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「自分は病気ではないと思っていた」10代で摂食障害、コロナ禍で再燃。それでもうまく病気と付き合う方法【闘病体験】

 更新日:2024/10/01
【闘病】10代で摂食障害を発症。今もなお症状と共に生きるということ

長年摂食障害に悩まされながらも、自分なりの生活スタイルを送るおむすびさん。大学生だった10代に摂食障害と診断され、休学や入院を経験しながらも、現在は幸せなご家庭を築かれています。なかなか周囲に理解されないと語るおむすびさんが、入院・通院を通して摂食障害と付き合っていった方法についてお話してもらいました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年6月取材。

おむすびさん

体験者プロフィール
おむすびさん(仮称)

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1990年代生まれの女性。2012年夏ごろ、ダイエットを始めたが、徐々に過活動と体重減少が目立つように。2013年冬頃、両親の勧めで精神科病院を受診したところ、主治医から摂食障害の診断を受ける。

別府 拓紀

記事監修医師
別府 拓紀(精神科医)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

自分は摂食障害じゃない、と思っていた

自分は摂食障害じゃない、と思っていた

編集部編集部

まず最初に、摂食障害とはどのような病気なのか教えてください。

おむすびさんおむすびさん

摂食障害は極端な拒食や過食など、食事に関して重度の障害が表れる精神疾患の1つです。食事制限で極端に痩せる「神経性食欲不振症(AN)」、たくさん食べた後に体重増加を防ぐため嘔吐などの代償行動を繰り返す「神経性過食症(BN)」に分類されます。どちらも自分の体重・体型に過剰な恐怖心とやせ願望を持ち、体型が変わってしまうことを過度に恐れます。ANは10代、BNは20代の女性がほとんどと言われ、ダイエットを経験した人に多く発症するようです。

編集部編集部

おむすびさんが摂食障害を発症したきっかけは何でしたか?

おむすびさんおむすびさん

私の場合は大学生だった2012年夏ごろ、過度なダイエットを始めたことがきっかけです。ダイエットを始めてから、過活動や体重減少が顕著になりましたが、当時は病気である自覚がなく順調に大学生活を送っていると感じていました。ですが、どんどん痩せていく私を見て心配した両親にすすめられて受診した総合病院の精神科で「摂食障害」という診断を受けました。

編集部編集部

摂食障害という診断を受けた時の心境はどうでしたか?

おむすびさんおむすびさん

正直なところ、「自分は病気ではない」と思っていました。何より、今の生活や食習慣を変えざるをえないということに対して、反発心が強かったです。そんな中、医師からは「命の危険があるから、まずは体重を増やすこと」を目標にするように言われました。

編集部編集部

摂食障害の前はどのような生活を送っていたのでしょうか?

おむすびさんおむすびさん

ダイエット目的で活発に動くようになり、運動と食事制限がどんどん過激になりました。例えば、真夏に片道5キロ以上の道のりを歩いて通学する一方、食事を1日500キロカロリー以下まで極端に制限するなどです。当時の私は、負担感よりも達成感を抱いていました。体重計に乗るたびに、体重が順調に減っていくことが嬉しかったのです。それと同時に、周囲から「それだけしか食べないの?」と言われることを鬱陶しく思い、食事へのこだわりから人との付き合いも億劫に感じるようになりました。

気持ちが落ち着き、症状も治まったように見えたが…

気持ちの落ち着きと共に症状も治まるように

編集部編集部

治療開始後の生活はどのように変わったのでしょうか?

おむすびさんおむすびさん

最初のうちは行動制限で外出もできず、食後は必ず横になるといった縛りができたので、窮屈で仕方ありませんでした。それに、元の正常な体重に戻ることを「太る」と考えて恐ろしく感じ、体重増加への不安で精神的に不安定な状況でした。2014年の夏頃には過食の症状も表れ、自分でコントロールができませんでした。冷蔵庫の中にある物を詰め込む日々で、冷蔵庫に食べ物がなければ車で買いに行って、そのまま車内で過食するほどでした。そこで、冬に大学を休学して、1カ月の入院をしました。

編集部編集部

入院後や退院後の症状はどうでしたか?

おむすびさんおむすびさん

入院後も症状は続きましたが、徐々に落ち着いていきました。体重管理以外で自分自身の価値を見出すことができたのが大きかったと思います。気持ちのゆとりが生まれて過食の頻度が減り、2015年秋頃から大学を復学、無事翌年に卒業できました。卒業後は親元を離れて、大学院に進学しながら半年に1度通院することになりました。

編集部編集部

その後も症状は安定していたのですか?

