「赤ちゃんの頭のゆがみ」を治すヘルメット治療とは? 効果や治療期間を医師が解説
育児方法の変化によって近年話題となっている「赤ちゃんの頭のゆがみ」。都内には多数の専門外来も開かれており、治療を受けようかどうか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。治療の必要性や効果について、疑問を持つ方も多いでしょう。そこで今回は、なかなか知れない「赤ちゃんの頭のゆがみ」治療について、小児整形外科医の中川先生に解説していただきました。
監修医師:
中川 将吾(つくば公園前ファミリークリニック)
赤ちゃんの頭の形はどうしてゆがんでしまうのか
編集部
赤ちゃんの頭のゆがみは、どうしてできるのですか?
中川先生
赤ちゃんの頭は、まだ頭蓋骨同士が癒合しておらず、いくつかの骨に分かれています。そのため、軽微な力であってもそれが持続することで骨の相互関係に影響を及ぼし、ゆがみが発生してしまうと考えられています。「頭蓋縫合早期癒合症」という病的なゆがみもありますが、ほとんどは向きぐせなどによる持続的な圧迫によって起こり、「位置的頭蓋変形症」と呼ばれています。小児整形外科医として関わる中では、筋性斜頚や股関節脱臼など、動きの左右差を引き起こす疾患を合併していることもありますね。
編集部
変形にはどういった種類があるのですか?
中川先生
多くの親御さんが心配されているゆがんだ変形は「斜頭症」と呼ばれ、頭蓋の左右一方が斜めに扁平化している状態です。ほかにも、いわゆる絶壁と呼ばれる「短頭症」があり、後頭部の丸みがなく扁平化したものがこれにあたります。反対に、前後径が左右径に比して極端に大きくなっているものを「長頭症」と呼びます。変形としては圧倒的に斜頭が多く、整容的に問題となることも多いですね。
編集部
寝かせ方が悪かったからゆがんでしまったのでしょうか?
中川先生
赤ちゃんの動きはお母さんのお腹の中にいるとき、または分娩による影響が含まれます。生下時にすでに向きぐせがついてしまっていることもあり、改善は容易ではありません。枕の使用も無効なことが多いのです。仰向け寝育児によって頭の形のゆがみが増えているといった報告がありますが、これはSIDS(乳幼児突然死症候群)予防のためには必要なことです。当院では頭の形のゆがみの予防には日中のタミータイムの導入や抱っこの仕方を工夫するなどをおこなっています。
ゆがんだ頭は治さないといけないのか
編集部
赤ちゃんの頭のゆがみは自然に治ることがあるのでしょうか?
中川先生
ここからは病的でない位置的頭蓋変形症について解説していきます。月齢が小さければ、その後の頭蓋成長によってゆがみはある程度自然軽快し、将来的に気にならなくなる可能性は高いと考えられます。しかし、赤ちゃんが成長してしまうと、耳介偏位を伴う中等度異常の変形については改善が得られにくいといった報告もあります。7ヵ月以降では頭蓋骨の成長速度が鈍化するため、変形の程度と月齢を考慮して治療の必要性を検討すると良いでしょう。
編集部
治療をしなくても将来的に健康に影響することはないのでしょうか?
中川先生
頭の形のゆがみが直接健康を害するという明らかな証拠はありませんが、運動や神経発達への影響が指摘されています。ただし、その因果関係ははっきりしておらず、治療の必要性を決定づけるものではありません。その他、歯並びへの影響や肩こり、頭痛、側弯などへも影響があるのではないかと言われていますが、頭の形以外の影響の方が大きいため、こちらについても治療をおこなうことで予防できるわけではないことに注意が必要です。
編集部
治療をしなかった場合、後遺症が残る可能性はあるのでしょうか?
中川先生
治療をおこなわない場合、または治療開始が遅れて変形が残ってしまった場合でも、頭蓋骨の成長は大人になるに従って少しずつ進みます。変形は残りますが、見た目の問題は相対的に小さくなり、ある程度は気にならなくなることも多いですね。変形が残ってしまうことで、子どもへの影響はわずかかもしれませんが、親御さんの中には改善してあげられなかったことで思い悩んでしまう方もいらっしゃいます。
赤ちゃんの頭のゆがみを治す「ヘルメット治療」とは 治療期間・効果を解説
編集部
ヘルメット治療とはどのような治療方法なのでしょうか?
中川先生
頭の形を3Dスキャンで撮影し、そのかたちにあったオーダーメイドのヘルメットを長時間かぶり、頭の平らになってしまった部分を保護して自然な成長をうながすと同時に、頭の出っ張った部分に対して適度な圧力を加えることで頭のゆがみを矯正します。令和5年7月現在、様々な種類の頭蓋形状矯正ヘルメットが薬事承認されています。各社それぞれ特徴が異なっていますが、基本的なメカニズムは共通しています。デザインで選ばれる方も多くいらっしゃいます。
編集部
どの程度の期間、ヘルメットを使用する必要があるのでしょうか?
中川先生
変形が治るまで使用するのですが、早くて2ヵ月、改善が遅いと半年以上が目安になります。矯正力の強さもヘルメットの種類で異なっており、強い物を低月齢で装着した場合は早期の終了が見込まれます。反対に緩やかに矯正がかかる物を使用し、変形を最大限に矯正していくと長期間使用する必要があります。ある程度改善した段階で自然矯正を期待することも可能であり、担当医と家族との相談の中で決定していくことが一般的です。
編集部
ヘルメット治療で効果があるのはどの程度のゆがみの場合なのでしょうか?
中川先生
どの程度のゆがみに対しても改善効果が見込めます。ただし医療保険の適用されない自由診療であるため、まだまだ価格が高い(40〜60万円)ので簡単には受けられません。その価格に見合った効果が得られるかどうかを確認し、結果に納得できるかどうかにかかってきます。まずは家庭内でよく相談して治療を受けるかどうか決めることをおすすめします。
編集部まとめ
ヘルメット治療は向きぐせの影響によりできてしまった頭の形のゆがみに対しての有効な治療法ということがわかりました。治療は現段階では必ず受けるべきものとまでは言えないので保険適応とはなっていませんが、その効果はかなり高い様です。治療を行うには早い方が効果も高く、様々な選択肢から治療法が選べるため、頭の形が気になったらできるだけ早く専門医を受診されることをおすすめします。
医院情報
所在地 | 〒300-2654 茨城県つくば市水堀485-1 |
アクセス | つくばエクスプレス 「万博記念公園駅」下車 車5分 |
診療科目 | 小児整形外科、リハビリテーション科 |