大腸内視鏡検査の下剤の種類と飲み方を医師が解説 下剤の違いで大腸カメラの辛さや効果も異なる?
大腸内視鏡検査を受ける前には、下剤を服用する必要があります。じつは下剤の種類によって、その後の検査の「辛さ」や「楽さ」が変わるのをご存知でしょうか。一体、どのような下剤を服用すると検査が楽になるのかについて、「よりふじ胃腸内科・内科クリニック」の依藤先生に解説していただきました。
監修医師:
依藤 直紀(よりふじ胃腸内科・内科クリニック)
目次 -INDEX-
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)で下剤を飲む理由・下剤の種類や効果を医師が解説
編集部
なぜ、大腸内視鏡検査の前に下剤を飲まなければならないのでしょうか?
依藤先生
大腸内視鏡検査では、お尻からカメラを入れて大腸の中にポリープがないか、炎症が起きていないかなどをくまなく検査します。下剤を使わずにカメラを入れると、腸の中に便が残っていて十分に観察できません。そのため、事前に下剤(腸管洗浄液)を飲み、腸内を綺麗にする必要があるのです。
編集部
どんな下剤を服用するのですか?
依藤先生
- マグコロールP
- モビプレップ
- サルプレップ
- ニフレック
- ピコプレップ
これらは液体の下剤ですが、液体を飲むのが苦手な人には、「ビジクリア」という錠剤タイプの下剤もあります。
編集部
さまざまな種類がありますが、それぞれ特徴があるのですか?
依藤先生
現在、最も多く使用されているのはモビプレップです。洗浄力が高いのが特徴で、従来の下剤は約2リットル飲まなければならなかったのですが、モビプレップは大体半分の量で済みます。また、従来の下剤よりも腸内を綺麗にしてくれるメリットがあります。
編集部
ほかの下剤の特徴についても教えてください。
依藤先生
例えば、マグコロールPはスポーツ飲料のような味で、比較的飲みやすいとされています。従来の下剤よりやや少ない約1.8リットルを飲んで、検査をおこないます。
大腸内視鏡検査前の下剤の正しい飲み方 まずい・辛いのを避けて楽に飲むコツはある?
編集部
下剤を飲むのが辛いのですが、楽に飲むコツはありますか?
依藤先生
「下剤を飲むのが辛い」と感じる理由の1つに、下剤を飲む量が多すぎるという問題があります。そのため、量が多いと感じる場合には、モビプレップのように飲む量が従来品より少ない下剤を選択するといいでしょう。洗浄剤に加えて水も飲まなければならないため、飲む量の合計は従来の下剤とそれほど変わりませんが、下剤自体の飲む量は減るので辛さを軽減できるかもしれません。
編集部
ほかに、下剤を楽に飲むコツはありますか?
依藤先生
味自体も「飲みやすさ」に関係します。そのため、先述したスポーツ飲料のような味がするマグコロールPは、比較的飲みやすいという人が多いですね。ただ、スポーツ飲料のような味は苦手という人もいますし、どうしても液体の下剤が飲めないという人もいます。その場合には、錠剤タイプのビジクリアを水と一緒に飲むという選択肢もあります。
編集部
ほかにもありますか?
依藤先生
常温で飲むより、冷蔵庫で冷やした方が飲みやすい場合もあるので、試してみてもいいかもしれません。
編集部
検査前日に注意すべきこともあれば教えてください。
依藤先生
前日の就寝前に、別の下剤を内服することで早めに便が綺麗になり、当日に飲む下剤の量を減らせることもあります。また、下剤の効果を高めることに加え、下剤による体への負担を軽減するために、大腸内視鏡検査の2日くらい前から食事内容に気をつけることをおすすめします。消化の良い食事を摂ることで、下剤の効果を高めることができます。
編集部
具体的に、どのような食事を摂ればいいですか?
