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「用手肛門拡張術」で切れ痔は改善できる それでもダメなときの手術法とは?

 更新日:2024/08/26
「用手肛門拡張術」で切れ痔は改善できる それでもダメなときの手術法とは?

便秘などが原因で発症することが多い「切れ痔」。慢性化すると痛みが持続したり、傷が治りにくくなったりして、生活に支障を来すこともあります。再発を繰り返す場合には手術が適用になることもありますが、一体どのようにして手術をするのでしょうか。しらはた胃腸肛門クリニック横浜の白畑先生に詳しく教えてもらいました。

白畑 敦

監修医師
白畑 敦(しらはた胃腸肛門クリニック横浜)

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昭和大学医学部卒業。その後、昭和大学藤が丘病院、山王台病院、関東労災病院、横浜旭中央総合病院で経験を積む。2017年、神奈川県横浜市に「しらはた胃腸肛門クリニック横浜」を開院。消化器に関することならなんでも相談できる、話しやすいクリニックを心がけている。医学博士。日本大腸肛門病学会専門医・指導医・評議員、日本消化器外科学会専門医・指導医、日本外科学会専門医・消化器がん外科治療認定医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本臨床肛門病学会技術指導医、神奈川県難病指定医、身体障害者福祉法指定医。

切れ痔とは? 放置するとどうなる?

切れ痔とは? 放置するとどうなる?

編集部編集部

切れ痔とはなんですか?

白畑 敦先生白畑先生

「裂肛」とも呼び、肛門の皮膚や粘膜が切れたり裂けたりする疾患のことを言います。多くの場合、太い便や硬い便、下痢などで勢いよく便が肛門を通過する際に起こります。

編集部編集部

どのような症状が見られるのですか?

白畑 敦先生白畑先生

排便時に痛んだり、出血をしたりするのが代表的な症状です。特に、便秘したときや硬い便をしたときに症状が出ることが多くなります。ただし、出血量はそれほど多くなく、数日で症状が改善することが大半とされています。

編集部編集部

放置するとどうなるのですか?

白畑 敦先生白畑先生

症状は一旦おさまりますが、便秘をしたり、下痢をしたりするときには症状を繰り返しやすくなります。裂肛を繰り返し、慢性化した場合には、排便時の痛みが排便後も持続することもありますし、また、同じ場所が何度も切れると傷が深くなり、潰瘍になることもあります。

編集部編集部

症状を繰り返すことがあるのですね。

白畑 敦先生白畑先生

はい。それから傷も治りにくくなりますし、粘膜損傷と治癒を繰り返して、肛門狭窄や肛門ポリープをきたす慢性裂肛に移行します。慢性裂肛になると手術が必要になりますから、できるだけ軽症のうちに治療を開始することが大切です。

切れ痔の治療法

切れ痔の治療法

編集部編集部

切れ痔はどのようにして治療するのですか?

白畑 敦先生白畑先生

初期の切れ痔であれば、便秘や下痢の改善に努めるとともに、塗り薬などの薬物療法で改善を目指します。特に、便秘や下痢を治すのはとても重要で、規則正しい生活を送ったり、朝食をしっかり取ったり、朝食後にトイレへ行く時間を作ったり、生活のスタイルを見直すことが大切です。

編集部編集部

薬はどのようなものを使うのですか?

白畑 敦先生白畑先生

基本的に、切れ痔は肛門の裂傷であり、軟膏を患部に直接塗布するのが一般的です。痛みを抑える薬や止血薬、かゆみを止める薬などを症状に応じて選択します。

編集部編集部

市販薬もありますが、自分で選んでも良いのでしょうか?

白畑 敦先生白畑先生

ドラッグストアでは、切れ痔の痛みを抑える薬などがたくさん市販されています。緊急の場合には、そうした薬を使用するのも良いかもしれません。しかし、何度も症状を繰り返すなど、慢性化している場合には市販薬に頼らず、早めに病院を受診することが必要です。

編集部編集部

痔で病院を受診するのは恥ずかしい感じもします。

白畑 敦先生白畑先生

はい、特に女性はそう感じる人が多いかもしれません。また、痔は命に関わる疾患ではないため、治療を後回しにしてしまう人も少なくありません。しかし、排便時に出血があったからといってすぐに痔と決めつけ、治療をせずに放置するのは危険です。

編集部編集部

それはなぜですか?

