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50代から知っておきたい! 「認知症とフレイルの関係」を作業療法士が解説

 公開日:2023/12/21
50代から知っておきたい! 「認知症とフレイルの関係」を作業療法士が解説

多くの人は認知症になりたくないと思うでしょう。人の脳には「認知予備能」があり、その機能を中高年の時期から強化しておくことで、認知症の予防につながる可能性があるようです。さらに「認知機能は身体の老化とも関係する」と専門家は言います。心身の虚弱状態である「フレイル」と、どのような関係があるのでしょうか、予防の方法も含めて鹿児島大学特任研究員で作業療法士の赤井田将真さんに解説していただきました。

赤井田 将真さん

著者
赤井田 将真(鹿児島大学医学部保健学科理学療法学専攻 特任研究員)

プロフィールをもっと見る
2011年国際医療福祉大学作業療法学科卒業、2022年鹿児島大学大学院保健学研究科博士前期課程修了。リハビリ特化型デイサービス、福岡県春日市社会福祉協議会および太宰府市での介護予防教室の実践、医療法人社団誠仁会夫婦石病院、医療法人天百合会ふるたクリニックを経て、2021年より現職。中高齢者の日常生活に則した介護予防施策の発展に関わる調査・研究に従事する。
牧迫 飛雄馬さん

共著者
牧迫 飛雄馬(理学療法士)

プロフィールをもっと見る
2001年国際医療福祉大学理学療法学科卒業、2009年早稲田大学スポーツ科学学術院博士後期課程修了。国際医療福祉大学病院、リハビリ推進センター株式会社、札幌医科大学特任助教、日本学術振興会特別研究員(PD)、ブリティッシュコロンビア大学(Research Fellow)、国立長寿医療研究センター予防老年学研究部健康増進室長を経て、2017年より現職。日本老年療法学会副理事長、日本転倒予防学会理事など。

認知症とフレイルの関係について知る

認知症とフレイルの関係について知る

編集部編集部

認知症と身体的フレイルの関係について教えてください。

赤井田 将真さん赤井田さん

認知症と身体的フレイルは双方向の関連性があるといわれています。例えば、身体的フレイルを有することで、活動性の低下を招くリスクがあります。活動性の低下が生じることで脳の働きが鈍くなり、認知機能の低下を引き起こすことが考えられます。一方、認知機能の低下が起こることで、外出が億劫になることや、外界からの刺激が少ない環境を好むようになるといわれています。このような状況が継続することで身体的フレイルの発生リスクが高くなることが考えられます。

編集部編集部

認知機能低下は身体的フレイルの発症リスクにどのような影響を及ぼすのですか?

赤井田 将真さん赤井田さん

認知機能の低下は日常生活における活動性に影響を与えるとされています。例えば、認知機能が低下している人は低下していない人に比べて、1日当たりの歩数が少ないことが報告されています。1日当たりの歩数が多いということは、日常的な活動性を維持することができており、身体的フレイルの発症リスクが低いことが考えられます。また、認知機能が低下することで、人とのコミュニケーションや新しい体験の機会への参加が億劫になるといわれています。このような状態が続くと身体的にも活動性が低くなり身体的フレイルの発症リスクが高くなると考えられます。

編集部編集部

認知症を予防することでフレイル予防にはどのような効果がありますか?

赤井田 将真さん赤井田さん

認知症とフレイルの発症要因には重なるところが多いため、認知症を予防することは、フレイル予防にも効果的であると考えられます。例えば、フレイルと認知症の発症要因として、ホルモンの調節異常や栄養状態悪化、持続的な炎症、血管の硬さ、抑うつなどが共通した要因として挙げられています。つまり、認知症およびフレイルに共通する発症要因への対策をおこなうことで、認知症予防、フレイル予防に対して効果が期待できます。

50代からの認知症予防

50代からの認知症予防

編集部編集部

なぜ50代からの認知症予防が重要なのでしょうか?

