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【理学療法士監修】「サルコペニア」とは? フレイルとの違いや症状・予防法について解説

 更新日:2023/10/20
【理学療法士監修】フレイルとサルコペニアは何が違う? 関連性について解説

老化に伴う筋力の低下や筋肉量の減少のことを「サルコペニア」と言います。サルコペニアは心身が老い衰えた状態である「フレイル」の原因にもなり得る疾患で、神経やホルモンの変化、不活動などが関与して発症する場合があるようです。はたして、サルコペニアは改善や予防が可能なのでしょうか。理学療法士の牧迫先生に解説していただきました。

牧迫 飛雄馬

監修理学療法士
牧迫 飛雄馬(理学療法士)

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2001年国際医療福祉大学理学療法学科卒業、2009年早稲田大学スポーツ科学学術院博士後期課程修了。国際医療福祉大学病院、リハビリ推進センター株式会社、札幌医科大学特任助教、日本学術振興会特別研究員(PD)、ブリティッシュコロンビア大学(Research Fellow)、国立長寿医療研究センター予防老年学研究部健康増進室長を経て、2017年より現職。日本老年療法学会副理事長、日本転倒予防学会理事など。

サルコペニアとは?

サルコペニアとは?

編集部編集部

サルコペニアとはどのような状態のことを指しますか?

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

サルコペニアとは、ギリシャ語で筋肉を意味する「サルコ(sarx/sarco)」と喪失を意味する「ペニア(penia)」を合わせた造語で、加齢による筋肉量の減少および筋力の低下のことを指します。「サルコペニア」は国際疾病分類に登録されており(2016年10月)疾患扱いになります。サルコペニアになると、転倒しやすくなる、日常生活の動作に影響が生じる、近い将来に介護が必要になるなどの危険性が高くなります。

編集部編集部

サルコペニアの発症にはどのような要因がありますか?

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

サルコペニアの主な要因は加齢です。メカニズムとしては、加齢に伴う神経の変性やホルモンの変化、ミトコンドリア(筋肉の活動や発達、維持においても不可欠な細胞小器官)の機能不全などが考えられていますが、十分にはわかっていません。またサルコペニアは筋肉量が減少することが特徴で、主として加齢が原因の場合は筋を構成する筋線維の数も減少します。ほかにも、不活動や疾患(臓器不全、炎症性疾患、悪性腫瘍など)、栄養状態の悪化が原因となる場合もあります。

編集部編集部

サルコペニアとフレイルの関係について教えてください。

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

サルコペニアは、筋肉量の減少および筋力の低下のことを指します。一方、フレイルは、身体的な問題に加えて、認知機能の衰えなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題なども含んでおり、サルコペニアよりも広い範囲を含む概念と言えます。そのため、サルコペニアはフレイルの原因になり、フレイルの人はサルコペニアを有する人も少なくありません。

サルコペニアの診断と改善

サルコペニアの診断と改善

編集部編集部

サルコペニアは治療可能でしょうか?

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

サルコペニアの状態は改善することが可能です。改善のためには、運動や食事による筋肉量の増加と筋力の強化がカギを握ります。また、サルコペニアの原因に疾患が強く関連している場合は、それらの疾患に対する薬物療法によってサルコペニアが改善されることも期待できます。しかし、筋肉の増量や筋力を強化することは少し時間がかかるので、まずは日常生活で運動量を増やす習慣作りが重要となります。

編集部編集部

サルコペニアの診断方法やセルフチェックについて教えてください。

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

サルコペニアの診断には「筋力」「筋肉の機能」「筋肉量」という3つの指標によって判定します。筋力の低下は握力(男性28kg未満、女性18kg未満)、筋肉の機能は歩行速度、5回椅子立ち上がりテストなどで判定します。筋肉量を測らなくても、筋力や身体機能の低下があれば、サルコペニアが疑われます。上記のどちらかに加え、骨格筋指数が基準値を下回りますと「サルコペニア」と診断され、上記のいずれにも該当し骨格筋指数が基準値を下回りますと「重症サルコペニア」と診断されます。

編集部編集部

自分でできるサルコペニアの改善方法にはどのような方法がありますか?

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

繰り返しになりますが、サルコペニアの改善のためには、筋肉の増量と筋力の強化のためにも日々の運動と食事内容の改善が必要です。運動では、ある程度の負荷をかけて筋力を伴うような運動が推奨され、特に「抗重力筋」と呼ばれる体幹や脚の大きな筋肉を重点的に鍛えましょう。食事面では、栄養バランスの良い食事を心がけつつ、筋肉を作ることを促進するためにもタンパク質を積極的に摂るようにしましょう。そのほか、光を浴びて適度に活動する、しっかり睡眠をとって休息をとるといった生活のリズムも大切です。

サルコペニアの予防法とは?

サルコペニアの予防法とは?

編集部編集部

サルコペニアは予防できますか?

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

サルコペニアになってしまってからの改善は大変ですので、予防が重要です。サルコペニアの予防のためには、筋肉を減らさないための適度な運動と栄養バランスの取れた食生活が基本となります。活動、休養、食事に気を配った規則正しい生活習慣を送るようにしましょう。

編集部編集部

サルコペニアの予防・改善に有効な運動にはどのような種類がありますか?

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

サルコペニアの予防や改善のためには、筋力トレーニングだけでなくストレッチ運動やバランス運動、有酸素運動を取り入れることが推奨されます。例えば、筋力トレーニングでは筋肉にややきついと感じる程度の負荷のかかる運動や、体幹や脚の大きな筋肉(太ももやお尻、ふくらはぎ)を意識するといいでしょう。有酸素運動であれば、ウォーキングが手軽に始めやすくておすすめです。

編集部編集部

サルコペニアの改善にはどのような食事を摂ると良いのでしょうか?

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

サルコペニアの予防や改善のためには、肉や魚、大豆、卵などの筋肉の生成に効果のあるタンパク質が豊富な食材がおすすめです。そのほか、マグロの赤身・レバー・鶏ささみ・キウイ・バナナなどのタンパク質の働きを助けるビタミンB6が豊富な食材や、米・パン・麺類といった筋肉を動かすエネルギー源となる炭水化物などをバランスよく摂取しましょう。また、過度な飲酒は筋肉がつくられるのを妨げる物質(ミオスタチン)を増加させると言われていますので、飲酒は適度にすることが必要です。

編集部まとめ

サルコペニアは改善が可能である一方で、なってしまうとフレイルの原因となり健康に大きく影響してしまう疾患です。そのため、筋肉の増量や筋力の強化のための適度な運動・食事、持病への対処など予防が重要であることが分かりました。読者の皆様も、今一度生活習慣に目を向け、手軽に始められる予防法から取り組んでみてはいかがでしょうか。

この記事の監修理学療法士