手足や顔の「痺れ」は何科を受診すべき? 医師が診療科と痺れ・痛みの原因や検査・治療内容を解説
突然、手足や顔の痺れが発生したときにはドキッとするもの。何か重大な病気の兆候かもしれないと、ヒヤヒヤしたことがある人も多いと思います。そんなときには、一体何科を受診すれば良いのでしょうか? どんな検査や治療を行うのか、実際のところを辻堂脳神経・脊椎クリニックの中川先生にMedical DOC編集部が聞きました。
監修医師:
中川 祐(辻堂脳神経・脊椎クリニック)
目次 -INDEX-
手足や顔が痺れるのは神経や脳の病気? 痺れが気になったら病院は何科を受診すればいい?
編集部
手足や顔が痺れるときがあります。これはどんな原因が考えられるのでしょうか?
中川先生
・脳・脳神経疾患
・脊椎・脊髄疾患
・末梢神経疾患
そのほか、末梢血管の血流が悪くなっていたり、神経以外の原因として貧血や脱水が起きていたりすることもあります。
編集部
それぞれ、どのような疾患が考えられるのですか?
中川先生
脳疾患で代表的なものは脳梗塞、脳出血、脳腫瘍などです。脳神経疾患では三叉神経が障害される帯状疱疹や結合組織病が原因となることがあります。それから脊椎・脊髄疾患としては、頚椎症や椎間板ヘルニア、視神経脊髄炎、多発性硬化症などが考えられます。また、末梢神経の障害としては、糖尿病性ニューロパチーやギラン・バレー症候群、手根管症候群、足根管症候群などがあります。
編集部
顔が痺れる場合には、どのような原因が考えられるのでしょうか?
中川先生
顔が痺れる場合には、脳が原因となるものと、三叉神経が原因となる場合の2種類があります。脳が原因となる場合には脳梗塞や脳出血などの疾患が考えられ、このようなときには温痛覚が鈍くなることがあります。一方、三叉神経が原因になる場合は、帯状疱疹をはじめとするウイルスの影響や膠原病、悪性腫瘍などが疑われます。
編集部
脳が原因となる場合もあるのですね。
中川先生
はい。特に脳梗塞は顔が痺れる原因として多く見られる疾患です。脳梗塞の場合には、手や足にも、なんらかの症状がでることがあるので注意が必要です。
編集部
痺れが気になったときには何科を受診すれば良いのでしょうか?
中川先生
痺れを起こす疾患は多岐にわたりますが、まずは神経内科・脳神経外科・整形外科のいずれかを受診すると良いでしょう。
手足や顔の痺れに多い症状と注意すべきことは?
編集部
手足や顔の痺れに多い症状とは、どのようなものですか?
中川先生
「手足の痺れ」と一口にいっても、人によって表現の方法は異なります。痺れのなかで最も多いのは、末梢神経に障害が起きていることが原因となっているケースで、このときには体の片側の一部などにピリピリとした感覚を覚えます。
編集部
そのほかにはどのような痺れがあるのですか?
中川先生
痺れの表現は人それぞれで「電気が走ってビリビリするような感じ」「皮を1枚被ったような感じ」「感覚が鈍る感じ」「焼けるような感じ」「うずくような感じ」「片側だけ痺れる」などさまざまあります。このような感覚が病気の診断に役立つこともあるので、痺れが起きているときにどのような感覚か注意することは、とても大切です。
編集部
痺れが出たときに注意すべきことはありますか?
中川先生
痺れの種類に加えて痺れを感じる部位や範囲をしっかりと把握していただくことが非常に重要となります。意外にも「どこが痺れていたか正確にわからない」ということが多く見受けられます。痺れの範囲は原因を考える上で最も重要となりますので、症状が出たときに自分でしっかりと把握しておくと良いでしょう。
編集部
痺れにも危険なものはあるのでしょうか?
中川先生
・頭痛、めまい、吐き気を伴う
・意識が朦朧としている
・意識障害がある
・突然、痺れが始まった
・顔の半分や半身に痺れが突然起きた
・ろれつが回らない
・痺れの数週間前に発熱があった
・運動麻痺や排尿障害がある
手足が痺れる原因が脊椎や脳神経にあるとき脳神経外科ではどんな診療をするの?
編集部
手足の痺れの原因が脊椎や脳神経にある場合、どのように診療を行うのですか?
中川先生
まずは問診により、痺れの範囲を確認します。痺れている範囲を調べることによって、どの神経に障害が起きているのか、ある程見当をつけることができます。
編集部
そのほかには?
中川先生
診察によって、痺れの原因を確認します。具体的にはゴムのハンマーで腱反射を調べたり、触覚や痛覚、振動覚の異常がないかを確認したりします。疑わしい疾患が想定できたところでX線やMRIなどの検査を行い、脳や脊椎・脊髄の異常がないか確認します。場合によっては、神経の伝導が正常かどうかを調べたり、血液検査を行ったりする場合もあります。
編集部
原因を確認したら、どうするのですか?
中川先生
原因となる治療を行うと同時に、対症療法として痺れを緩和する治療を行います。炎症による痺れや痛みには消炎鎮痛薬、痺れや痛みの原因が末梢神経の障害の場合には神経を修復するためにビタミン薬、血流が低下することで痺れが生じている場合には末梢循環改善薬などのように、症状に応じて薬を使い分けます。
編集部
そもそも痺れは治るのですか?
中川先生
痺れの種類によっても異なりますが、特に神経の異常などが原因で痺れが生じている場合には、改善するまでに年単位で時間がかかることもありますし、治らない場合もあります。症状の程度や原因にもよりますが、場合によっては痺れの程度を抑えたり、悪化しないようにしたりすることが治療の目的になることもあります。原因となる疾患の治療を行うことで痺れの悪化を防ぎ、また軽快・改善することも期待できますので、痺れを感じたら早めに医師の診察を受けるようにしましょう。
編集部
最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあれば。
中川先生
痺れは患者さんご本人にしかわからない症状です。眼に見えるものではありませんし、画像検査でも映りませんから、診断・治療するうえではご本人の症状把握が非常に重要であり、患者さんご自身が医師へ正確に症状を伝えることが必要です。「どんなときに痺れが出やすいのか」「痺れの出る範囲はどこからどこまでなのか」「どんなときに症状が改善するのか」などを普段からメモし、診察のときに医師に伝えることで、より正確な診断が可能になります。速やかに治療に結びつけるためにも、ご自身でしっかり状況を把握して、医師の診察を受けることをお勧めします。
編集部まとめ
痺れが慢性化すると日常生活で支障が生じることもありますし、QOLの低下にもつながります。「痺れは治りにくい」と言われることもありますが、早期に診察を受けることで解決の糸口を見つけることができるかもしれません。できるだけ早く症状を改善するためにも、痺れが生じたら早めに受診するようにしましょう。
医院情報
所在地 | 〒251-0043 神奈川県藤沢市辻堂元町1丁目7-18-1 |
アクセス | JR「辻堂」駅南口から徒歩6分 |
診療科目 | 脳神経外科、内科 |