エイジングケアには肥満が大敵ってホント? 抗加齢医学って何? 専門医に聞いてみた
肥満はさまざまな生活習慣病と強い相関がありますが、抗加齢学、つまりエイジングケアの側面からも、適切な体重コントロールが推奨されています。エイジングケアのためにおすすめのダイエット方法を、内科医であり日本抗加齢医学会専門医でもある渡邊先生(渡邊内科クリニック院長)に聞きました。
監修医師:
渡邊 清治(渡邊内科クリニック)
目次 -INDEX-
エイジングケアってなに? 美容の分野ではないの?
編集部
「エイジングケア」について教えてください。
渡邊先生
「エイジング」とは、「加齢」のことです。加齢に対し、どんなことができるかを医学的に考えるのがエイジングケア医療であり、その基礎になっているのは、抗加齢医学です。老化のメカニズムや、寝たきりになる原因の解析、長寿の方の疫学などを調べることで、健康に長生きできるような研究が抗加齢医学といえます。
編集部
なんとなく「美容」のイメージがあります。
渡邊先生
そうですね。一般的にエイジングケアというと、美容的なアプローチをイメージする方も多いかもしれません。しかし、いわゆる「アンチエイジング美容」も「エイジングケア医療」も、どちらも「抗加齢医学」に基づいて研究されています。
編集部
美しくなりたくて運動を続けていると、生活習慣病の予防にもなりますよね。
渡邊先生
その通りです。美容目的で、運動や食事に気をつけていると、結果的にさまざまな病気の予防につながりますし、美容と健康の根底はほぼ共通しています。
編集部
エイジングケアに「肥満」は大敵なのでしょうか?
渡邊先生
そうですね。「メタボリックシンドローム」という言葉を出すまでもなく、肥満が糖尿病や動脈硬化など、さまざまな病気のリスクを上げることが多くの研究で証明されています。さらに、体重が重いと普通に生活しているだけで腰や膝に負担がかかり、変形性関節症などを引き起こしやすくなり、運動もしにくくなります。
医師が徹底解説「ダイエットのコツ」 ポイントは「インスリン」にあり!?
編集部
そうするとやはりダイエットが重要なのでしょうか?
渡邊先生
そう思います。10〜20代で、まだ成長期にある方や痩せる必要のない体型の方が「もっと痩せたい」とダイエットをするのは危険ですが、「代謝が落ちてきた」「体が重くなった」と感じていたり、会社の健康診断などで肥満傾向を指摘されたりした方などは、これといった病気や体の不調がなくてもダイエットすることをお勧めします。
編集部
どんなダイエットがおすすめですか?
渡邊先生
理想的なダイエットには、簡単で無理なく続けられ、リバウンドが起こりにくく、必要な栄養をしっかり摂取できて、効果がはっきりわかることが求められます。そして、肥満を防ぎエイジングケアをめざすダイエットには、インスリンの過剰分泌を防ぐことがキーポイントになります。なぜならインスリンの過剰な分泌は、糖尿病やメタボリックシンドローム、動脈硬化の原因としてよく知られていますが、肥満の原因にもなるからです。
編集部
どうしたらインスリンの過剰な分泌を防げるのですか?
渡邊先生
太るのは、皮下脂肪や内臓脂肪といった脂肪の体積が増えることです。体に必要なエネルギーは糖質・脂質・タンパク質から摂取しており、その大半を占めているのは糖質が分解されたブドウ糖です。エネルギーとして利用されない余分なブドウ糖は、インスリンによって中性脂肪にされ、体内の脂肪細胞に蓄積されてしまいます。インスリンの過剰な分泌を避けるために、血糖値の急激な上昇を避ける食材や食べ方を心がけ、糖質を摂りすぎないことが基本になります。
編集部
具体的にどうすれば良いのでしょうか?
渡邊先生
まず、空腹時に摂る甘いものは、血糖値を急激に上げるので避けましょう。普段の食事でも、グライセミックインデックス(GI)の低い食品を積極的に摂り、野菜・肉類・炭水化物の順番で食べていくことを心がけましょう。炭水化物でGI値が低いものには、玄米や日本そば、ライ麦パン、さつまいもなどがあります。エイジングケアを行っている医療機関では、ダイエットの指導などをしてくれるところもありますので、必要に応じて利用してみると良いかもしれません。
「医療機関でのエイジングケア」 肥満防止のために医療機関でできることを教えて
編集部
エイジングケアのダイエットが医療機関で教えてもらえるのですか?
渡邊先生
そういった医療機関も増えてきています。一人ひとりの体質などに合った、脂質・糖質・タンパク質の摂り方、食事の時間や食べる順番、運動などについても適切なアドバイスをしてもらえると思います。糖質に依存しない体質を作ることで確実に体重を落としながら健康を保ち、リバウンドの可能性も抑えられます。
編集部
「一人ひとりに合ったアドバイス」というのは嬉しいですね。
渡邊先生
ダイエットにはこれが良い、これは良くないという一般論ももちろん大事ですが、全員にそれが当てはまるとは限りません。ベストなダイエット方法や食事内容も、本来は一人ひとり違うはずです。患者さんの健康状態や年齢などを考慮し、優先順位をつけながら取り組んでいくべきです。
編集部
ダイエット以外のエイジングケアも色々あるようですね。
渡邊先生
はい。体内年齢や老化の危険因子なども、一人ひとり異なります。年齢的に早い段階から細胞レベルで体の衰えや老いを知り、なるべく老化が進まないようにしていくことは、病気の予防にもつながっていきます。例えば当院の「エイジングケアドック」では、血管年齢や骨年齢、ホルモンや代謝機能の検査結果をもとに、医学的根拠に基づいて食事や生活習慣、適度な運動についてや体の状態に合わせた点滴やサプリメントなどもアドバイスしています。
編集部
最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。
渡邊先生
できるだけ早いうちに体の状態を把握することが重要です。通常の人間ドックに加えて、健康全般に関する情報も積極的に調べてみましょう。エイジングケア外来などで自身の体について学び、適切なケアを行うことで、より健康で充実した人生を送ることができるでしょう。
編集部まとめ
ダイエットは決して、「美のために痩せる」ことではなく、「健康のために、それぞれのベストな体型を、健康的に維持していく」のが重要なのですね。自己流の食事制限などでダイエットがうまくいかなかった方は、一度、医療機関に相談してみてはいかがでしょうか。
医院情報
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アクセス | 小田急線「小田原」駅東口より徒歩2分 |
診療科目 | 内科・消化器科・放射線科・エイジングケア |