赤井田 将真さん赤井田さん

人の脳には「認知予備能」といわれる機能が備わっています。認知予備能とは、認知機能の低下に対して、どれだけ脳の耐性があるかを示す概念です。認知予備能が強化されることで、脳の病的変化や損傷に対して保護的に働くことが報告されています。複雑な技能が必要とされる仕事への従事や手芸など、日常的に認知的な活動が多い環境にある人は認知予備能が強化されているといわれます。さらに、普段から知的活動(新聞を読む、計算をするなど)に積極的に取り組むことで、認知予備能は強化されると考えられています。つまり、認知機能の低下のリスクが高まる60代以前から認知予備能を強化することは、認知症予防に効果的であると考えられます。

編集部編集部

認知機能が低下するリスクとしてどのようなものがありますか?

赤井田 将真さん赤井田さん

認知機能の低下は様々な要因がリスクとなります。具体的には、喫煙や過度なアルコール摂取、肥満、運動不足などが主なリスク要因として挙げられます。心当たりがひとつでもある方は認知機能が低下するリスクが高いといわれています。さらに外出する機会が週に1回未満であることや、何をするにしても億劫であるなど、心の健康も認知機能低下と関連することが明らかになっています。生活習慣の見直しと、好きなことをして過ごすなど、自身の心のケアもおこなうことで認知機能の低下するリスクを軽減することが期待されます。

編集部編集部

認知症を予防する方法にはどのようなものがありますか?

赤井田 将真さん赤井田さん

認知症の予防には様々な方法が提唱されていますが、中核を担う取り組みとしては継続した適度な運動を生活の中に取り入れること、食事の管理が重要だといわれています。例えば、息がはずむ程度の早歩きでのウォーキングを1日20分程度で継続しておこなうことが重要です。さらに、青魚(サバ、イワシなど)を積極的に食べることで、認知機能に保護的に働く栄養素を摂取することが出来るといわれており、認知症の予防方法として推奨されています。

認知症予防の方法を学ぶ

認知症予防の方法を学ぶ

編集部編集部

運動は認知症予防にどのような効果がありますか?

赤井田 将真さん赤井田さん

運動が認知症予防に効果を及ぼす仕組みとして、身体の内部や行動、心の状態がお互いに影響し合っているものと考えられます。とりわけ、運動が脳機能に影響を及ぼすメカニズムとして、運動することで脳の機能を高めるタンパク質が脳内で活性化するといわれています。このタンパク質が活性化することで、脳の記憶をつかさどる部分の容量が増えることが期待されています。さらに、脳の血流の増加や脳の炎症の軽減など、認知機能に保護的に働く効果が期待できます。

編集部編集部

知的活動は認知症予防にどのような効果がありますか?

赤井田 将真さん赤井田さん

知的活動は脳の機能を活性化させることが出来るため、認知症予防に効果があると考えられます。例えば、高齢者にとって身近な知的活動のひとつとして「新聞を読むこと」があります。認知症ではない高齢者を5年間追跡した研究によると、「新聞を読んでいない人」は「新聞を読んでいる人」に比べ、約1.5倍認知症になりやすいことが報告されています。また、食事の用意や行政の書類の作成など、日常的な知的活動は認知症の発生に保護的に働く可能性が報告されています。ひとつの知的活動を続けるより、多様な活動を日常的に自身でおこなっていくことが認知症予防として期待される活動になります。

編集部編集部

コミュニケーションは認知症予防にどのような効果がありますか?

赤井田 将真さん赤井田さん

コミュニケーションは、心の健康や脳の活性化に繋がり認知症予防に効果的であると考えられます。コミュニケーションは、複数の脳の機能を使います。例えば、「日付を約束して準備をする」、「コミュニケーションの中で雰囲気を読み適切な会話をする」など、ひとえにコミュニケーションといっても様々な要素が加わる活動となります。このようにコミュニケーションを日々の生活の中で積極的に取ることは脳の機能が活性化され認知症予防に効果が期待できます。

編集部まとめ

身体的な老化を予防することと同様に、運動の継続と食事は認知症予防にも重要とのことでした。中高年世代から継続して、日常生活を見直し、予防に取り組むことが大切と感じました。また、コミュニケーションや生活に知的活動を取り入れることでも予防につながるようです。ぜひ、自分に合う知的活動や予防法を見つけてみてはいかがでしょうか。

この記事の監修理学療法士