おむすびさんおむすびさん

2年ほどは安定していて、大学院修了後は都内に就職しました。主治医が変わって通院ペースは1・2カ月に1回になり、1年ほど安定していたため、通院と服薬がなくなりました。ですが、2020年のコロナ禍をきっかけに、夏頃から拒食と過食が再燃してしまいました。

編集部編集部

その際の症状はどのくらいの期間で安定したのでしょうか?

おむすびさんおむすびさん

再燃後に一旦1人暮らしを断念して地元に戻って、1カ月ほど休養しました。休み明けは自然と症状が落ち着いて、すぐに仕事を見つけて正社員登用試験にも合格しました。

編集部編集部

現在妊娠中とのことですが、体調はいかがでしょうか?

おむすびさんおむすびさん

2022年10月に結婚し、2023年には第一子が生まれる予定です。新生活でストレスもありますが、これまでの経験や主治医からのアドバイスもあって、時々表れる症状とも上手く付き合いながら生活できています。今でも食生活のこだわりが抜けていない部分もありますが、子どもを授かったことで自分の食生活や身体に目を向けるきっかけになりました。

見た目や性格で他人を判断しないで欲しい

見た目や性格で判断しないで欲しい

編集部編集部

治療中に心の支えになったものはなんでしょうか?

おむすびさんおむすびさん

両親のサポートがとても大きかったです。初めて病院に連れていかれた時はかなり反発しましたが、それがなかったら今のような状況になっていないと思うと感謝しかありません。あと、症状が安定して1人暮らしを始めて、物理的にも精神的にも自立できたことは大きかったと思います。そして、夫も大きな存在です。食べることが上手くいかないことを理解して受け入れてくれていることが、安心感になっています。

編集部編集部

おむすびさんにとって、治療中に印象深かった出来事はありますか?

おむすびさんおむすびさん

一番つらい時、食欲がコントロールできず終わりが見えなくて気分が落ち込み、死んでしまいたいと思うこともありました。ですが、症状が落ち着いていくうちに、夫や友人、実家の家族と食事やお茶を楽しめること、気を許せる人たちとの飲み会が苦ではなくなったことが嬉しかったです。

編集部編集部

現在の体調について、改めて教えていただけますか?

おむすびさんおむすびさん

症状が完全になくなったわけではありませんが、命に危機を感じることや生活に支障が出ることなく、病気と付き合えていると感じています。妊娠中の体の変化に戸惑うことはありつつ、体重増加を自然のものとして受け入れて生活しています。

編集部編集部

摂食障害について多くの方に知ってほしいことはありますか?

おむすびさんおむすびさん

摂食障害は表面化しにくく、人にはわかりにくい病気です。ただ、体型や性格、努力を否定したり、容姿をからかったりすることは、誰に対してもしてはいけないことだと意識してほしいです。

編集部編集部

おむすびさんの治療経験を通して、医療従事者に望むことはありますか?

おむすびさんおむすびさん

精神科医療の質は医療従事者の質に左右されると思います。都市部と地方では受けられる治療も違うので、どこに住んでいても良質な医療を受けられる体制作りを期待しています。幸い、私は医師や医療スタッフに恵まれていましたが、精神科医療全体にはまだまだ改善の余地は多いと感じました。

編集部編集部

最後に読者向けにメッセージをお願いします。

おむすびさんおむすびさん

摂食障害は食事面以外にもさまざまな症状があり、人それぞれで治療方法が違います。ある人が上手くいった治療であっても、別の人には上手くいかないこともあります。だからこそ、長い経過を辿ることを本人、家族、周囲の人が理解し、受け入れていくことが大事だと思います。

編集部まとめ

摂食障害の多くは若い女性に発症し、国内の患者数はおよそ22万人と推計されています。また、あまり知られていませんが死亡率も5%と高く、単なる食事の問題として済ませることはできません。10代で摂食障害を発症し、10年以上経った今でも闘い続けているおむすびさん。自分の状態について正しく認識できれば、気持ちのゆとりが生まれて摂食障害の症状も落ち着くとのことがわかりました。周囲が本人の辛さを理解して寄り添うことが、摂食障害を克服するスタートラインになるのではないでしょうか。また、おむすびさんの発言でもわかるように、摂食障害は自分では病気であることに気づかないことがほとんどです。周囲の人が病気であることに気づき、通院を促すことも大切です。気になる方が身近にいたら、ぜひ声をかけてあげてください。

この記事の監修医師