「睡眠時無呼吸症候群」の重症度を医師が解説 重症度分類AHIと段階別の治療法とは?
「朝起きられない」「日中眠くなる」といった症状は、「睡眠時無呼吸症候群」が関係している場合があるそうです。また、睡眠時無呼吸症候群は、症状によって重症度も異なります。今回は、睡眠時無呼吸症候群の症状や重症度ごとの治療法について、「あおやま睡眠・内分泌クリニック」の和合先生に解説していただきました。
監修医師:
和合 健彦(あおやま睡眠・内分泌クリニック)
目次 -INDEX-
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは? 1時間で何回無呼吸があると医師の診断を受けるべき?
編集部
まず、睡眠時無呼吸症候群について教えてください。
和合先生
睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に一定時間呼吸が止まってしまう、もしくは低呼吸になる疾患です。英名のSleep Apnea Syndromeから頭文字をとって、「SAS(サス)」とも言われています。
編集部
一定時間とは、具体的にどのくらいですか? また、低呼吸とは?
和合先生
無呼吸は「呼吸が10秒以上止まっている」ことで、低呼吸は「30%以上の気流低下が10秒以上持続し動脈血酸素飽和度がベースラインから3%以上低下した状態、あるいは覚醒反応を伴う状態」と定義されています。無呼吸および低呼吸が1時間あたり5回以上あると睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
編集部
睡眠時無呼吸症候群の人は多いのですか?
和合先生
近年、睡眠障害の要因として、特に注目されています。しかし、寝ている間の無呼吸なので、自分自身ではなかなか気づくことができず、診断されていないままの潜在患者が多数いると推定されています。一般的には成人男性の約3~7%、女性の約2~5%でみられ、男性では40~50歳代が半数以上を占める一方、女性では閉経後に増加する傾向があります。
編集部
睡眠時無呼吸症候群には、どのような症状がみられますか?
和合先生
寝ている時の症状としては、夜間の無呼吸やいびき、夜間頻尿、中途覚醒などがあります。ほかには、早朝覚醒、寝起きの悪さや起床時の頭痛、日中の強い眠気なども該当します。とくに、日中の眠気は作業効率や生活の質(QOL)の低下だけでなく、居眠り運転事故や労働災害などの危険にもつながります。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の重症度分類(AHI)とは? AHIによって治療法は変わる? 睡眠中にマウスピースを使うって本当?
編集部
睡眠時無呼吸症候群は重症度によって分けられるのですか?
和合先生
そうですね。睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合には、ご自宅や医療機関にて、確定診断のための精密検査をおこないます。その結果によって、睡眠時無呼吸症候群かどうかだけでなく、睡眠時無呼吸症候群の重症度も判定できます。
編集部
もう少し詳しく教えてください。
和合先生
AHI | 分類 |
5~15 | 軽症 |
15~30 | 中等症 |
30以上 | 重症 |
編集部
AHIの数値によって治療法も異なるのですか?
和合先生
はい、異なります。軽症~20未満までの中等症の場合は、禁煙や節酒などの生活習慣改善や、減量による体重の適正化、マウスピースの使用などにより改善する場合があります。
編集部
なぜ、減量が睡眠時無呼吸症候群の改善に役立つのですか?
和合先生
睡眠時無呼吸症候群の主な原因として、空気の通り道である上気道が狭くなることがあります。首の周りの脂肪が多いと上気道は狭くなりやすいので、肥満と睡眠時無呼吸症候群は深く関係しているのです。肥満が改善されると、睡眠時無呼吸症候群も改善される可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の重症度分類(AHI)が20以上の場合の治療法とは? CPAPって何? 手術は必要?
編集部
では、AHIが20以上の睡眠時無呼吸症候群の場合、どのような治療をするのですか?
和合先生
もちろん、生活習慣の改善などは必要ですが、AHIが20以上の睡眠時無呼吸症候群の場合は日中の眠気症状が強いこともあり、なかなか生活習慣の改善や減量が上手くいかないといったケースが多いのです。その場合、AHIが20以上で保険適用となる、CPAP(Continuous Positive Airway Pressure) と呼ばれる装置を使った「CPAP療法」が選択されます。
編集部
CPAP療法について教えてください。
和合先生
CPAP療法は、睡眠中に鼻や口にマスクをつけて気道に空気を送り、気道の閉塞を防ぐ治療法です。睡眠時無呼吸症候群の診断基準を満たしている場合は保険が適用され、CPAP装置も医療機関からレンタルすることができます。ちなみに、先ほどの睡眠ポリグラフ検査も、症状がある場合は保険適用内で検査することができます。
編集部
睡眠時無呼吸症候群で手術が必要になることもありますか?
和合先生
睡眠時無呼吸症候群の原因として、例えばアデノイドや扁桃肥大などの場合は、摘出手術が有効な場合があります。ほかにも、軟口蓋(のどちんこ)の一部を切除する「口蓋垂軟口蓋咽頭形成術」や、下顎を前に進めて気道を開放しやすくする「下顎手術」などもありますが、今の日本ではあまり一般的ではありません。体への侵襲がある手術ではなく、体に傷がつかないCPAPが第一選択肢となっています。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
和合先生
高血圧や糖尿病など、国を挙げて予防や早期発見に取り組んでいる疾患の原因の多くは、源流に睡眠障害があると考えられています。睡眠は体を修復する時間で、良質な睡眠をとることが全ての土台となっています。睡眠障害の検査や治療には保険が適用されるので、少しでも心当たりがあれば、お近くのクリニックなど気軽に相談してみましょう。睡眠障害を専門に診ているクリニックであれば、そのまま検査や治療もできるのでスムーズだと思います。
編集部まとめ
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状や診断基準、治療法について解説していただきました。最近は睡眠障害を診てくれる医療機関も増えているので、「寝つきが悪い」「夜中に目が覚める」「熟睡感がない」などの症状に覚えがあれば、相談してみてはいかがでしょうか。質の悪い睡眠が原因で、体調不良を引き起こしているかもしれません。
医院情報
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診療科目 | 内科、甲状腺内科、糖尿病内科 |