【闘病】「しこりを見つけて血の気が引いた」45歳で“トリプルネガティブ乳がん(TNBC)”の告知…
「トリプルネガティブ乳がん(TNBC)」と診断されたときは周りの音が聞こえなくなるほどのショックを受けたものの、治療に取り組んで今では職場にも復帰している「りき」さん。10代の頃に難病を経験したことから、健康には日頃から気を遣っている方でした。そこで、りきさんが乳がんを発見した経緯や、治療・闘病を通じて得た気付きについて教えてもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年11月取材。
体験者プロフィール:
りきさん(仮称)
40代女性。娘2人の子育てを経て、現在は両親と3人暮らし。2021年6月に会社の乳がん検診で精密検査となり、乳腺専門のクリニックにて「トリプルネガティブ乳がん(TNBC)」と診断される。抗がん剤治療、乳房部分切除術、放射線治療を行い、現在は半年に1度の通院と検査で経過観察中。
記事監修医師:
寺田 満雄(名古屋市立大学病院乳腺外科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
乳がん検診の夜、自分でみつけてしまったしこりの存在
編集部
乳がんが判明したきっかけを教えてください。
りきさん
最初のきっかけは、2021年6月に受けた会社の乳がん検診の夜のことです。何気なく「そういえば今日乳がん検診だったな」と思い胸周りを触ってみたら、明らかにしこりがあり血の気が引きました。案の定、検診結果は「要精密検査」だったので乳腺専門のクリニックへ行き、マンモグラフィ・エコー検査・針生検を行ったところ「トリプルネガティブ乳がん(TNBC)」と診断されました。
編集部
治療もそちらの病院で行ったのですか?
りきさん
いえ、紹介してもらったがんセンターで再度マンモグラフィや骨シンチグラフィ検査などを行い、抗がん剤治療を同年8月下旬から開始しました。
編集部
告知された時の心境はどうでしたか?
りきさん
ショックで、例えるなら周りの音が完全に遮断されたような感覚になりましたね。「自分は死ぬのかな」とか「もう私は健康な人じゃないのか……」とか、いろんなことが頭の中をめぐっていました。ただ、偶然にも職場の同僚が2年ほど前に同じく乳がんを経験し、元気になって復帰していたので、実体験を聞けたことが本当に救いになりました。
編集部
告知後、医師からはどのような治療の説明を受けましたか?
りきさん
当初は「抗がん剤を半年間、その後右側の乳房全摘出手術」の予定でした。ですが、私の場合抗がん剤の効果がよく、半年後の検査では「腫瘍が全く見当たらない」とのことでした。そのおかげで乳房は全摘出ではなく部分切除術となり、術後は放射線治療を25回受けました。
編集部
治療前はお仕事もされていましたが、治療開始後の生活リズムは変わりましたか?
りきさん
私はそれまで「抗がん剤=入院」と思っていたのですが、通院でもできると説明されました。また、抗がん剤治療を行っている間、ずっと具合が悪いわけではないということも初めて知りました。そこで、仕事は時短勤務で体調の良い時だけ来ればいいと自由出勤にさせてもらいました。おかげで本当に治療に専念する日々でした。抗がん剤の影響で髪が抜けたので、ウィッグを着用して出勤していました。
健康を大切にしていても、病気になる時はある
編集部
抗がん剤治療で髪が抜ける、食事が摂れないといった話はよく耳にします。りきさんの場合もつらい症状があったと思いますが、支えになったものは何でしょうか?
りきさん
大きかったのは、とにかく家族の存在です。両親、妹、弟が色々と助けてくれました。抗がん剤治療を途中で止めてしまう人の気持ちも痛いほどわかりましたが、子どもたちのことを思うと「まだ死ねない」と思い、必死に辛い治療を耐えました。
編集部
現在は治療の副作用や影響などはないでしょうか?
りきさん
放射線治療を終えてからは特に必要な治療もなく、制限もありません。気になる副作用はないものの、右腕や胸の周りに痛みを感じるときがたまにありますが、痛みは許容できる程度のものです。
編集部
治療後の生活でりきさんが重視していること、大事にしていることを教えてください。
りきさん
トリプルネガティブ乳がんの再発を100%防ぐ方法はないので、免疫力を高めることと、体温を上げることを日頃から意識しています。例えば、「腹巻やオリーブ茶で体を温める」「湯船に浸かる」「ジョギングやウォーキングなどの軽い運動」「ストレスを溜めない」など、あまりお金や時間をかけずにできることに日々取り組んでいます。
編集部
普段から色々なことに取り組んでいるのですね。
りきさん
実は、高校生の頃にクローン病、39歳で子宮全摘、そして今回45歳でトリプルネガティブ乳がんになったのです。病気のために諦めたことや大変なこともいろいろ経験してきたので、健康の大切さは若い頃からわかっていました。それでも今回のように病気になってしまうことはあります。ですが、早期発見できればその後の人生を変えられると実感しました。だからこそ、後悔しないようにできることをしたいと思っていますし、この記事の読者の方にも後悔しない人生を送ってほしいと思います。
医学は日々進歩している。患者自身も知識を身に付けることが大切と実感
編集部
りきさんの乳がん経験を通して、医療従事者に伝えたい言葉はありますか?
りきさん
若い頃の病気の経験もあり、昔から本当に感謝しております。ただ、医師や看護師さんの言葉や態度次第で患者である私たちは良い気持ちにも悪い気持ちにもなります。日々の業務で大変だと思いますが、ぜひ患者さん一人ひとりとしっかり会話してほしいです。私は先生とたくさんコミュニケーションを取ることで治療を乗り越えられました。
編集部
最後に記事の読者の方に伝えたいメッセージをお願いします。
りきさん
私自身は乳がんになるまでほとんど知識もありませんでした。しかし、告知されてからたくさんの方々の治療体験やブログなどを読み、自分の知識になるだけでなく精神的な支えにしてきました。治療へ向き合うためにも、まずは病気を知るということがなにより大切だと実感しています。この記事を読んだ方に私の経験を知っていただき、誰かにとってプラスになったら幸いです。
編集部まとめ
トリプルネガティブ乳がんは、かつて予後不良で治療も難しいとされていました。しかし、多くの症例と医学の進歩によって治療が可能ながんになってきました。りきさんのように自分で情報収集を行うと、トリプルネガティブ乳がんについてネガティブな情報も多く見つけることがあります。しかし、正しい知識を身に付ければ、いつか自分の身を助けます。まずは患者さんのための乳がん診療ガイドラインなど信用がおける情報源から情報を得るようにしましょう。そして基本となる生活習慣の改善を行い、なにか体の異変を感じたら病院へ行くなどの早期発見を心掛けて、日々を過ごしてください。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。