【闘病】40代で乳がん発覚。乳房の茶色いしみに気付くも「しこりではない」と放置した結果…
乳がんを疑うきっかけとして多いのは、乳房や脇の下にしこりがある、乳房にひきつれやくぼみを感じるなどですが、今回お話を聞いたIZUMIさんにはこれらの症状がなく、あったのは乳房の小さな茶色のしみだけでした。そこで今回は、IZUMIさんがそのしみからどのように乳がんの診断に至ったのか、闘病生活を経て気づいたことなどについてお話を聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年10月取材。
体験者プロフィール:
IZUMIさん(仮称)
1972年生まれ、埼玉県。母と愛犬と暮らしている。2013年8月に乳がんが発覚し、手術や化学療法を受ける。2016年2月には乳房再建手術、2023年7月には右上肢リンパ浮腫の治療のためリンパ管静脈吻合術を受ける。また、2020年2月、子宮頸部上皮内がん発覚の為、子宮頸部円錐切除術を行なった。診断時の職業は司会業。
記事監修医師:
寺田 満雄(名古屋市立大学病院乳腺外科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
小さなしみがある日突然痛みや腫れを伴うように
編集部
病気が判明した経緯について教えてください。
IZUMIさん
2013年6月ごろに右乳房に小さな茶色のしみがあることに気がつきました。5mm程度のとても小さなしみでしたし、肌が弱いほうなので「何かにかぶれてしまったのかな」と思いました。茶色のしみは少しずつ大きくなっていきましたが、触ってもしこりのようなものはなく、痛みも痒みもないので気にしないように過ごしていたつもりでした。今考えると、逆に気にし過ぎて知らず知らずのうちに触ってしまっていたのかもしれません。
編集部
その後、どのような変化が起こりましたか?
IZUMIさん
最初に気付いてから二カ月ほど経った8月の半ばごろ、突然乳房に痛みが起きて熱を持ち始め、1.5倍ほど赤く腫れてしまいました。しみは1~1.5cmになっていたと思います。乳がんの知識として私が知っていたのは、「痛みはない」「触るとしこりがある」「乳頭の位置に左右差が見られる」でしたので、乳がんだとは微塵も思いませんでした。看護師の姉に連絡すると「すぐに病院に行きなさい」と言われ、自宅近くでマンモグラフィ検査を受けられる病院を検索し、受診しました。
編集部
病院ではそのような検査をされたのでしょうか?
IZUMIさん
その日に受診可能な検査はすべて受けさせてもらいました。具体的には、血液検査・マンモグラフィ検査・細胞診です。この時の検査結果から「乳がんである可能性がとても高い」と言われました。それから追加でマンモトーム生検を受け、8月終わりに「乳がん」と確定診断を受けました。
編集部
自覚症状などはあったのでしょうか?
IZUMIさん
私の場合は最初の茶色いしみ、それから熱感、赤く腫れあがる、痛みでした。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
IZUMIさん
「右乳房全摘出手術をします」と言われました。手術を受けた後、腫瘍の状態や病理検査の結果について「腫瘍の大きさが4cm、腋窩リンパ節への転移あり、ステージはⅡB」と説明を受けました。「HER2陽性、ホルモン受容体陽性だったので、抗がん剤とハーセプチン、ホルモン剤で再発予防をしていきましょう」とも言われました。化学療法がスタートして、副作用があまりにも酷く身体中の痛みと痺れが続いてしまったので、ハーセプチンは2回ほど受けて中止してしまいました。
闘病中、心の支えになったのは仔犬のころから育てている愛犬だった
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
IZUMIさん
判明した当初は、病気のことを考える時間はなかったです。痛みなどの症状が出たのが8月18日、確定診断が下りたのは8月30日、手術は9月5日で、あっという間の日々でした。また私は個人事業主なので、仕事関係で入院前にやっておかなければならないことを処理するだけでいっぱいだったと記憶しています。
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
IZUMIさん
