【闘病】ドクターショッピングの末にわかった「クローン病」 なんで自分が…
小腸大腸を中心に全ての消化管粘膜に炎症や潰瘍を起こす疾患で、国の難病にも指定されているクローン病を患ったナオコさん。ここでは彼女が経験した症状や治療、現在の生活などからクローン病との向き合い方、生活上の注意点を聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年2月取材。
体験者プロフィール:
ナオコ(仮称)
家族と暮らす40代女性。2018年10月に救急外来を受診後、即入院となり、その後の検査でクローン病が判明した。MRI、内視鏡検査、胃カメラなどの検査を行い、止まらない咳で呼吸器科での検査も加わり、約1ヶ月間入院となる。現在は点滴と内服を継続し、仕事ができる状態で安定している。
記事監修医師:
岡本 彩那(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
不調の原因がわからずドクターショッピングが続く日々
編集部
初めにクローン病について教えていただけますか?
ナオコさん
炎症性腸疾患(IBD)の一つで消化管の大腸と小腸の粘膜に慢性的な炎症と潰瘍が発生します。原因についてははっきりしていませんが、遺伝や細菌・ウイルス、食事の成分、血流の障害など様々な学説があるそうです。
編集部
どのような症状があるのでしょうか?
ナオコさん
粘膜の炎症によって腹痛や下痢、血便、体重減少などが現れます。クローン病は若い方に多いとされ、消化管の粘膜に炎症や潰瘍が生じます。
編集部
ナオコさんがクローン病と判明するまでの経緯も教えていただけますか?
ナオコさん
クローン病と判明するずっと前から、原因不明の咳がありました。何が原因かわからず、様々な診療科で薬や漢方薬、吸入薬をもらっても改善しない日々を過ごしていました。そのうちお腹も下すようになりましたが、それよりも咳のほうが辛く、受診してもお腹のほうにはフォーカスされずにどんどん悪化していきました。さらに、脱水症状で点滴をして帰されることが続いたため、総合病院の救急外来を受診しました。ちょうど消化器内科のIBD専門の医師だったこともあり、即検査と入院になりました。その時点で「おそらくクローン病でしょう」と言われ、聞いたことのない病気だったこともあり、よく理解できていませんでした。
編集部
病名が判明した時の心境はどのようなものでしたか?
ナオコさん
知らない病名でしたし、体も辛いし、絶望感で一杯でした。病理検査で結果が出るまで時間があったため、「私は死ぬのか」「今までみたいな生活は遅れないかも」と頭の中はネガティブキャンペーン状態でした。ただ、時間だけはあって暇だったので、色々と調べるうちに、クローン病というものを理解しました。一生付き合っていく必要があること、食事制限があることも知りました。私はこれまで、飲むこと・食べることが楽しみで生きてきました。さらに、離婚したばかりだったこともあり、「なんで今の自分なんだ」とぶつけようのない怒りが湧いてきて、受け入れるまでにはかなりの時間が必要でした。
編集部
医師からはどのように治療を進めると説明があったのでしょうか?
ナオコさん
子どものときから尋常性乾癬持ちだったので、そちらにも使えるステラーラの投与を勧められました。試しにやってみたところ、状態が良さそうだったので現在も継続しています。咳は呼吸器科の検査でも原因がわかりませんでしたが、入院で消化器の治療が落ち着くに従って改善しました。先生としても「クローン病と咳の因果関係は証明が難しいものの、症状が治るにつれて咳も緩和されるなら関係していると言えるのかもしれない」とのことでした。また、「エレンタールを飲めるようなら続けてほしい」と説明されました。最初は飲みにくくて吐くこともあり、かなりストレスでしたが、今は慣れてきて1日に1回飲んでいます。
ストレスを溜めず、好きなことをして健康に過ごすことが治療
編集部
治療開始後の生活の変化も教えていただけますか?
