薬を服用すると眠くなるのはなぜ? 薬の種類や眠気の対処法について 【薬剤師が解説】
薬を飲むと、頭がボーっとして集中力が続かないといったことは多くの方が経験したことがあるのではないでしょうか。眠気を催す薬は何種類もありますが、その中でも抗アレルギー薬や、うつ病といった精神疾患の薬は眠くなる飲み薬の代表として挙げられます。また、市販薬でも眠気を引き起こす可能性のある薬もあります。そこで、薬を飲んで眠くなる理由やその対策をについて、薬剤師の速水さんに解説していただきました。
監修薬剤師:
速水愛(薬剤師)
目次 -INDEX-
薬を服用すると眠くなる仕組みとは どんな薬が眠くなりやすい?
編集部
飲むと眠くなる薬にはどのようなものがありますか?
速水さん
代表的なものは、花粉症の際に飲む「抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)」です。花粉症は、体内でたくさんのヒスタミンが体と反応している状態です。このヒスタミンとは、鼻や目などに作用して鼻水や目の痒みなどの諸症状を引き起こしますが、同時に脳や血管などほかの場所にも影響を及ぼします。特に脳においてヒスタミンは「覚醒・興奮」させる働きがあります。そのため、花粉症を抑えるために抗ヒスタミン薬を飲むと「覚醒・興奮作用」が弱まり、眠気や集中力の低下に繋がります。
編集部
ほかにもありますか?
速水さん
ほかには、「抗うつ薬」も眠くなるものが多くあります。これはセロトニンという成分が眠気と関連しているためです。セロトニンには精神安定作用がありますが、うつ病の場合セロトニンが少なくない状態になります。そこで抗うつ薬を飲むことでセロトニン量が増え、リラックスして眠気を感じるのです。
編集部
なるほど。それらの薬は飲んで何分後くらいから眠気が強くなりますか?
速水さん
薬の種類にもよりますが、大体薬を飲んで30分後くらいから眠気を感じ始めることが多いようです。中には、1日中眠気を感じる薬もあります。眠気は薬の副作用として生じるので、基本的に薬の効果が強力であるほど副作用である眠気も強く出ます。
眠くない薬の選び方を薬剤師に聞く 眠くなった際の対策も併せて解説
編集部
眠くなる薬には具体的にどのような種類や特徴がありますか?
速水さん
抗ヒスタミン薬だとポララミンやザジテンなどがあてはまります。これらの薬の特徴は、花粉症時の鼻詰まり症状だけでなく、蕁麻疹や皮膚の痒みなど皮膚トラブルにも有効という点です。そして、これらは第一世代の抗ヒスタミン薬と呼ばれ、効果は強めですが副作用も強いジャンルになります。また抗うつ薬はトフラニールやトリプタノールなど、精神科病院でもらう薬の多くが該当します。そのほかにも、市販で売っている風邪薬(咳止め・喉などの痛みを抑える作用があるもの)は、眠くなりやすいものが多いので注意しましょう。
編集部
反対に、眠くなりにくい薬とはどういうものがありますか?
速水さん
抗ヒスタミン薬でいえば、第二世代抗ヒスタミン薬であるアレグラやデザレックス、ビラノアなどが当てはまります。これらは薬の成分が脳内に移行しにくいため、眠気が起こりにくいという特徴があります。中には第二世代の中でも強い効果をもつザイザルは寝る前に飲むという指定がされています。また、市販薬にもあるアレジオンやクラリチンなども眠くなりにくい薬となります。
編集部
抗うつ薬の中に眠くなりにくい薬はありますか?
速水さん
抗うつ薬には、セロトニンが含まれないものもありますが、そのほぼすべての薬で眠気が起こる可能性はあり、個人差も大きくなります。こればかりは体質の問題になりますので、医師と相談しながら試してみるのが一番でしょう。
編集部
風邪薬も眠くなるものが多いと思うのですが、いかがでしょうか?