白畑 敦先生白畑先生

出血の原因は痔ではなく、もしかしたら大腸がんをはじめ、大腸の疾患が原因かもしれないからです。市販薬を使用しても症状がおさまらない場合や、便潜血検査で陽性を指摘された場合などは、念のため、病院を受診することをお勧めします。

切れ痔に対する手術療法

切れ痔に対する手術療法

編集部編集部

薬物療法や生活習慣の改善でも切れ痔が治らない場合には、どうしたら良いのでしょうか?

白畑 敦先生白畑先生

その場合には手術を検討します。一般的には、下記の条件に当てはまる痔には手術が適応となります。

  • 再発を繰り返すもの
  • 肛門括約筋の緊張が強度で排便時、排便後の疼痛が激しいもの
  • 慢性化して狭窄を認めるもの
  • 炎症性肛門ポリープを認めるもの
  • 潰瘍、痔ろうを形成しているもの

編集部編集部

切れ痔の手術はどのようにして行うのですか?

白畑 敦先生白畑先生

さまざまな術式がありますが、たとえば当院では、狭窄を認める慢性裂肛の治療には最も低侵襲である「用手肛門拡張術」をまず初めにお勧めしています。

編集部編集部

それはどのような治療ですか?

白畑 敦先生白畑先生

これは仙骨硬膜外麻酔によって行われるもので、炭酸ガスレーザーを使用して狭窄の起点となっているポリープや難治性の潰瘍や瘢痕(はんこん/傷の跡)をレーザーで蒸散させ、肛門を拡張する非常に低侵襲な手術です。肛門超音波検査や肛門内圧測定などにより術前後の客観的評価も可能です。

編集部編集部

それでも治らない場合にはどのような治療を行うのですか?

白畑 敦先生白畑先生

側方内括約筋切開術」や「皮膚弁移動術」を検討します。側方内括約筋切開術は内肛門括約筋を直接メスで切開し、狭窄を改善する方法です。一方、皮膚弁移動術は、瘢痕化した裂肛部分を切開あるいは切除して狭窄を解除したあと、肛門の外側の皮膚を移動させ、肛門の縁に覆い被せて縫い合わせる手術のことをいいます。

編集部編集部

これらはどのような基準で選択するのですか?

白畑 敦先生白畑先生

切れ痔の多くは用手肛門拡張術で改善できます。しかし、慢性化して深い傷になっている切れ痔に対しては、レーザーによる肛門拡張術や皮膚弁移動術が行われることがあります。また、筋肉が硬くなっている場合には側方内括約筋切開術が行われます。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

白畑 敦先生白畑先生

切れ痔は有病率が多い病気であり、誰にも相談できず、ひとりで悩んでいる方は少なくありません。一時的な症状であれば、ドラッグストアなどで市販されている薬を使い、様子を見るのも良いと思います。しかし、痛みが繰り返す場合や、痛みが強い場合にはできるだけ早めに医師の診察を受けることが大切。万一、手術が必要になった場合でも日帰りで治療を受けることができるので、多忙な方でも安心です。切れ痔で困ったことがあれば、受診することをお勧めします。

編集部まとめ

恥ずかしいからといって、受診をためらっている人も多いかもしれませんが、放置すればするほど治りにくくなるのが切れ痔の特徴。日帰り手術で根治できるのですから、悩んでいないで、早めに受診してみましょう。

医院情報

しらはた胃腸肛門クリニック横浜

しらはた胃腸肛門クリニック横浜
所在地 〒226-0027 神奈川県横浜市緑区長津田5-6-32
アクセス 東急田園都市線・JR横浜線「長津田駅」 徒歩3分
診療科目 内視鏡内科、肛門外科、胃腸内科、漢方内科

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