ナオコさん
入院中は絶食期間もありましたから、その分食べられることに喜びを感じていました。今ではたばこも完全にやめ、お酒もほとんど飲まなくなりましたが、その代わり、甘党になって退院後はご飯やおやつをたくさん食べ、エレンタールも飲んでいたため、肝機能の数値が一気に上がってしまいました。脂肪肝になってしまい、今でも肝機能の数値は上がりやすいので、炎症の程度を示すCRP値よりも肝機能のほうを注意している状態です。日頃から甘いものと食べ過ぎによるカロリーオーバーには気を付けつつ、適度に運動して太らないようにしています。
編集部
ナオコさんが治療中に心の支えにしていたもの、支えになったものは何ですか?
ナオコさん
退院後にしたいという想い、食べたいものを考えること、あとは友人や家族の支えも大きかったと思います。それまではいつも元気だったので、私が入院したと聞いて、周りの人達も驚いたそうです。面会にもたくさんきてくれたのが、入院中はとても嬉しかったです。当時は新型コロナウイルスの流行前でしたから、普通に面会できて良かったと思っています。
編集部
現在の体調や普段の過ごし方についても伺えますか?
ナオコさん
今はお腹の状態は落ち着いています。今ではすっかり健康オタクで、体に良い物を積極的に選ぶようになりました。また、ドライブや一人旅、ソロキャンプも休日の楽しみです。ただ、食べ物によってはお腹を下すこともあるので、そんな時は「自分はクローン病なんだな」と実感します。クローン病は脂肪分の摂取が良くないため、高カロリー・高たんぱく・低脂肪・低残渣の食事が良いとされています。私も野菜を多めに摂り、脂肪分を控えてグルテンフリーな食事を心掛けています。
編集部
ナオコさんが特に注意していることはありますか?
ナオコさん
私は食欲があるので、肝機能を意識しながら太らない生活になるよう気を付けています。食事と運動のバランスが良い生活を送ると、受診した時の数値もはっきり変わりますから日々気を使っています。定期的な運動と冷え性改善のためにジムにも時々通っています。あとはストレスを溜めないように休日は好きなことをしているので、周りからはのんきな自由人と思われているようです。
病気をオープンにすることで理解してもらうきっかけに
編集部
クローン病について知らない方、意識したことがない方にメッセージをお願いできますか?
ナオコさん
自分もそうですが、改めて自分から話さないと周囲からは病気があるとは思われません。もし近くに病気を抱えている人、抱えていそうな人がいたら、ぜひ配慮してもらえるとありがたいです。私自身も自分がこの病気になるまで存在を知りませんでした。だからこそ、私の場合は自分からクローン病のことを話すようにしています。実際、話したことで、クローン病について知ったという周囲の人も多かったです。今の職場では理解のある人が多くて感謝しています。
編集部
医療従事者に希望すること、期待することはありますか?
ナオコさん
入院中の担当医の先生はもちろん、看護師さんにも大変お世話になり、本当にありがたかったです。今後のことでいえば投薬もそうですが、最新の治療など色々な方法、情報を常に教えてもらい、患者側にも考える機会を作ってほしいと思います。
編集部
最後に本記事の読者向けにメッセージをお願いできますか?
ナオコさん
現在もクローン病で辛い思いをしている方へ、私の経験が少しでも参考になれば嬉しいです。体調が良くない時は、体からのSOSだと思って病院に行ってください。そして、無理をしないことです。私は今寛解状態なので、「こんなことやあんなこともできるんだよ」という前向きな発信を私自身もしていきたいと思います。
編集部まとめ
クローン病と認定され、特定疾患医療受給者証の交付を受ける方は年々増加しています。令和元年時点で約4万4000人に上っており、1976年の128人から300倍以上に増加しました。クローン病という病気を診断できる医師も増えている証拠とも言えますが、完治につながる治療法は未だに確立されていません。クローン病を聞きなれない方も多いかと思いますが、少しでも思い当たる症状があれば、早期受診をおすすめします。寛解すればナオコさんのように普通の日常に戻ることもできますから、異変を放置しないことが何よりも大切です。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。