依藤先生
素うどん、お粥、豆腐、食パン、じゃがいも、卵焼き、バナナなどがおすすめです。食物繊維や脂質が少なく、消化速度が早い食材を摂るようにしましょう。
編集部
普段から便秘気味なのですが、下剤が効くか不安です。
依藤先生
そのような場合には、大腸内視鏡検査の数日前から準備をしておきましょう。消化の良い食事に加えて、酸化マグネシウムやセンナ系の便秘薬などをあらかじめ服用しておくと、検査前に服用する下剤の効果も良くなりますし、体への負担も軽減できると思います。
下剤を飲む際の注意点や大腸内視鏡検査の流れ
編集部
大腸内視鏡検査を受けるまでの流れを教えてください。
依藤先生
まず、検査前日の夕食は20時までに済ませていただきます。その際、できるだけ消化の良いメニューを摂りましょう。その後、処方された場合には就寝前に下剤を服用してください。検査当日は朝から絶食ですが、水、お茶、スポーツドリンクなどの水分は飲んでも構いません。
編集部
その後に腸管を洗浄するために下剤を飲むのですか?
依藤先生
検査開始の約3時間前から下剤の服用を開始します。モビプレップの場合は、コップ1杯(180ml)を10~15分かけてゆっくりと服用するのが目安です。モビプレップ1リットルと水0.5リットルを飲んだ段階で、便が透明になっていたら洗浄できたという合図です。まだ綺麗になっていない場合は、追加でモビプレップ0.5リットルと水0.25リットルを飲む必要があります。
編集部
ほかの下剤の場合は?
依藤先生
マグコロールPの場合は、1.8リットルを3時間ほどかけて服用していただきます。また、錠剤のビジクリアは、1回あたり5錠ずつ、200mlの水またはお茶と一緒に、15分ごとに計10回(計50錠)飲みます。飲みやすい反面、腸管が綺麗になるのに時間がかかるので、検査開始時間の4~6時間前からの下剤の服用を開始します。
編集部
そんなにたくさん下剤を飲んで、お腹が痛くなることはないのですか?
依藤先生
下剤を飲むと、便を出そうと腸が動く(蠕動)するので、腹痛を伴うこともあります。もし、下剤を服用中に嘔吐や激しい腹痛がみられた場合には服用を中止し、医師にご相談ください。
編集部
その後、病院へ行くのですか?
依藤先生
通常はご自宅で下剤を服用していただきますが、「自宅で服用するのが不安」「洗浄剤を飲んで腹痛が出たことがある」「遠方で移動が大変」というような場合には、医師にご相談ください。医療機関によっては、院内で前処置(下剤を飲んでもらうこと)をおこなうことも可能です。
編集部
院内で前処置ができれば安心です。
依藤先生
一例として、当院ではトイレ付きの完全個室を完備しています。リクライニングチェアに座り、テレビを見ながら、ゆっくり自分のペースで下剤を内服することができる工夫を取り入れています。患者さんにとって、少しでも過ごしやすい環境作りをしている医療機関を探すと、安心して検査を受けられるでしょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
依藤先生
「排便時に血が混じる人」「検診で便潜血陽性を指摘された」「便秘や下痢、便が細い人」「大腸ポリープを切除したことがある人」「大腸がんのご家族がいる人」「大腸がんの手術を受けたことがある人」は、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を強くおすすめします。大腸がんは早期の場合、症状を伴わないことも多いため、早めの検査が重要です。一昔前と比べて、下剤の種類も増え、味も飲みやすくなっています。また、内視鏡(スコープ)自体も細くなり、体の負担も減らした検査が可能となっています。寝ている間の検査も可能なので、検査を検討している人はぜひ一度医療機関に相談してみてください。
編集部まとめ
「一度大腸内視鏡検査を受けたけれど、下剤を飲むのが辛かった」といって、「二度と検査を受けない」と考えてしまうのは危険です。最近では下剤も改良され飲みやすくなっているので、検査を受ける際は前回の下剤と違う種類を試してみてはいかがでしょうか。
医院情報
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診療科目 | 消化器内科、内科 |