肩の痛み、違和感…放置すると負の連鎖も!? すぐに受診すべき症状とは?
肩の痛みや違和感は決して珍しい症状ではなく、多くの人が放置してしまっているのも事実です。しかし実は、肩の痛みを治療せずにいるとさらに症状が悪化したり、思わぬ疾患が隠れていたりすることもあるそうです。井出整形外科クリニックの井出先生に詳しくお聞きしました。
監修医師:
井出 学(井出整形外科クリニック)
慢性化する肩こりのリスクとは?
編集部
肩こりが慢性化している人も多いと聞きます。
井出先生
はい、特に日本人は外国人に比べて肩こりに悩まされやすいといわれています。その理由は、「日本人は体型が華奢で筋肉量が少ない」ということが挙げられます。また、「床に座る、お辞儀をするといった日本ならではの習慣が肩こりの原因につながっている」ということもいわれています。
編集部
いろいろな原因があるのですね。
井出先生
特に近年は、床に座ってデスクワークをする方や普段から前屈みの姿勢になる機会が多く、肩こりに悩む人がますます増えているように思います。
編集部
肩こりが慢性化すると、何かリスクがあるのですか?
井出先生
はい、一般に肩こりを放置すると「負の連鎖」を起こしやすいとされています。
編集部
負の連鎖とはなんですか?
井出先生
そもそも肩こりの原因は同じ姿勢を長時間続けることによる筋肉の緊張です。筋肉が緊張すると血行が悪くなって筋肉はますます硬くなります。すると疲労物質が筋肉の中に蓄積され、肩の張り感だけでなく、痛みを生じさせます。さらに今度は痛み自体がストレスとなって自律神経を刺激し、ますます血流を悪くしてしまうのです。
編集部
負の連鎖が続く限り、肩こりはなくならないのですね。
井出先生
なくならないだけでなく、症状は全身に広がることもあります。痛み、手足のしびれ、頭痛、体のだるさ、疲労感といった症状だけでなく、うつ、不眠、意欲の低下といった精神症状にまで進行することもあります。
編集部
うつや不眠なども招くのですね。
井出先生
実際のところ、肩こりが慢性化してうつなどの精神症状を招くこともあります。反対に、精神症状が肩こりを招くこともあるので、どちらが原因かということはわかりません。しかし、両者の間に相関関係があることは知られています。
すぐに受診すべき「肩こりの症状」とは?
編集部
肩こりに関する負の連鎖を断ち切るためにはどうしたら良いのでしょうか?
井出先生
- 突然、肩の周りに強い痛みが発生した
- 腕に麻痺を感じる。筋力が突然落ちた感じがする。思うように動かせない
- 頭痛、めまい、意識障害、嘔吐などがある
- 呼吸困難、胸痛、動悸などがある
編集部
どのような疾患の可能性があるのですか?
井出先生
例えば突然痛みが生じたり、腕に麻痺や筋力低下したりしたなどの場合には、頚椎椎間板ヘルニアのような整形外科的疾患の可能性があります。また、痛みや麻痺が腕や手、指などに広がる場合には神経痛の可能性もあります。これらの場合には早く治療介入した方が予後が良いとされているので、できるだけ早めに受診することをおすすめします。
編集部
そのほか、肩こりはどのような疾患の可能性がありますか?
井出先生
頭痛、めまい、意識障害、嘔吐などが見られる場合には脳卒中など、脳の疾患が疑われることがあります。また呼吸困難などの場合には心疾患や肺疾患の可能性があります。その場合には脳や循環器の専門医を受診しましょう。
編集部
内臓の疾患も考えられるのですね。
井出先生
特に左肩や左胸など左側が痛む場合には、狭心症や心筋梗塞の疑いがあります。早めに医師の診察を受けることが大切です。
肩こりの治療法の種類は?
編集部
肩こりは放置したら治らなくなるのですか?
井出先生
症状や疾患によります。例えば肩こりを引き起こす疾患に肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)というものがあります。これは主に加齢が原因となって発症し、肩関節の骨や軟骨、筋肉などの組織が老化して関節包の炎症が起こり、痛みなどの症状が現れるものです。痛みは1~2か月で自然となくなることもありますが、放置すると関節包が硬くなって関節の動きが悪くなります。2週間程度様子を見て肩の痛みが治らない場合には、早めに医師の診察を受けましょう。
編集部
肩こりで整形外科を受診した場合、どのような検査を行うのですか?
井出先生
症状にもよりますが、触診で僧帽筋の圧痛、筋緊張、肩関節可動域、頚椎疾患のチェックなどを行います。その後、レントゲン検査、CT検査、MRIなどを行い、ほかの器質的疾患がないか確認することもあります。
編集部
肩こりの原因となる疾患が見つからなかったらどのような治療をしますか?
井出先生
基本的には疾患に適した治療を行いますが、もし疾患が見つからなかった場合には、痛み止めの薬物療法、運動療法、ハイドロリリース、温熱療法、電気療法などを行います。
編集部
さまざまな治療法があるのですね。
井出先生
はい、そのほか良質な睡眠、バランスの良い食事、適正な体重コントロールなど生活習慣を見直すことも大切です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
井出先生
肩こりに悩んでいる患者さんで、「きっと四十肩や五十肩だろう」と思ってそのままにしていたら実は腱板と呼ばれる肩周りの筋肉群が損傷している「腱板損傷」や、肩腱板内にリン酸カルシウム結晶が沈着する「石灰沈着性腱板炎」を発症していた、ということもあります。この場合には、病態に応じて適切な処置を行うことで症状の改善が期待できます。もし肩こりに悩んでいる場合は安易に自己判断せず、専門医を受診して正しく診断してもらうことが、治癒の第一歩になります。ぜひ肩こりをあきらめず、困っている場合には整形外科を受診してほしいと思います。
編集部まとめ
四十肩や五十肩で悩んでいる人のうち、多くの人が「何をやっても治らない」「痛み止めで凌いでいる」という状態ではないでしょうか? 実はこれらの症状も正しく対処すれば軽減・改善することができますし、もしかしたらほかの疾患が肩こりの引き金になっているのかもしれません。2週間程度症状が続く場合は、お近くの整形外科を受診してみましょう。
医院情報
所在地 | 〒220−0042 神奈川県横浜市西区久保町43−11 |
アクセス | 相鉄本線 西横浜駅 徒歩7分 |
診療科目 | 整形外科、リハビリテーション科、内科 |