速水さん
風邪薬に関しては、咳や鼻水、喉の痛みなどさまざまな症状を和らげる成分が配合されているため、より複雑になります。薬のパッケージに「眠くなりにくい」と書いてある商品を選ぶようにする、もしくは医師や薬剤師に相談するようにしてください。
編集部
どうしても眠くなった時はどうしたらいいですか?
速水さん
基本的には病気を治す・症状を和らげることが最優先ですので、薬を飲んでどうしても眠くなってしまったら、仮眠をとる・ガムを噛む・昼寝をする、などで対応しましょう。また、例えば抗ヒスタミン薬を飲んでどうしても眠くなってしまう場合には、花粉症症状を抑える別の薬に頼るのもありです。
編集部
花粉症症状を和らげる、眠くならない方法があるのですか?
速水さん
はい。例えば鼻詰まりを良くするロイコトリエン受容体拮抗薬を飲むのもいいと思います。ほかにも花粉症の症状が強いときに限り、点鼻薬を使うのも良いですが、使いすぎには注意してください。そして、舌下免疫療法というのもあります。舌下免疫療法はアレルゲンが入った薬を舌の下で溶かし、毎日少しずつの免疫耐性をつけていく方法です。
編集部
抗うつ薬にもなにか方法はありますか?
速水さん
抗うつ薬を飲んで眠くなってしまう場合も、ほかの抗うつ薬への変更が無難でしょう。その際、比較的眠気が起きにくいとされている、パキシルやレクサプロ、ジェイゾロフトなどが候補として挙げられます。いずれにしても、眠気は日常生活に支障をきたすこともあるので、辛いと思ったタイミングで医師や薬剤師に相談しましょう。
眠くなりやすい薬を服用する際の注意点 運転前の服用は? 分割して服用してもいい?
編集部
眠くなりやすい薬を運転前に薬を飲むのはダメですよね?
速水さん
薬の説明書(添付文書)によると「運転をしてはいけない」とはっきり書かれている薬があります。具体的には、抗ヒスタミン薬の場合、ポララミンやザジテン、ほかにもアレロック、ザイザル、ジルテックなどが該当します。逆に、車の運転が禁止されていない薬は、アレグラ、クラリチン、ビラノア、デザレックスです。また市販薬のルルアタックEXは「車の運転は薬を飲んでから12時間経過した後、自分の状態を確認してからにすること」と記載しています。抗うつ薬の場合は車の運転を禁止するものもあれば「自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には十分注意させること」と記載されているものが多くあります。一概に良い悪いとは言えない場合も多いので、まずは医師か薬剤師に相談してください。
編集部
薬を1日に何回も分けて飲んだら眠くならないですか?
速水さん
そういうわけではありません。薬は1日の中で飲む量・回数が決まっています。自己判断で決まっている回数よりも、少量で何回にも分けて飲むことはできません。血中濃度が十分に上がりきらず、効果の出方が不十分になってしまいます。必ず医師の指示通りの回数で飲むようにしてください。
編集部
ほかに注意点はありますか?
速水さん
例えば1日1回のいつ飲んでもいい薬であれば、医師と相談の上で就寝前にするのも一つの手です。また、抗うつ薬は人によって細かく用量調整が可能なので、精神症状が安定していれば減薬し、副作用である眠気を和らげることもできるかと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
速水さん
薬によって眠気が起こることは、私たちが生活する上で非常に大きな影響を及ぼします。今回は、飲むと眠くなる薬の具体例やその理由、眠くならない薬の選び方、眠くならないようにする工夫についてお伝えしました。眠気が気になるから症状が辛くても薬を飲まないのではなく、薬について正しく理解して上手に薬と付き合っていただけたらと思います。
編集部まとめ
今回は、眠くなる薬の種類や、薬を飲むと眠くなる仕組みと対策、眠くならない薬の選び方などについて解説していただきました。薬にはメリットデメリットの両方があります。日中の眠気は私たちの生活に大きな影響しますが、医師・薬剤師に相談しながら対策をしていくことが大切です。