腋窩リンパ節郭清をしているので、リンパ浮腫を発症しないように気をつけてはいたのですが、発症してしまいできないことが増えてしまいました。例えば、磨く・擦るといった動きで浮腫みが悪化するので、掃除全般が苦手になり、ドライヤーをするにもすぐに腕がダルくなってしまうので、ショートヘアにしました。あとは、締めつけ感のある服を着用すると浮腫みが悪化するので、見た目の可愛さやお洒落ではなく軽い鞄やゆったりした服を選ぶようになりました。病気の前後でライフスタイルがガラリと変わり、天地がひっくり返るってこういうことなんだと実感しました。
編集部
闘病に向き合う上で心の支えになっているものを教えてください。
IZUMIさん
当時飼っていた犬が6歳でしたので、「愛犬を残しては死ねない」と思って自分を奮い立たせていました。子犬のころとても酷い状態にいて、「私がこの仔を迎えなければ死んでしまうかも」と思い私の元で飼うことにした愛犬です。「飼い主の責務として必ず私が看取るんだ」と決意したので、病気に負けるわけにはいかないと思いました。
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
IZUMIさん
41歳でステージⅡBの乳がんが発覚しているので、恐らく30代の前半~半ばにはすでに罹患していたのだと思います。何に気をつければよかったのか、何歳の時に、どのタイミングで検査を受ければよかったのか正直分からず、昔の自分にかけられる言葉が見つかりません。
身体の声に耳を傾け、異変を感じたら早めに受診してほしい
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
IZUMIさん
2023年10月の定期健診で10年になります。再発や転移の不安がなくなるわけではありませんが、「10年頑張れたんだ」と思うと気持ちが少し楽になりました。今年リンパ浮腫の手術を受けましたが、完治することはないのでこの先もずっと弾性グローブと弾性スリーブを着用し続けなければなりません。利き腕なので不自由なことも多いですが、自分の身体を労わりながら無理をしない、身体に優しい生活を送っています。
編集部
あなたの病気を意識していない人に一言お願いします。
IZUMIさん
患った病気の症状や治療法は、100人いれば100通りだと思います。私の場合は治療中、特に抗がん剤治療中が人生で最も苦しかったです。あの経験よりも辛いことはこの先絶対に起こらないだろう、と確信するほど辛かったです。皆さんがこの辛さを経験しないことを願います。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
IZUMIさん
今回の闘病期間中、たくさんの医療従事者の方にお世話になりました。医療機関で働く方々は、日々忙しいことを察しておりますが、患者が質問や聞きたいことをもっと気軽に聞くことができる環境を作ってもらえると嬉しいです。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
IZUMIさん
病気を境に生き方がガラリと変わってしまうこと、変えなければならないことがあるかもしれません。できていたことができなくなるのは、とても辛いことです。自力で予防できる病なら予防の努力をしてほしいと思います。自力で予防できない病なら、身体からの声に耳を傾け、少しでも異変を感じたら受診してください。自分の体の不調は自分にしかわかりませんし、自分を守れるのは自分だけです。
編集部まとめ
病気から手術まであっという間で、しっかり考えることができないまま治療を始めることになったIZUMIさん。「健康な時に、万が一の事を考えるのはとても難しいことかもしれませんが、少しでも後悔を小さなものにするために、“もしものとき”の選択肢を数パターン考えておいたほうが良いと思います」とメッセージをくださいました。また、乳がん検診の効果が示されているのは40歳以上の方で、40歳未満の年齢の方できちんと効果が証明されていて、おすすめできる検診方法は残念ながらありません。ですが、もちろん検診開始年齢の前でも乳がんを罹患する方はいます。そこで、大切になるのが、ブレスト・アウェアネスといって、「日頃から自分の乳房の状態を知っておく(セルフチェック)」「乳房の変化に気をつける」「変化に気づいたら医療機関を受診する」「40歳になったら2年に1回の乳がん検診を受ける」という4つの生活習慣・アクションを20-30歳代から身につけることが大切です。日々生きているとつい目の前のことで精一杯になってしまいますが、この記事を読んだ読者の方にはぜひ一度考える時間を設けていただけたらと思います。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。