婦人科医が語る「妊娠前ケアの重要性」妊娠を望んだときに取り入れるのは手遅れ!?
「プレコンセプションケア」という単語を聞いたことはありますか? なんとなく専門性の高い特別なケアのような響きがありますが、とくに病気ではない人にもぜひ知っておいていただきたい概念です。今回は、プレコンセプションケアが妊娠前に必要な理由について、「アロリエクリニック」の市川先生に解説していただきました。
監修医師:
市川 りえ(アロリエクリニック)
目次 -INDEX-
プレコンセプションケアとは?
編集部
プレコンセプションケアとはなんですか?
市川先生
「コンセプション」は「受胎」や「妊娠」という意味があり、「プレ」は、「〜の前に」ということなので、「プレコンセプションケア」は、妊娠前のケアということになります。つまり、プレコンセプションケアは「妊娠前の体づくり」ということですね。明確な定義があるわけではないので、性感染症の検査などを含む「ブライダルチェック」と似たような意味合いで使われることもあります。
編集部
プレコンセプションケアの目的を教えてください。
市川先生
妊娠前に体を整えることで、妊孕性(妊娠のしやすさ)につながります。また、「妊娠前に体を整えた」という安心感があることで、妊娠期間の不安軽減の助けになるだけでなく、安心してお産を迎えられます。鉄分などの栄養不足も改善しておくと、妊娠中の体の不調を改善したり、生まれる子どもの健康につながったりすると言われています。
編集部
どんな人にプレコンセプションケアが必要なのでしょうか?
市川先生
「妊娠前に」と言いましたが、これは「妊娠を望んでから」という意味ではありません。個人的にはなるべく早く、生理がきた全ての人に受けてほしいと思っています。先述した鉄不足について、鉄分などの栄養不足を解消すると、生理痛や、朝起きられないといった症状の改善にもなります。
プレコンセプションケアのメリット・デメリット
編集部
プレコンセプションケアの具体的なメリットを教えてください。
市川先生
事前にケアをしておくことで、「妊娠したい」と思った時に体の準備が整っているというのはとても安心なことです。体を整えるのには1年くらいかかる場合も多いので、時間のロスなく妊活に取り組めると思います。
編集部
では、注意点やデメリットはありますか?
市川先生
保険が適用されず自由診療となるため、やや高額に感じるかもしれないので注意が必要です。あとは繰り返しになりますが、体を整えるのには1年くらいかかる場合もあるので、妊娠を考え始めてからではやや遅いということが挙げられます。
編集部
プレコンセプションケアは、海外では一般的なのですか?
市川先生
先進国では一般的だと思います。プレコンセプションケアに関わらず、海外では予防医学がメインの考え方で、食べ物や栄養についての医療政策が根づいています。
プレコンセプションケアはどこで受けられる? 妊娠するために日常生活で気をつけたいケアも解説
編集部
プレコンセプションケアは、どこで受けられますか?
市川先生
例えば、一般的な栄養状態の検査は内科でも可能ですし、性感染症や子宮がんの検査、HPVワクチン接種などは婦人科などでも可能です。しかし、妊娠しやすい体づくりや栄養状態のチェックなどは、プレコンセプションケアというメニューを掲げているクリニックなどに相談することをおすすめします。
編集部
専門の医療機関にかかるのですね。
市川先生
しっかりとした検査という意味ではそのとおりですが、医療機関でおこなうものだけがプレコンセプションケアではありません。日常生活の中でご自身ができる体づくりケアももちろんあります。
編集部
具体的には?
市川先生
栄養面で言うと、痩せすぎの女性がとても多いと感じています。現代社会では、食べる量にかかわらず栄養不足になりがちで、特にタンパク質とミネラルが不足している傾向にあります。なんとなく疲れやすいと感じる女性は、食事の改善からはじめてみてほしいです。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
市川先生
私たちはどうしても「病気や不調になってから」「妊娠してから」、体や健康に意識を向けがちです。しかし、本来は「病気になる前」「妊娠する前」に整えることが重要です。例えば、栄養状態が偏った状態で妊娠期間を迎えると、赤ちゃんの栄養状態も偏ってしまい、成人後に肥満や糖尿病などの生活習慣病になるリスクが高まることが報告されています。妊娠を考え始める前から生活習慣を見直し、鉄分などの栄養素をしっかり摂取しておくことが、生まれてくる子どもたちの将来の健康につながるので意識してみてください。
編集部まとめ
今回は、プレコンセプションケアの目的やメリット・デメリットを解説していただきました。単に「妊娠のしやすさ」だけを目指しているのではなく、妊娠中や産後の不調の予防や改善、さらには、生まれてくる子どもの将来の健康にも関わるケアとのことでした。妊娠を考えている人も、そうでない人も、自分の体や生活習慣を見直すという意味で、一度プレコンセプションケアを受けてみてはいかがでしょうか。
医院情報
所在地 | 〒141-0022 東京都品川区東五反田5丁目27−5 5セントラルビル 6階 |
アクセス | JR「五反田駅」 徒歩1分 |
診療科目 | 婦人科、美容皮膚科 |