【闘病】貧血と思っていた動悸・息切れはまさかの脳梗塞。「”忙しい”を理由に受診しなかった」後悔のわけ
仕事や家事など忙しい日々を送っていると、どうしても受診しないまま放置してしまう体の不調。少しいつもと違うと感じても、病院に行くことを億劫に感じている人は多いのではないでしょうか。今回は、突然脳梗塞を発症し、身体の一部に麻痺が残りながらリハビリを続けて日常生活を送られているさくらさんにお話を聞きました。脳梗塞を発症するまでの経緯、日々行っているリハビリ、心の支えになっていたことなどを実体験も交えながらご紹介させていただきます。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年6月取材。
体験者プロフィール:
さくらさん(仮称)
30代女性。職場の健診で貧血が指摘され、月経困難症もあったが病院に行かず、半年ほど過ごしていた。半年ほどして立てなくなり、動悸・息切れが目立つように。貧血症状と思っていたが、救急搬送されてそのまま入院、医師から脳梗塞との診断を受ける。
記事監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
貧血は指摘されていたが、「忙しい」を理由に受診を後回しに
編集部
さくらさんも発症された脳梗塞について教えていただけますか?
さくらさん
脳梗塞は血栓や狭窄によって脳の動脈が閉塞し、血液が届かなくなることで脳が壊死してしまう病気です。日本国内では死因の第4位を占める有名な病気で、代表的な症状は片方の手足の麻痺、呂律が回らない、視野が欠ける、めまい、意識障害などです。突然症状が現れて後遺症を残す可能性があり、また発症後に介護が必要になることも特徴です。
編集部
脳梗塞を起こす原因は何でしょうか?
さくらさん
原因の代表的なものは、高血圧・脂質異常・メタボリックシンドロームなどです。ほかにも糖尿病・高尿酸血症・慢性腎障害、極端な水分不足も影響するとされていて、生活習慣の悪さが要因です。
編集部
さくらさんの場合は、何が原因だと考えられていますか?
さくらさん
私の場合は年齢も若かったので、考えられる原因としては重度の貧血と多忙な仕事による疲労、そしてストレスだと思います。貧血が進行すると、低酸素血症や血小板増多なども起こることがあり、塞栓症を生じやすいとされています。そして毎日仕事も忙しくて受診する時間もないことや、ストレスが溜まっていたことも原因だったのではと考えています。
編集部
脳梗塞が発症するまでの経緯を教えてください。
さくらさん
2020年6月にあった職場健診で、重度の貧血が見つかりました。以前から月経困難症でかなり出血量もあったのですが、看護師で夜勤続きと忙しい日々を送っていたこともあり、病院に行きませんでした。それから、2020年12月頃急に立てなくなったり、動悸が激しくなったり、100m歩くだけで息切れしたりすることもありました。それでも「貧血症状だろう」と思い込んでいました。その翌年1月に職場で左手の麻痺が表れ、救急搬送されて入院になったというのが経緯です。
編集部
病気について医師からはどのような説明がありましたか?
さくらさん
救急搬送された時は意識がなく、気付いたら病院のベッドの上にいました。そこで医師からは「重度の貧血によって凝固機能が働いたことで、脳梗塞を発症した」と説明されました。それまでは動悸や息切れなどの自覚症状は貧血が理由だと思い込んでいたので、脳梗塞になるとは夢にも思っていませんでした。
今もなお残る左手の麻痺
編集部
発症後の経過についても教えてください。
さくらさん
脳梗塞で入院した翌月からは、リハビリ病院へ転院して4カ月間入院生活を送りました。退院してからは2カ月に1度受診をしていて、受診中に重度の貧血は子宮筋腫が原因だったことが判明しました。子宮筋腫の摘出も行い、現在は3カ月に1度通院しています。
編集部
貧血症状はそれほどひどかったのですか。
さくらさん
少し歩くだけでも動悸と息切れがあり、職場や自宅の階段を少しのぼるだけで息切れがひどかったです。貧血を改善する目的でフェロミア(鉄剤)を内服していましたが、全く効果がありませんでした。
編集部
現在の体調は安定していますか。
さくらさん
左側の手足に麻痺が残っていますが、比較的安定しています。子宮筋腫を摘出した後は、鉄剤を飲まなくても貧血は改善したものの、依然として正常値よりヘモグロビン値が低く貧血状態に変わりありません。仕事は看護師をしているのですが、夜勤が少なく採血業務などのハードな業務ではないデスクワークに切り替えてもらいました。
編集部
自宅ではどのようなリハビリを行っていますか。
さくらさん
歩行訓練や、太もも上げのような簡単な体操、左手の握力を回復させるための運動を行っています。日頃から麻痺のある左手を意識的に使って、ボールを握るなど少しでも動かしやすくなるように訓練しています。
編集部
発症当初から現在まで、どのくらい回復されましたか?
さくらさん
脳梗塞の急性期治療が終わった時点では、車椅子での移動しかできないレベルでした。その後リハビリ病院に4カ月間入院してからは、杖で屋外を歩ける状態まで回復しました。
病気に年齢は関係ない。少しでもいつもと違う場合はすぐに受診してほしい
編集部
治療中に心の支えになったもの、または忘れられないエピソードはありますか?
さくらさん
心の支えになったのは家族や子どもの存在です。忘れられないエピソードは、病気になる前までは疎遠だった兄が入院中毎日応援のメールをくれたことです。兄は理学療法士をしているので、患者さんの大変さをわかっていたからこそ私のことを励ましてくれました。家族と子どもの存在は、本当に自分にとっての支えになったと思います。
編集部
もし脳梗塞発症前の自分に声を掛けられるなら何を伝えたいですか?
さくらさん
とにかく異変を感じたら早く受診してほしいです。当時は夜勤ありの正社員で働きながら、アルバイトでも夜勤をしていたのでかなり無理をしていました。仕事の忙しさを理由に受診もしていなかったので、あの時の自分には早く受診してほしいと思いました。
編集部
最後に、この記事の読者や医療従事者の方に伝えたいメッセージをお願いします。
さくらさん
病気に年齢は関係ありません。少しでも「いつもと違うな」「なんかおかしいな」と感じたら、早く受診することが大切です。医療従事者の方は忙しいことも理解していますが、患者さんにもっと寄り添って話を聴いてほしいと思います。
編集部まとめ
脳梗塞などの脳血管障害は、日本における死因で上位に位置します。一方で、日頃の生活習慣を見直すことで予防できる病気の1つでもあります。重度の貧血から脳梗塞を発症したさくらさん。お話にもあった通り、貧血や疲労、ストレスから生じるケースも多いため、規則正しい生活と定期的に受診することが命を守るということがわかりました。