵巣、リンパ節、膀胱、直腸などに転移することもあります。子宮体がんは出産経験がない人や肥満の人に多いといわれているそうです。
編集部
はなうたねこさんが子宮体がんと診断されるまでの経緯も教えていただけますか?
はなうたねこさん
2008年頃から、毎日少量の不正出血が1~2年ほど続いたことがきっかけでした。最初は「ただの生理不順」だと思い、病院には行きませんでした。しかし、2010年5月頃にレバーの塊のような大量出血があり、近くの産婦人科を受診しました。同年7月に大きな病院を紹介され、精密検査をした結果、子宮体がんと診断されました。診断を受けた時点で発生から長い時間経過していたのではないかとのことで、かなりの驚きでした。
編集部
医師からの説明はどのような内容だったのですか?
はなうたねこさん
開腹手術でがんに侵されている子宮を全摘出し、転移の可能性がある卵巣と周囲のリンパ節も切除するとのことでした。また、摘出した臓器も検査し、進行具合によって抗がん剤治療をするかどうかも決めると説明されました。
編集部
告知を受けたときの心境も教えていただけますか?
はなうたねこさん
説明を受けたときは頭が真っ白になりました。今まで病気をしたことがなかったので、信じられず、ぼんやりした状態で入院手続きをしました。家に帰ってからもこれから先の治療のこと、お金のことを考えると不安でいっぱいでした。
がんや抗がん剤治療、6年間で3回の開腹手術を経験
編集部
はなうたねこさんの受けた治療についても聞かせてください。
はなうたねこさん
子宮体がんがかなり進行していたことと、たまたま手術室も空いていたことで、診断から2週間ほど過ぎた8月初めに子宮・卵巣全摘術とリンパ節44個を切除する開腹手術を受けました。手術後には抗がん剤治療も行ったことで、脱毛や味覚障害、しびれといった副作用も経験しました。また、同年11月には原因不明のイレウス(腸閉塞)になり、救急車で運ばれて緊急手術、小腸の一部を切除する手術も経験しています。
編集部
抗がん剤治療はどのくらいの期間行ったのですか?
はなうたねこさん
当初は6回実施する予定だったのが、緊急手術のこともあり、大事をとって3回で終了になりました。期間にすると2カ月程度です。
編集部
抗がん剤治療後はどのような治療方針だったのでしょうか?
はなうたねこさん
経過観察では、血液検査、内診、エコー検査、CTなどを行うのみでしたが、特に転移もなく過ごすことができました。2015年にはがんの手術から5年が経過し、転移もないということで治療終了になりました。
編集部
病気の診断後、治療期間も含めて生活にどのような変化がありましたか?
はなうたねこさん
術後の話になりますが、開腹による大手術だったため、退院後もしばらくお腹に力が入らず、腹帯なしでは歩くのもおぼつかないほどでした。特に食事の支度、洗濯、買い物などの家事が「しんどい」と感じました。また、子宮は産婦人科、化学療法は腫瘍内科、腸は消化器内科と、病気自体は一つなのにいろいろな科を周るのは大変でした。
編集部
治療中の心の支えになったものはありますか?
はなうたねこさん
家族や友人、職場の人たち、入院中に仲良くなった看護師さんが応援してくれたことです。メールや電話で話を聞いてくれたり、帽子や健康食品をプレゼントしてくれたり、お見舞金をいただいたりしたこともあります。職場の人には毎日会うのでがんのことも伝えていて、いろいろな話を聞いてもらいました。ほかにも家族や友人に会うなど、楽しい予定を日々の目標にして過ごしていました。
編集部
治療が終了になってからは、体調に問題はなかったのですか?
はなうたねこさん
治療終了の翌年の2016年5月に、またしてもイレウス(腸閉塞)になり、救急車で病院に搬送されました。前回と同じく小腸の一部を切除しなければなりませんでした。6年間で3回も開腹手術をしたことになり、「なぜ続けてこんな目に遭うのだろう」と一時期は落ち込みました。子宮体がん治療のために卵巣を切除した影響で、現在は骨粗しょう症の治療を受けています。
検診では「子宮体がん」のチェックも忘れずしてほしい
編集部
現在、はなうたねこさんが生活で気を付けていること、取り組んでいることを教えてください。
はなうたねこさん
食生活は野菜を中心にしています。小腸を切除したせいか、食べたものによってはお腹が痛くなり、夜眠れなくなるため、夕食は特に気を遣っています。また、趣味として自分のがん体験をマンガにしたり、ウォーキングがてら花の写真を撮ったりしていて、それをインスタグラムに投稿するのが楽しみです。ほかにも映画を観たり、美術館に行ったりするのも好きです。仕事もしていますが、無理だけはしないように気を付けています。
編集部
子宮体がんについて知らない人、普段意識していない人にメッセージをお願いします。
はなうたねこさん
子宮体がんは増加傾向にあるそうです。健康診断の「子宮がん検診」は、「子宮頸がん」の検診のことで、「子宮体がん」ではないことが多いそうです。不正出血が続く場合は、積極的に婦人科を受診したほうがいいと思います。
編集部
はなうたねこさんの経験から、医療従事者に期待することはありますか?
はなうたねこさん
担当医ともっと話す時間もあるといいなと思います。医師はいつも忙しそうで、質問があってもなかなか聞けませんでした。
編集部
記事の読者に向けてメッセージをお願いできますか?
はなうたねこさん
どんな病気も早期発見が大切です。早いほど治療期間は短く、医療費は安く済み、治る確率も上がります。私の場合は「大丈夫だろう」と放置していたら、ステージ3Cとかなり進行しており、大きな手術をすることになりました。運よく仕事に戻れましたが、治療が長引くとそれも難しくなるかもしれません。定期的な健康診断と、「おかしいな」と思ったときは病院に行ってほしいです。
編集部
闘病経験を通して、多くの人に知ってほしいことはありますか?
はなうたねこさん
一人暮らしで病気になるのは本当に大変だということです。一人では何とかしたくても入院の保証人、手術の同意書、付き添いの人、金銭の貯えもなく、医療費や生活費を家族に助けてもらわないと何もできませんでした。また、具合が悪くても有給休暇は使い果たしてしまい、仕事をしなければなりません。落ち込んだときに慰めてくれる人もおらず、同居している人がいないのは心細かったです。
編集部
「こうなったらいいな」という希望などはありますか?
はなうたねこさん
がんに限りませんが、病気になったときに国や自治体から所得に応じた給付金がもらえたり、ヘルパーを派遣してもらえたりすると助かると思います。一人暮らしの人が増えているので、お金も人手も家族に頼らざるを得ない現状を改善してほしいです。
編集部まとめ
子宮がん検診では主に子宮頸がん検診が行われています。記事監修の鈴木先生曰く、子宮体がんは検診で早期発見することが難しいようです。その代わり、閉経した後の不正出血で早期発見できるケースがほとんどだそうです。ですから、不正出血があった場合は、迷わず産婦人科を受診することを勧めします。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。
監修医師からのコメント:
鈴木先生
担当医と話すのももちろん大事ですが、がん治療はチームで情報を共有して診ていますので、本記事をご覧の皆さんには、がん治療の際は担当医師だけでなく看護師などにもぜひ質問・相談してみることをお勧めします。担当医師だけでなく、看護師、薬剤師、緩和ケアチームなどが患者さんと関わっていけるように国としても「がん対策推進基本計画」の中で体制づくりを進めています。その中で「がん相談支援センター」ががんの拠点病院には整備されております。
https://ganjoho.jp/public/institution/consultation/cisc/content.html