【医師解説】耳鳴りがする…耳鼻科と心療内科のどちらを受診すべき?
耳鳴りを起こす疾患にはさまざまなものがあります。耳鼻科で治療が必要なものもあれば、心療内科を受診するのが適しているものもあり、どうしたら良いかわからずに放置している人もいるのではないでしょうか? そこで今回は、耳鳴りの治療法や受診先の見極め方を狭山ヶ丘駅前耳鼻咽喉科アレルギー科の丹羽先生にお聞きしました。
監修医師:
丹羽 克樹(狭山ヶ丘耳鼻咽喉科・アレルギー科)
目次 -INDEX-
キーンと音が聞こえて気になる…耳鳴りの原因とは?耳鳴りにも種類がある?
編集部
耳鳴りとはなんですか?
丹羽先生
何も外で音がしていないのに、耳の中や耳の奥でいろいろな音が聞こえることを耳鳴りといいます。聞こえる音はさまざまで、「ゴー」「ジー」「ブーン」といった低い音や、「キーン」「ピー」など、高い金属音が聞こえることもあります。
編集部
いろいろな聞こえ方があるのですね。
丹羽先生
•他覚的耳鳴り
本人以外の第3者にも聞き取れる耳鳴り。聴診器などで音を増幅させれば他人でも聞くことができる。
•自覚的耳鳴り
他者には確認できない耳鳴り。耳鳴りの大多数を占める。
編集部
原因はなんですか?
丹羽先生
他覚的耳鳴りの場合は、顎関節や喉、耳の周囲の筋肉が動く音、耳周囲の動静脈の音、脳動脈瘤や動静脈瘻、心臓弁膜症など血流異常によって起こるもの、自分の息の音などが原因で起こります。
編集部
自覚的耳鳴りの原因はなんですか?
丹羽先生
大部分は騒音性難聴や加齢性難聴など、難聴と共に発生します。この場合は、内耳や聴神経などの異常が原因となります。そのほか、外耳炎や中耳炎、メニエール病など耳に原因がある病気や、高血圧や脳腫瘍、脳梗塞などが原因となって起きている場合もあります。
耳鳴りがする・耳鳴りが続いて治らない症状で病院は何科を受診するべき? 耳鼻科? 心療内科?
編集部
耳鳴りが続くときは、何科を受診すればいい?
丹羽先生
多くの場合、難聴が原因となって起こります。そのため、まずは耳鼻科を受診すると良いでしょう。
編集部
ストレスが原因で耳鳴りが起きることもあると聞きましたが、本当ですか?
丹羽先生
確かに心因性の耳鳴りもあり、ストレスなどが原因となって耳鳴りが生じることもあります。耳鼻科で耳の検査をしても異常が見つからず、耳鳴りのために夜眠れない、イライラするなど精神症状が見られる場合には、心療内科を受診しても良いと思います。
編集部
まずは耳鼻科で検査を受けることが必要なのですね。
丹羽先生
耳鳴りの原因は、ほとんどが耳にあります。耳鳴りが続くことがストレスになり、その結果、心が病むというパターンもあります。その場合には根本的な原因となる耳の疾患を治療することが必要です。ただし、耳鼻科によって用意している検査機器が異なるため、耳鳴りに詳しい医師や、耳鳴りの治療に定評がある医療機関を選ぶことも大切です。
編集部
耳鳴りで受診する際のタイミングは?
丹羽先生
耳鳴りは健康な人でも起こる場合があり、一過性のものもあります。しかし数十分待っても消えなかったり、何回も耳鳴りを繰り返したり、生活に支障をきたすような耳鳴りがする場合には早めに耳鼻科を受診しましょう。
編集部
早めの受診が必要なのですね。
丹羽先生
片方の耳だけ突然耳鳴りが起こったり、耳が詰まった感じ(耳閉感)があったりする場合には突発性難聴の可能性があります。また、それらの症状にめまいを伴う場合はメニエール病の可能性があります。いずれにしても早めに受診することをおすすめします。
耳鼻科では耳鳴りはどのような治療をする?薬・補聴器・TRT療法などを医師に質問
編集部
耳鳴りはどのようにして治療するのですか?
丹羽先生
聴力検査や、必要に応じて頭部MRIなどの検査を行って原因を確認します。原因がわかったらそれに対する治療を行います。内耳障害による難聴を伴っている場合には、ビタミンB12、血流改善薬、副腎皮質ホルモン剤などを処方します。また、ステロイドを耳の中に注入する薬物療法もあります。
編集部
補聴器なども使うのですか?
丹羽先生
補聴器を使う治療法にTRT療法(Tinnitus Retraining Therapy:耳鳴再訓練療法)というものがあります。これは、補聴器やサウンドジェネレーターという装置を使った治療で、耳鳴りとは違うタイプのノイズ音を聞くことで、耳鳴りを気にしないようにさせる、というものです。耳鳴りの順応療法ともいわれます。
編集部
TRT療法はどのようなときに行われるのですか?
丹羽先生
薬物を使った治療では改善できない場合などに用いられます。ただし、機械を購入しなければならず、治療期間も長期に及ぶことがあるので、その点、了承いただくことが必要です。
編集部
耳鳴りは治るのですか?
丹羽先生
中耳炎など、原因が明らかになっている場合には耳鳴りを治すことができます。しかし内耳より中枢側に異常がある場合は治療が難しく、完治しにくいとされています。しかし、TRT療法などを根気よく行うことで、耳鳴りを気にしないようにすることは可能です。そして最も重要なことは、自分の耳鳴りの原因・発生メカニズムをきちんと医師から説明してもらい、注意が必要な耳鳴りなのか、気にしなくてもよい耳鳴りなのかを納得することです。耳鳴りが消えることを治療目標にするのではなく、気にならないようになることを治療目標としましょう。
編集部
耳鳴りは放置してはいけないのですね。
丹羽先生
耳鳴りを放置することでうつ病を発症するリスクもあります。ほとんどの耳鳴りは難聴に伴って起こりますが、特に高齢者で耳鳴りと難聴の両方がある場合は、うつ病になるリスクが高いとされています。
編集部
なぜですか?
丹羽先生
女性は普段からいろいろな人とのコミュニケーションを積極的に取る傾向にありますが、男性は耳鳴りや難聴があると人とコミュニケーションを取るのが億劫になることが多いので、うつ病のリスクが高くなってしまうのです。そのため耳鳴りを感じたら、その原因を調べることが必要です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
丹羽先生
高齢者の場合、高い周波数の音が脳に届いていないことが多く、そうすると脳はなんとか音を聞き取ろうとして感度を上げます。結果的に、それが耳鳴りの原因になっていることが多いです。いってみれば、耳鳴りは脳が頑張っている証拠であり、この場合は補聴器をつけるなどして、音を補充してあげると脳が安らぎ、耳鳴りが改善されることが少なくありません。難聴と耳鳴りの両方で悩んでいる場合にはこうした解決策もありますので、ぜひ、医師に相談してみてください。
編集部まとめ
一過性の耳鳴りは決して珍しいものではありませんが、ずっと続いていたり難聴などほかの症状を伴っていたりする場合には、治療が必要なこともあります。耳鳴りは心因的なストレスにもつながりますから、耳鳴りに悩む場合は早めに医師の診察を受けるようにしましょう。
医院情報
所在地 | 〒359-1106 埼玉県所沢市東狭山ヶ丘1-3-1 ソレイユ狭山ヶ丘103 |
アクセス | 西武鉄道「狭山ヶ丘駅」 徒歩1分 |
診療科目 | 耳鼻咽喉科 アレルギー科 |