眼腫瘍・目の周りの「がん」を眼科医が解説 悪性が疑われるできものの症状や治療法とは?
目の周りにできものができることがあります、なんとなく「疲れてるのかな」なんて考えていましたが、医学的にはどうなのでしょうか? 目の周りのできものが悪性の場合の症状や治療法について、眼科医の中村裕先生(医療法人社団裕合会中村眼科院長)にMedical DOC編集部が聞きました。
監修医師:
中村 裕(中村眼科)
目次 -INDEX-
目の周りにできものができたときに考えられる原因が知りたい 良性・悪性腫瘍のケースとは?
編集部
目の周りのできものについて教えてください。
中村先生
できものは、医学的には「腫瘤」と呼ばれます。目や、目の周りのできものは、できる場所によって、眼瞼腫瘍、角結膜腫瘍、眼窩腫瘍、眼内腫瘍などに分けられます。
編集部
どんな症状が出るのですか?
中村先生
眼腫瘍の症状は、その種類や原因によって異なりますが、基本的には症状のない場合がほとんどです。出るとすれば、まぶたや結膜の腫れや赤み、視力の変化、涙の過剰分泌、目の痛みや不快感などが比較的多くみられる症状です。
編集部
「腫瘍」と聞くと、がんを想像してしまいます。
中村先生
腫瘍とは、細胞が腫瘍性に異常に増殖した塊を指します。一般的に、もとになる細胞が悪性だとがんと診断されます。つまり「眼腫瘍」は眼の細胞が腫瘍性に増殖した場合を指す一般的な用語ですが、これが良性のものか悪性のものかによって具体的な診断が変わり、悪性の細胞が増殖した場合にがんと診断されるのです。
目のまわりのできもの・眼腫瘍が悪性でがんの場合もある? 目や周囲のがんにはどんな症状が見られる?
編集部
では、目のまわりのできものが「がん」である場合もあるのですか?
中村先生
がんの場合もあります。まぶたが黒く盛り上がったようなできものは、ほくろの場合もありますが「基底細胞がん」というがんである場合も稀にあります。「基底細胞がん」の場合、転移することは殆どありませんが、浸潤性に大きくなるので手術による切除が必要です。
編集部
がんではない場合どういうことが考えられますか?
中村先生
例えば、いわゆる「ものもらい」の一種である「麦粒腫」は、まぶたにある脂腺に油成分が貯留したところに細菌などが入り、感染をおこして腫れたものです。まぶたが腫れて痛みや痒みが出ますが、これは感染症であって、がんではありません。
編集部
「がん」かそうでないか、見た目ではわからないのですね?
中村先生
そうですね。熟練した眼科医でも、判断に迷うくらい似ていることもあります。ただし、傾向としては、イボやほくろは大きさがあまり変化しないのに対し、悪性腫瘍は数週間〜数ヶ月の間に急激に大きくなるという特徴があります。また、良性の場合は表面が平滑ですが、悪性の場合は表面がごつごつしていて、細い血管が不規則に入っています。いずれにせよ、見た目はただのほくろやイボでも、類似した外見でがんである可能性もありますので、目の周りにできものができた場合は、眼科専門医の受診をお薦めします。
目にできものができたときの治療の流れを教えて 良性・悪性の眼腫瘍ではどんな治療・手術をするの?
編集部
目のできものには、どんな治療法があるのですか?
中村先生
できものの種類によって異なります。先ほどの「麦粒腫」の場合は、抗菌薬などの薬物療法が選択されます。ほかにも、「霰粒腫(さんりゅうしゅ)」は、内部に脂が溜まっているため、部分麻酔で切開して脂を取り除く手術を行うことがあります。
編集部
手術が必要な場合もあるのですね?
中村先生
そうですね。がんではなくても、切開して内容物を出したり、できもの自体を切除したりする場合は手術となります。しかし、見た目を綺麗にするのが主な目的なので、どうしても手術しなければいけないというわけではありません。
編集部
悪性の場合はどうですか?
中村先生
悪性の場合は、早急に手術で切除します。その後、例えば転移がある場合は化学療法や放射線療法を併用したり、皮膚を大きく切除した場合はまぶたの再建手術を行ったりします。また、眼球を摘出した場合には「義眼床」を作成し、義眼を挿入するという処置を行うこともあります。
編集部
最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。
中村先生
目のできもので、最も多くみられるのが「ものもらい」です。感染症なので、基本的には心配はいらないのですが、「ものもらい」と診断されたとしても、急に大きくなったり、再発を繰り返したりしている場合などは、悪性腫瘍の可能性もあるので注意が必要です。がんだった場合、発見が遅れると転移してしまいますので、一度「ものもらい」と診断されていても、繰り返す場合などは腫瘍を専門としている眼科医院を受診することをお勧めします。目の腫瘍を専門としている医師・クリニックを探すのは大変かもしれませんが、「ものもらい」と診断され、切開したためにがん細胞が血管内に流出して全身に巡ってしまったケースも実際にあるのです。もちろん稀なケースではありますが、医師の診断で「絶対」ということはありませんので、医師・クリニック選びは慎重に行なっていただければと思います。
編集部まとめ
稀ではありますが「ものもらい」と診断されていても、がんであるケースがあるとのことでした。急激に大きくなっていないかや表面の状態など、がんを疑う目安はありますが、組織を病理診断しなければ確定診断はできないとのこと。過度な不安もよくないですが、「ちょっとしたできものでも、がんの可能性もある」と知っておくことは大切です。
医院情報
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診療科目 | 眼科 |