「子どもの発達障害」の症状・特徴を解説 正しい接し方・行動の注意点は?
「発達障害」という障害を耳にしたことがある人は多いでしょう。しかし、発達障害はどのような症状が起こり、何に注意をしたらいいかまで分かる人は少ないと思います。そこで今回は、発達障害の症状や関わり方の注意点、そして相談できる場所について公認心理師の甘中さんに解説していただきました。
監修公認心理師:
甘中 亜耶(公認心理師)
目次 -INDEX-
発達障害とは 種類や症状、原因を解説
編集部
はじめに発達障害について教えてください。
甘中さん
発達障害とは、“1つの障害”だけではなく“いくつかの診断名をまとめた概念”で、主に自閉スペクトラム症、ADHD(注意欠如・多動症)、SLD(限局性学習症)を指しています。いずれも発達の偏りが大きく、日常生活に困難が見られます。ちなみに、アスペルガー症候群、高機能自閉症、広汎性発達障害は全て自閉スペクトラム症に含まれます。
編集部
知的障害は含まれないのでしょうか?
甘中さん
知的障害とは、知的能力全般の発達が緩やかで日常生活に困難が見られる障害です。医療や福祉の現場では、発達障害と知的障害は区分されています。ただし、現場や人によってはまとめた概念として「発達障害」と表現している所もあるようなので、疑問に感じた時には確認した方がいいでしょう。発達障害の方には、知的障害と発達障害を併せ持つ、もしくは複数の発達障害を併せ持つ方もいらっしゃいます。
編集部
具体的にはどのような症状が見られますか?
甘中さん
自閉スペクトラム症では、相手の考えを汲み取ったり自分の考えを伝えたりするなど、コミュニケーションが苦手、または、特定のことに強い興味や関心を持つなどの特徴が見られます。ADHDは、忘れ物が多い、気が散りやすいなどの不注意、考える前に動いてしまうような衝動性、じっとしていられない多動が見られます。SLDは、全体的な知的能力に対して、計算、読む、書くなどの学習に関わる限定された能力に大きな躓きが見られます。しかし、これらの症状は、あくまで一例で全ての方に見られるわけではありません。
編集部
発達障害の原因は何なのでしょうか?
甘中さん
脳の一部に先天的な機能障害があるためと言われていますが、明確な要因やメカニズムは解明されていません。ただし、育て方や愛情不足が影響しないことは明らかになっています。
発達障害の子どもの特徴を年齢別に解説 どのような行動に注意するべき?
編集部
発達障害がある乳児期の子どもの特徴を教えてください。
甘中さん
乳児期(出生~1歳半ごろ)の自閉スペクトラム症の子どもの中には「指さしをしない」「名前を呼んでも振り向かない」「表情が乏しい」などの姿が見られることもありますが、特性が見られない子どもも多くいらっしゃいます。ADHDとSLDは、特徴が表れにくく専門家でも気づくことが難しいのです。乳児期は、発達の個人差が非常に大きい時期なので、この時期に気になっていた子どもが成長するにつれ気にならなくなったり、逆に育てやすかった子が成長するにつれ困難を示したりすることがあります。
編集部
幼児期の子どもでは、どのような特徴がありますか?
甘中さん
幼児期(1歳半~6歳ごろ)の自閉スペクトラム症とADHDの子どもは、同年代の子どもに比べて「集団より自分の思いを優先させることが多い」「癇癪が酷い」「落ち着きがない」などの姿が見られます。危険が分からない、危険な場面でも衝動性が抑えられないこともあります。まず、安全を確保することが大切です。
編集部
就学期の子どもについてはどうでしょうか?
甘中さん
就学期になると自閉スペクトラム症では「友達とうまくコミュニケーションがとれない」「計算式は解けるのに文章問題で躓く」、ADHDでは「授業中じっとできない」「忘れ物が多い」などの特徴が見られます。また、SLDは就学期に学習が始まることで表面化してきます。授業の内容はよく理解できているのに「読む」「書く」「計算」など特定の活動で躓くといったことが起こります。
編集部
思春期の時期では、どのような特徴がありますか?
甘中さん
思春期は、特性そのものの困難さに加え、特性のために同年代の集団の中でトラブルがおこりやすい時期になります。「変わり者」「自分勝手」「行動が遅い」などでいじめの対象になりやすく、うつや不安障害を引き起こすことがあります。
発達障害のある子どもとの関わり方とは 迷った際の相談先はどうすればいい?
編集部
発達障害のある子どもとの関わり方について教えてください。
甘中さん
子どもの特性によって違うというのが大前提ですが、自閉スペクトラム症とADHDの子どもへの関わり方として代表的なものは、①話すときは短く具体的に伝える、②お手本や具体物、メモなど見て分かるものを添える、③事前に見通しを伝える、などが挙げられます。限局性学習症の子どもへは、①苦手な課題は量や時間を調整する、②急かさないなどの配慮があると安心感に繋がっていきます。また、「発達障害への関わり」と言われると、つい学力や能力アップに目が向けられがちですが、子どもが「理解してもらえた」と感じ、自尊感情を保っていけるような関わりが非常に大切です。
編集部
迷ったときはどこに相談すればいいですか?
甘中さん
これまで誰にも相談したことがない場合、日頃の様子を知っている担任を経由してスクールカウンセラーに相談するという方法があります。その他、病院(精神科もしくは小児科)や、自治体に設置されている発達に関する相談窓口が挙げられます。すでに受診したことがある人は、かかりつけ医への相談が良いでしょう。相談に当たって、気になることは事前にメモをまとめたり、写真や動画を持っていったりすると情報が正確に伝わり、言い忘れを減らすことができますよ。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
甘中さん
発達障害のあるお子さんの育児は、喜びや感動がある一方で、心配や疲れることがたくさんあると思います。お子さんについて考えることは大切ですが、保護者の方は自分自身もこと大切にしながら育児をしてほしいと思っています。そのためにも、気になることや不安があれば1人で抱え込まず専門家を頼ってくださいね。
編集部まとめ
発達障害とは、自閉スペクトラム症、ADHD、SLDを指す言葉です。そして、発達障害の子どもとの関わりでは①安全を確保すること、②個人の特性に合った配慮をすること、③能力アップだけでなく自尊心を大切にすることが重要です。子どもの発達で気になることがあれば早めに専門機関に相談しましょう。