バセドウ病治療薬「抗甲状腺ホルモン薬」の効果や副作用は? 【薬剤師が解説】
「バセドウ病」は自己免疫疾患のひとつであり、甲状腺と呼ばれる部位から分泌されるホルモンが過剰になってしまうことで起こる疾患です。動悸が激しくなる、手汗がひどくなる、体重減少などの症状があり、治療法のひとつに薬物療法があります。そこで今回は、バセドウ病の治療で使用される薬の効果や副作用、注意点について薬剤師が解説していきます。
監修薬剤師:
岡村 奈津子(薬剤師)
目次 -INDEX-
バセドウ病治療のための抗甲状腺薬について
編集部
そもそもバセドウ病とはどんな病気ですか?
岡村さん
甲状腺は首のあたりに存在し、「甲状腺ホルモン」を分泌しています。バセドウ病とは、甲状腺ホルモンが異常に多くつくられてしまうことによって起こる病気です。甲状腺の腫れ、脈拍の増加や動悸、眼球の突出、疲れやすさ、異常な発汗、手足の震えなどが主な症状として挙げられます。
編集部
バセドウ病で使用される抗甲状腺薬の種類と効果を教えてください。
岡村さん
バセドウ病は甲状腺ホルモンが過剰になってしまう病気です。したがって、治療薬は過剰な甲状腺ホルモンを抑える抗甲状腺薬が使用されます。抗甲状腺薬は「チアマゾール」と「プロピルチオウラシル」の2種類があり、甲状腺ホルモンの生成を抑えることにより効果を発揮します。動悸や震えなどの症状を抑える薬など、バセドウ病からくる自覚症状を軽減させる薬も併用することがあります。
編集部
バセドウ病治療薬は飲み続けないといけないのでしょうか?
岡村さん
抗甲状腺薬を服用することで寛解(かんかい)といわれる症状が抑えられた状態になった場合は休薬することもありますが、基本的には年単位で服用していただきます。再発のリスクがある場合は、治療薬の服用を継続することになります。きちんと甲状腺機能の数値をコントロールすることが重要ですので、主治医の先生とよく相談してください。
編集部
抗甲状腺薬「チアマゾール」「プロピルチオウラシル」の副作用で注意するものはありますか?
岡村さん
服用初期に副作用としてかゆみや蕁麻疹の症状が出現することがあります。軽度であれば抗アレルギー剤を併用して治療を継続しますが、症状が強い、もしくは改善しない場合は、薬の変更や治療方法の変更を検討します。
編集部
見た目にわかる症状以外にも副作用はありますか?
岡村さん
無顆粒球症といわれる、白血球の中の顆粒球が減少する副作用の報告があります。ごくまれではありますが、出現すると感染症など重篤な症状のリスクもあるので、十分注意が必要です。また、肝障害の副作用報告もあります。どちらも服用開始後2ヶ月以内に出現することが多いので、服用初期は2週間に1回の採血検査が推奨されています。服用中に副作用と考えられる体調変化があった場合は、医師または薬剤師にすみやかに相談しましょう。注意すべき体調変化を理解しておき、何かあったときにすみやかに相談できるように確認しておくことが大切ですね。
抗甲状腺薬以外の薬は? 放射性ヨウ素を服用する? 抗甲状腺薬との違いとは
編集部
抗甲状腺薬以外のバセドウ病治療方法を教えてください。
岡村さん
抗甲状腺薬以外では、甲状腺機能を一時的に抑える目的で無機ヨウ素薬を服用することがあります。薬物治療以外では、手術や放射性ヨウ素を服用するアイソトープという治療があります。
編集部
放射性ヨウ素による治療はどのようなときに選択されますか?
岡村さん
副作用があり薬が服用できない場合や薬でコントロール不良な人や再発の人に選択されることが多いです。放射性というとびっくりされると思いますが、カプセルを飲むだけの治療です。治療できる施設は限られているので、治療の過程でよく医師と相談することをおすすめします。
編集部
放射性ヨウ素の治療の副作用や注意点は何ですか?
岡村さん
抗甲状腺薬を服用時の注意点とは 日常から気をつけるべきことを薬剤師が解説
編集部
「チアマゾール」と「プロピルチオウラシル」の違いは何ですか?
岡村さん
編集部
抗甲状腺薬を服用する際の注意点があったら教えてください。
岡村さん
自覚症状がなくなっても、決められた用法・用量をしっかりと守って服用し続けることが重要です。服用初期から維持期にかけて薬の量が変化していくことが多いので、飲み間違えないように注意しましょう。妊娠を希望される方は、事前にお医者さんへ相談しましょう。
編集部
日常生活に何か制限はありますか?
岡村さん
ストレスは悪影響です。休息、睡眠をしっかり取り、規則正しい生活をこころがけましょう。とくに数値がコントロールできるようになるまでは、心臓に負荷がかかっている状態です。運動は医師の指示に従ってください。タバコはバセドウ病のリスクをあげるといわれています。控えるようにしましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
岡村さん
バセドウ病は仕事、家事、育児などに忙しい20~40代の女性に多く、自身の体調管理が後回しになってしまうことが特徴として挙げられます。この記事を読んで、あてはまる体調変化があれば一度受診して検査をしてもらうきっかけになったらと思います。
編集部まとめ
一度は聞いたことのある病名である「バセドウ病」ですが、具体的な病状や治療するための薬、気を付けるべき生活習慣などを知ることができました。まずは自分自身の生活習慣に気を付けて、異変を感じたら病院で検査するようにしましょう。