目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. がん治療の免疫療法とは がんと免疫力の関係について医師が解説

がん治療の免疫療法とは がんと免疫力の関係について医師が解説

 公開日:2023/09/25

手術療法」「化学療法」「放射線療法」に加え、近年“第4の治療法”と呼ばれることの多い「免疫療法」。免疫療法といっても具体的にどのような治療法なのか、具体的にイメージできる方も少ないと思います。手術療法や化学療法などの既存の治療法と併用可能なのかも気になるところです。そこで今回は、ヒューマンクリニック院長の大山和一郎先生にがんの免疫療法について、詳しく教えて頂きました。

大山 和一郎

監修医師
大山 和一郎(おおやまヒューマンクリニック)

プロフィールをもっと見る
1984年東京医科大学大学院修了。1985年より国立がんセンター頭頸科医員、1990年栃木県立がんセンター頭頸科医長、1994年国立がんセンター中央病院頭頸部外科医長就任を経て、2007年杏雲堂病院頭頸部外科部長に就任。22年間に渡り国立がんセンターと関連病院で臨床に従事する。その後、耳鼻咽喉科に加え、頭頸部のがんについての悩みに対して気軽に答えることが出来るクリニックを目指し、2007年「おおやまヒューマンクリニック」を開院。医学博士。

がん治療における免疫力について知る

がん治療における免疫力について知る

編集部編集部

がん治療の分野において、「免疫力」とは具体的にどのような事を言うのですか?

大山先生大山先生

免疫力は、がん細胞やほかの異常細胞(ウイルス、細菌など)を認識し攻撃するために、あらかじめ人間の身体に備わっている防御機能を指します。簡単な言葉に言い換えると身体の抵抗力を意味しています。T細胞やB細胞と呼ばれる免疫細胞があり、これらが異常細胞の認識や攻撃、抗体の生成に関わっています。免疫機能が適切に働くことで、がん細胞の増殖を抑制し、健康を維持する役割を果たします。

編集部編集部

がん治療において、免疫力を高めることが重要を教えてください。

大山先生大山先生

免疫力を高めることで、免疫機能ががん細胞を効果的に攻撃し、がん細胞の増殖や転移を抑制し、がんの治療効果を高めると考えられます。また、免疫力が強化されると治療後のがん再発のリスクを低減し、治療効果を持続させる可能性があります。さらに、免疫力すなわち身体の抵抗力・体力を高めることで、がん治療中の患者さんの生活の質の向上にも寄与する可能性が考えられます。免疫力を考慮した個別治療をおこなうことで、その患者さんにより適した治療法を選択できる可能性が広がると思います。

編集部編集部

免疫力を高める方法には、どの様な方法がありますか?

大山先生大山先生

免疫療法の活用や適度な運動、ストレス軽減、質の良い睡眠などが挙げられます。免疫療法は、免疫チェックポイント阻害薬エフェクターT細胞療法などががん細胞への攻撃を強化し、治療効果を高めるために用いられます。適度な運動は免疫細胞の活性化を促進し、ストレス軽減と質の良い睡眠は免疫機能の回復と免疫力向上に寄与する可能性があります。また、漢方薬を併用することも免疫力や体力の維持・向上に効果的なのではないかと考えています。これらの方法を個々の状況に合わせて適切に取り入れることが重要であると考えています。

がんの免疫療法とは

がんの免疫療法とは

編集部編集部

がんの免疫療法とは一般的にどのような治療法なのですか?

大山先生大山先生

免疫療法はがん治療の一種であり、身体の免疫機能を活用してがん細胞と戦う治療法で、免疫機能を強化するために様々な手法が用いられます。代表的な免疫療法は、「免疫チェックポイント阻害薬」や「エフェクターT細胞療法」などがあり、免疫チェックポイント阻害薬は、免疫機能ががん細胞を攻撃する力を維持するための薬を使用する方法です。エフェクターT細胞療法は、がん細胞への攻撃力を強めるために、患者さん自身のT細胞を体外に取り出し、がん細胞を見分ける遺伝子を組み入れて増殖させ、再び体の中に戻す方法です。

編集部編集部

免疫療法は現在がんの標準治療中の方でも適応になるのでしょうか?

