高齢者におすすめの脳トレ8選! 認知症を予防する脳トレを介護福祉士が解説
高齢者が脳トレをおこなうことで、認知機能低下に効果的と言われています。いざ、脳トレを実践しようと調べると、多くの方法が紹介されていて困ってしまう方も多いでしょう。実際にどのような脳トレをおこなうと認知症予防を望めるのでしょうか。今回は、高齢者に効果的な脳トレについて、介護福祉士の佐藤さんを取材しました。
監修介護福祉士:
佐藤 恵美(介護福祉士)
目次 -INDEX-
高齢者における脳トレの効果を解説 認知症を予防することはできるのか
編集部
脳トレに認知症予防に効果的と聞いたことがあるのですが、本当でしょうか?
佐藤さん
脳トレには脳を刺激する効果があり、血流アップと認知機能の低下予防が期待できます。認知症の原因は、脳内の血流悪化、脳へのエネルギーを運ぶ酸素や糖の減少です。脳にエネルギーが運搬されなくなると、認知機能に障害が生じ認知症発症へとつながります。人間の脳は前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉に分けられます。この中で前頭葉は運動や思考、言語などを司っており、前頭葉の大部分を占めるのが前頭前野です。「記憶する」「判断する」「考える」など、人間らしくあるための機能が備わっており、脳トレにはこの前頭前野を刺激し、活性化する効果があります。難しい問題は必要なく、その人に合ったものを提供すれば大丈夫です。
編集部
脳だけでなく、身体面でもいい効果を出すことはできますか?
佐藤さん
軽い体操など運動の要素を含む脳トレは、筋力の維持向上につながります。日中の脳トレの場面で動きを取り入れたり頭を使ったりすることで、日々の暮らしにメリハリが生まれます。普段は部屋でじっとしている人も、脳トレを習慣にすることで規則的な生活リズムに整えていけます。
編集部
心理面での効果はありますか?
佐藤さん
脳トレを通じ、他者交流が活発になります。単独でおこなう脳トレも効果的ですが、複数名で取り組むとお互いに声を掛け合ったり教え合ったりできます。すると自然に発語も増え、脳トレの時間が他者との会話を楽しむ時間にもなります。また、問題に向き合うと自分の中に蓄積された知識や記憶がどんどん呼び起こされます。すると過去を懐かしむ穏やかな気持ちや、自尊心の高まりが感じられるようになります。
介護福祉士がすすめる脳トレ8選! 簡単にできる脳トレ方法とは
編集部
簡単にできる高齢者向けの脳トレはありますか?
佐藤さん
【個別】
・点つなぎ
プリントによくある脳トレで、散らばった点に番号が割り振られています。1,2,3……と順に点をつなぐと絵が表れ、その絵が何かを答える脳トレです。
・塗り絵
全体のバランスを考えながら塗ったり、線からはみ出さないように塗ったりと考える力や指先の動きを刺激してくれる脳トレです。もともと絵心のある人は、ごく一般的な色鉛筆で驚くほど美しい色使いを見せてくれることもあります。たとえばガーデニングが趣味の人に花の塗り絵を提供すると「この花はこんな色で、春先に咲く」など、記憶を呼び覚まし趣味に打ち込んでいた頃の楽しい気分を味わえるといった効果も期待できます。
・間違い探し
これもプリントが多くある脳トレで、注意力や記憶力が鍛えられます。特に昭和の光景を題材にした間違い探しは「懐かしい」と好まれやすいですね。間違いの数は多いもので10個を超える場合もありますが、高齢者に向けての間違い探しはそこまで難しいものでなくても構いません。その人の認知機能に沿ったレベルのものを提供しましょう。
【集団】
・じゃんけん
「私にじゃんけんで勝ってください」とあらかじめ伝えておき、「パーを出したら相手は後出しでチョキを出す」といった方法です。じゃんけんは子どもの頃から慣れ親しんでいる遊びなので、認知症の人でも比較的簡単におこなえます。
・しりとり
ごく普通のしりとりも良いですが、ルールを少し変えたり縛りを設けたりするのもおすすめです。例えば「3文字以上6文字以内の言葉を使う」「食べ物の名前だけ」などですね。
・なぞなぞ
個別でも思考能力が鍛えられますが、チーム戦でおこなうと互いに答えを出し合って検討するので他者交流が活発になります。
編集部
運動やリハビリの要素を取り入れたものはありますか?
佐藤さん
・両手を前に出す
・「1,2,3……」とカウントしながら左右の指を親指から順に曲げていく
・全ての指を曲げて拳を作ったら、カウントしながら小指から順に開く
少し難しくするなら、こちらもおすすめです。
・左手をグー、右手をパーにして前に出す
・左手はカウントしながら指を開き、右手は指を曲げる。これを同時におこなう
指を使う体操は座ったままできるので、車椅子の人にもおすすめです。足を使うなら、椅子に座ったまま足踏み→駆け足→足踏み→左右交互に外に開くなど、掛け声や音楽に合わせて動きを変える体操もあります。転倒やふらつき予防のためにも、なるべく座った姿勢でおこなうようにしましょう。
編集部
高齢者向けの面白い脳トレはありますか?
佐藤さん
連想ゲームはいかがでしょうか。「白い」「冬」「溶ける」なら「雪」という風に、複数の単語を問題にしても楽しいですが、「野菜の名前」「花の名前」などのお題を挙げて、思いつくものを言ってもらうのも盛り上がりますよ。1対1でもいいですし、何人かでチームを組んでもできるので施設でもおこないやすいゲームです。
脳トレをする際の注意点は? より効果的におこなう方法も併せて紹介
編集部
高齢者の脳トレで注意する点はありますか?
佐藤さん
認知機能や身体機能をアセスメントし、その人のレベルに合ったものを用意しましょう。問題が難しいと拒否につながります。「自分はこんなこともできない」とネガティブな思いが生まれ、自尊心を傷つける恐れもあります。
編集部
脳トレの効果を高めるにはどうすればいいでしょうか?
佐藤さん
運動の要素を取り入れてみてください。指を動かしたり、歌に合わせて楽しく体を揺らしたりする、頭を使うだけに留まらない脳トレの提供が効果的です。ジグソーパズルもおすすめの脳トレです。一見静かな脳トレに思えますが、小さなピースを決まった場所にはめ込むため、手指の運動と脳への刺激になります。
編集部
効果的な脳トレの実施法を教えてください。
佐藤さん
脳トレはその時だけおこなえばいいというものではありません。日々ちょっとずつでも、楽しみながら続けるのが重要なポイントです。その人がどんなものに興味を持つのかをしっかりアセスメントし、楽しんで取り組んでもらえる脳トレを選ぶ必要があります。高齢者は疲労を感じやすく、同じことを長時間おこなうのが難しい場合があります。無理のないペースを保ち、楽しんで取り組むのが効果アップのコツです。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
佐藤さん
脳トレは、その人に合ったものを選んで取り組んでもらうのが一番です。難しい問題を解く必要はありません。ちょっとしたクイズやパズル、書字も立派な脳トレです。頭を使うことで脳が刺激され、認知機能の活性化につなげることができます。ネット上にも脳トレ用の材料はありますし、介護関連の雑誌にもよく特集が組まれています。脳トレは継続が大切です。まずは簡単なものから始めてみませんか。
編集部まとめ
高齢者が脳トレをおこなうメリットは認知症予防、他者交流の活発化、身体機能の維持向上など多くのものがあると分かりました。決して難しいことをする必要はなく、継続するために簡単なものから取り組むといいのですね。個人の身体状況や認知機能に応じて、その人に合った脳トレを勧めていきましょう。