「糖尿病」を放置するリスクはご存じですか? 危険な合併症や治療法も医師が解説!
病期そのものの症状はもちろんのこと、合併症も非常に危険な「糖尿病」。多くの人が罹患しており、生活習慣と密接にかかわっています。糖尿病の原因や症状、放置することによるリスク、危険な合併症、治療法など、糖尿病に関する疑問を「あおやま睡眠・内分泌クリニック」の和合先生に投げかけました。
監修医師:
和合 健彦(あおやま睡眠・内分泌クリニック)
糖尿病とは? 原因や種類を医師が解説
編集部
糖尿病とは、どのような疾患なのでしょうか?
和合先生
糖尿病は血糖値が上昇する疾患で、医学的な定義としては「インスリン作用の不足により生じる慢性の高血糖を主徴とする代謝症候群」とされています。主に、膵臓のβ細胞からのインスリン分泌の低下、もしくは筋肉、肝臓、脂肪におけるインスリン感受性の低下(インスリン抵抗性)によって引き起こされます。
編集部
糖尿病には種類があると聞いたことがあります。
和合先生
糖尿病は原因によって、「1型糖尿病」と「2型糖尿病」に分けられます。1型糖尿病はβ細胞の病変でインスリン自体が欠乏してしまう病態で、自己免疫性が原因であることが多い傾向にあります。ただし、稀に非自己免疫性(特発性)のケースもあります。 若い年齢で突然発症することがほとんどですが、「緩徐進行1型糖尿病」という大人になってから発症する1型糖尿病もあります。いずれの場合も、現段階で予防法などはわかっていません。
編集部
では、2型糖尿病は?
和合先生
2型糖尿病は、体が効果的にインスリンを利用できなくなることで起こります。加齢、肥満、運動不足、家族歴、ストレス、飲酒・喫煙や睡眠不足などの生活習慣などが危険因子とされ、単一の原因による説明が困難な場合が多い病態です。さらに、慢性膵炎や膵がんなどの膵疾患、クッシング症候群、末端肥大症、褐色細胞腫など、ほかの疾患に伴う糖尿病(二次性糖尿病)もあります。
編集部
糖尿病患者は多いのですか?
和合先生
とても多いと思います。現時点で診断されている人だけでなく、「糖尿病疑い」も含めると、今や「日本人の6人に1人は糖尿病(もしくは糖尿病の疑い)」と言われるほどで、国民病と言っても過言ではありません。また、罹患者の約9割が2型糖尿病です。
糖尿病の症状とは? 合併症が恐ろしいって本当?
編集部
糖尿病になると、どのような症状が出るのですか?
和合先生
一般的な自覚症状としては、喉の渇きや頻尿(多飲・多尿)が起こったり、細胞が十分なエネルギーを得られずに体重減少や過度な疲労の原因となったりします。さらに、無自覚もしくは無治療のまま進行すると、様々な合併症が起こってきます。
編集部
合併症について教えてください。
和合先生
「糖尿病神経障害」「糖尿病網膜症」「糖尿病性腎症」が3大合併症と言われています。ほかにも、動脈硬化による心血管疾患や末梢血管疾患、脳血管障害となる人も多いことに加えて、末梢の血管が障害されることで足の潰瘍なども起こりやすくなります。
編集部
なぜ、合併症を引き起こしてしまうのでしょうか?
和合先生
血管が徐々にダメージを受けてしまうからです。末梢の血管の機能が落ちると、徐々に末梢の神経が障害され、手先や足先の痺れや感覚障害が引き起こされます。また、血管がダメージを受けることで、眼球の内部にある網膜の血管も障害され、糖尿病網膜症になったり、腎臓の微小血管がダメージを受けて糖尿病性腎症になったりするのです。さらに、細かい血管へのダメージが蓄積すると、やがて脳や心臓の太い血管へも進行していきます。
編集部
合併症を放置すると、どのようなリスクがありますか?
和合先生
例えば、感覚障害で足の怪我や火傷に気がつかず、重症化して切断が必要になったり、網膜が機能しなくなって失明したり、腎不全となって透析が必要となってしまうこともあります。それだけでなく、脳梗塞や心筋梗塞などの血管疾患で命を落とすケースも少なくありません。糖尿病は単に血糖値が高くなるだけの病気ではなく、非常に危険な合併症を引き起こすリスクがあるのです。
糖尿病と診断されたらどうしたらいい? 医師が徹底解説!
編集部
糖尿病と診断されたら、どうしたらいいですか?
和合先生
まずは血糖をコントロールすることが重要です。血糖値が適切にコントロールされていれば、合併症の発症や進行を遅らせることができます。また、食事療法や運動療法について専門家から指導を受け、日々実践していきましょう。糖尿病は基本的に、一度診断されると一生つき合っていくことになります。短距離走ではなくマラソンと同じで、コツコツ続けることがとても大事なのです。
編集部
一度診断されると、治ることはないのですか?
和合先生
基本的にはそうですね。糖尿病と診断された時点で、膵臓の機能がかなり落ちていると言われています。ごく初期の段階で気がつき、しっかりとした管理を続けることで薬などを使わずに一生を過ごせるという人もいらっしゃいますが、実際は稀なケースだと思います。薬の服用についても、病気を治すものではなく、あくまで症状などをコントロールするのが目的だと考えていただきたいです。
編集部
ほかには、どんなことに注意したらいいでしょうか?
和合先生
ご自身の病気についてきちんと知り、管理や検査、観察を怠らないことです。いずれの合併症も、症状がない時から定期的に通院して眼科検査や腎機能検査を受けてください。また、糖尿病と診断されていなくても、健康診断や人間ドックで定期的にチェックを受けていただきたいです。とくに、「ヘモグロビンa1c」は重要な検査項目です。血管障害や神経障害になると体の末梢の感覚が鈍ってしまうので、とくに足部の観察などは日常生活でも意識的におこなってほしいですね。傷や火傷はないか、血色や温かみはどうかなどを定期的にチェックしましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
和合先生
糖尿病は血糖値が高くなるだけの疾患ではなく、合併症が進行すると失明や透析、切断、さらには脳梗塞や心筋梗塞などの命に関わる状況にもなり得ます。がんよりも発症する可能性が高いので、「薬があるから」と甘く見ずに、糖尿病とつき合っていただきたいです。病気についての正しい知識があれば、対策することはできます。糖尿病や糖尿病疑いの人、健康診断でヘモグロビンa1cの値を指摘された人などは、まずはお近くの糖尿病内科や生活習慣病内科に相談してみましょう。
編集部まとめ
糖尿病の原因や症状、合併症の危険性などについて解説していただきました。糖尿病は血糖値が高くなるだけの病気ではなく、むしろ合併症が恐ろしい病気であることがわかりました。また、一度診断されると一生つき合っていく、いわば短距離走ではなくマラソンのようなものです。専門家から適切な指導を受け、生活習慣から見直していき、糖尿病の予防や進行防止に努めましょう。
医院情報
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