大腸がん闘病「5年前から検査しておけば…」痔と勘違いで発見遅れる(2/2ページ)
「こんな辛い思いしなくて済んだのに」大腸がん検査の手軽さを痛感
浜野先生
手術、そして術後はいかがでしたか?
立花さん
術後、麻酔が切れた後が大変でした。先生に「どこが痛いですか?」と聞かれても、どこが痛いのかわからないほど、全身が痛くて本当につらかったです。
コロナだったので面会もなく、外の空気も吸えませんでした。だんだんと顔見知りの患者さんができてお話しするようになりましたが「(がんになったことを)受け止められた?」と聞かれるだけで涙が出てきてしまうくらい心身ともに追い詰められていました。
浜野先生
そんな中で、さらに抗がん剤治療をされたのですね。
立花さん
はい。手術を終えて退院できた時は気持ちも少し前向きになっていましたが、抗がん剤治療が始まるとまた崩れてしまいました。
術前の治療とは全く違い、抗がん剤が入ってきた瞬間に何から何まで痛くなりました。目も開けられず、点滴中にお茶をいただいても、喉の中に剣山が刺さるような激痛で飲めませんでした。
浜野先生
とても大変でしたね。
立花さん
手足のしびれもひどく、少しでも冷たいものを触ると叫んでしまうほどでした。
「しびれが出る」とは聞いていましたが、あんなにもひどいしびれってあるのですね。
冬だったので、自宅のフローリングに足をつけないようにし、寝る前はお布団やシーツを暖めてからでないと眠れませんでした、散歩に行こうとしても、外に出ると全身が痛くなってしまい、お尻も痛くてご飯も立って食べていました。
浜野先生
食事は取れていたのですか?
立花さん
食欲もあまりありませんでしたね。温かいお豆腐などを食べていました。
元気になったらキンキンに冷えた生ビールとホルモン焼きを食べよう! と、モチベーションを上げていました。
浜野先生
現在は改善していますか?
立花さん
かなり改善していますが、今でも寒い時や冷たいものに触れた時などはピリッときます。
浜野先生
そうなのですね。
立花さん
体力もかなり落ちてしまい、最近まで普通には動けませんでした。これまでできていたことができなくなり、一気に歳を取ったみたいでショックでした。動けない自分が受け入れられず、レントゲンを撮るのに看護師さんに支えてもらった時は情けなくて泣いてしまいました。
治療が終わっても閉じこもる生活でした。目が覚めると痛みとしびれで地獄だったので、このままずっと眠っていたいと思っていました。今考えると、精神面がかなりやられていたと思います。
もっと早く見つけていれば、こんなに大変ではなかったでしょうか?
浜野先生
そうですね。ポリープや浸潤の少ない早期がんであればお腹を切らずに内視鏡で切除できるので、全然違うと思います。抗がん剤や放射線治療も必要ありません。
立花さん
ポリープとがんはどう違いますか?
浜野先生
基本的には、膨らんでいるものは全てポリープと呼ばれ、そのうちの腫瘍性のポリープが大きくなると、ほとんどががんになります。ですから、早期のうちにポリープを見つけて切除するのが大事です。
進行速度も、初期はゆっくりですが徐々に早くなり、腺腫から早期がんになるのは平均5〜10年と言われていますが、早期がんから進行がんになるのはもっと短く早いです。
立花さんは、内視鏡検査のカメラも入らずに、痛みも強くつらかったようですが、早期であればそれもなかったと思います。
立花さん
治療から3年経った時の内視鏡検査は、拍子抜けするくらい楽でした。ちょっと押されるような感覚だけで、痛くもなんともありませんでした。
その時にポリープが3つあったみたいで「取っておきますね」と言われて、パチッパチッと音がして、あっという間に取れました。
こんなに簡単な検査で、つらい手術も治療もしなくて済むのだったら、症状が出てきた5年前に怖がらずに検査しておけばよかった……どうして受診しなかったのかすごく後悔しました。これからはきちんと検査しようと思います。
浜野先生
大腸がんは再発する場合、約7割の方が2年以内に再発しますが、立花さんは3年経過したので、最も再発しやすい時期は過ぎましたね。5年を過ぎると術後の定期フォローは卒業するのが一般的ですが、今回のがんとは別のところにポリープやがんができる可能性はありますので、これからも検査を続けてください。立花さんは、術後のつらい時期をどうやって乗り越えたのですか?
立花さん
友人の存在が大きかったですね。
長い付き合いの西村知美ちゃんが行動範囲を広げてくれて、大好きな女子プロレスのお店に連れて行ってくれました。その時は生きる目標がわからなくなっていましたが、夢を追いかけていた頃の自分に戻ったようでした。ジャンボ堀さんから「病気を乗り越えた理佐にしかできないことを発信してみたら?」と言われて、少し光が見えてきましたね。
浜野先生
そういった経緯があって、闘病の経験を発信するようになったのですね。
立花さん
最初は「反響がなかったらどうしよう」と不安でした。でも、いざ公表するとびっくりするほどたくさんのコメントをいただき、私自身も元気をもらえました。公表をきっかけに「検診の大切さを啓蒙していく」という目標ができました。
浜野先生
ありがとうございます。これからもぜひ啓蒙してください。
我々にとっても、検査・検診をいかに受けてもらうかは課題です。
日本に大腸がんが増えてきた理由の一つに「食の欧米化」があり、昔ながらの和食が大腸がんの予防になると言われているのですが、実はアメリカでは、大腸がんで亡くなる方は日本より少ないのです。
立花さん
そうなのですか!?
浜野先生
アメリカでは検診の受診率が高いため、早期に発見・治療ができているからです。
食生活に気をつける以上に、定期的な検診が大事ということがわかっています。
日本で「大腸がん検診」というと通常は便潜血検査のみで、それだけでも有用ではありますが、やはり、より早期に発見できる内視鏡検査も受けていただきたいですね。
立花さん
私の友人たちも「こんなに元気な理佐ががんなんて」と、検診を受けに行くようになりました。その中の何人かは、実際に早期がんが見つかっています。
浜野先生
その数人だけでも、十分に立花さんの発信の意味はあります。我々としても本当にありがたいです。
お仕事や家事・育児で忙しい方もぜひ、自分の健康、自分の体に目を向けて、がん検診や健康診断を受けてください。「安心して内視鏡検査を受けられる」ということも、たくさんの方に知っていただきたいです。
立花さん
私は、母を大腸がんで亡くしているのに「自分は大丈夫だろう」と検査を先延ばしにしていた結果、痛い思いやつらい治療をすることになりました。検診を受けていればこんな思いをしなくて済んだのに、と思います。
症状が進行してからの内視鏡検査はとても大変でしたが、治療後に受けた検査はなんの痛みもなく、気がついたら終わっていました。もし病変があったとしても、早期であれば検査の時に切除できるので、手術や治療の必要もないようです。今、特に症状のない方もぜひ検査を受けてほしいです。最後まで健康な体で、人生を楽しみましょう。
編集部まとめ
対談は、終始リラックスした雰囲気の中で行われ、立花さんの発言からは、明るい口調ながら、がん治療のつらさ、壮絶さが伝わってきました。一方で「内視鏡検査は痛くない」「早期がんであれば、内視鏡で切除できる」といった情報も聞くことができ、やはり、早期に発見し、早期に治療することが何より重要だと感じました。
立花さん、浜野先生、ありがとうございました。