大山先生大山先生

適応になります。一般的な免疫療法は、ほかのがん治療との併用により相乗効果が期待されることが多くあります。放射線療法はがん細胞を破壊する一方で、周囲の正常な組織も壊してしまう場合がありますが、免疫療法の併用により免疫機能が活性化され、がん細胞への攻撃が増強されることが期待されます。化学療法との併用も、互いの治療効果を強化する可能性があると考えられています。

編集部編集部

一般的な免疫療法にはどのような副作用と対処方法があるのでしょうか?

大山先生大山先生

治療による副作用は、治療法や個人の状態によって異なります。一般的な免疫療法の副作用としては、免疫過剰反応による発熱や発疹、免疫不全による感染症リスク、皮膚障害、疲労、消化器症状などが見られる場合があります。免疫の過剰反応には免疫抑制薬やステロイドの併用、免疫不全には感染予防対策が重要となります。皮膚障害や疲労、消化器症状には対症療法がおこなわれることが一般的です。

医療機関でおこなう免疫力を考慮したサポートとは

医療機関でおこなう免疫力を考慮したサポートとは

編集部編集部

ご高齢な方でも治療は受けられるのでしょうか?

大山先生大山先生

ご高齢の方でも免疫療法は受けることができます。年齢によって治療の適応が異なることはありますが、一般的に年齢だけで治療の対象から外れることはありません。治療の選択は患者の健康状態、がんのタイプやステージ、ほかの治療法との併用などを考慮しておこなわれます。一方で、年齢によって体力や生理機能の変化があるため、個別の評価がおこなわれ、治療計画を立てます。

編集部編集部

余命宣告を受けた方にもできるがん治療とはどのようなものですか?

大山先生大山先生

緩和ケアや終末期ケアにおいて、患者さんの生活の質を向上させることや、残された時間を最大限に活かすことを目的に、痛みの緩和や不快感の軽減などを中心とした緩和的な治療が提供されることが多いと思います。がんとの共存を目指し、がんを暴れさせないように漢方薬など様々な治療を組み合わせておこなうことを考えます。また、最新の治療法や臨床試験への参加など、個々の状況に応じた治療の選択肢が提供される場合もあります。

編集部編集部

がん治療において、患者さんが注意すべきことはどのようなことがありますか?

大山先生大山先生

免疫に対する治療に限らず、近年様々ながん治療が出てきています。保険診療のほかにも自費でのがん治療も出てきており、中には高価な治療法もあります。一方で、高価な治療法が必ずしもご自身に適した治療とは限りませんので、がんの状態や身体の状態を詳細に評価した上で個々の患者さんに適したがん治療を受けることが重要です。そのためにも、かかりつけ医や主治医と密な相談をおこなうことが大切になると思います。

編集部まとめ

今回は一般的な免疫療法に加えて、免疫療法のメカニズムについても教えて頂きました。免疫機能を高めることは、がん治療を補助することに繋がり、ひいては患者さんの生活の質向上にも効果的である可能性について教えて頂きました。本記事が読者の皆様にとって、がん免疫療法を知るきっかけとなりましたら幸いです。

医院情報

おおやまヒューマンクリニック

おおやまヒューマンクリニック
所在地 〒150-0021 東京都渋谷区恵比寿西1-32-14 Dear Ebisu5階
アクセス JR山手線「恵比寿駅」西口より徒歩7分
日比谷線「恵比寿駅」4番出口より徒歩4分
東急東横線「代官山駅」より徒歩6分
診療科目 耳鼻咽喉科・頭頸部外科

この記事の監修医師