「脳ドック」は40歳から? 毎年受ける? 医師が推奨年齢や受診頻度を解説
「病気になってから治療するのではなく、予防が大切」ということは分かっていても、「脳ドック」となると通常の健康診断よりも時間も費用もかかってしまうイメージがあります。検討はしているものの、なんとなく後回しにしている人もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、脳ドックを受けるべき年齢や受診頻度、費用などについて、「上田クリニック」の上田先生に解説していただきました。
監修医師:
上田 啓太(上田クリニック)
目次 -INDEX-
はじめての脳ドックを受ける推奨年齢や受診頻度を医師が解説 40歳になったら一度は脳ドックを受けた方がいい?検査は毎年必要?
編集部
そもそも、脳ドックとはどのような検査なのでしょうか?
上田先生
脳卒中などの早期発見・早期治療を目的として、MRIや血液検査などの様々な方法で脳の状態を調べる検診を脳ドックと呼んでいます。また、現在の状態がわかるだけでなく、将来的に起こり得る病気のリスクも予測できるため、生活において気をつけた方がいいことなどもわかります。
編集部
どんな人が受けたらいいのでしょうか?
上田先生
まず、「40歳以上」の人は、早いうちに一度は脳ドックを受けていただきたいと思います。また、30代であっても「高血圧」「脂質異常(高脂血症)」「糖尿病」「動脈硬化」などを指摘されたことがある人、「飲酒」や「喫煙」の習慣がある人、脳卒中になった家族や血縁者がいる人は、脳ドックの受診をおすすめします。
編集部
脳ドックの受診頻度なども教えてください。
上田先生
脳ドックを一度受けていただいて、心配な所見がなかった場合、その後は2~3年に一度の受診で問題ないです。しかし、先ほどの「脳ドックの受診が推奨される人」に該当する場合は、1~2年に一度の受診をおすすめします。また、脳ドックで何かの異常や心配な所見などが見つかった場合、医師の指示に従って受診してください。
脳ドックを受けるメリット・デメリット 脳卒中や脳梗塞を早期発見できる?人間ドック・健康診断との違いは?
編集部
会社の健康診断を毎年受けていても、脳ドックを受診した方がいいですか?
上田先生
そうですね。血圧や血液検査、心電図などは、一般的な健康診断でもできると思いますが、それだけでは脳の状態や血管の様子まではわかりません。頭部MRIやMRA検査、頸動脈エコー検査をおこなって初めて、脳のチェックができるのです。
編集部
「MRI検査は狭いところに入るので怖い」と聞いたことがあります。
上田先生
たしかに、MRI検査は「狭い空間に頭から入り、長いことじっとしていなければならない」というイメージが強く、「怖い」と感じる人も多いようです。しかし、最近のMRI検査機器は急速に技術が進歩しており、例えば当院で採用している「オープンMRI」は、従来の筒の中に入るタイプではなく、開かれた空間で検査を受けることができるため、閉鎖感と圧迫感を軽減できます。
編集部
脳ドックを受ける際、デメリットや注意点などはありますか?
上田先生
脳ドックは保険適用ではなく自費での受診となるので、費用がややかかってしまうことが挙げられます。受ける医療機関や脳ドックの種類によって費用は異なりますので、事前に調べておきましょう。また、タトゥーや義歯・入れ歯、コンタクトレンズをしていると検査が受けられません。加えて、妊娠中や妊娠の可能性がある人も検査できないことがあるので、必ず確認したうえで受診してください。
編集部
脳ドックにも種類があるのですか?
上田先生
はい、検査内容によってコースが異なります。それぞれのご予算やお時間の都合などもあると思いますので、ご自身の目的やニーズにあった脳ドックを選びましょう。
脳ドックを受ける上で知っておきたいこと 受診費用の相場や施設の選び方、検査の流れを紹介 保険適用や補助金はある?
編集部
では、それぞれの費用の目安を教えてください。
上田先生
例えば当院の場合、「シンプル脳ドック」という脳MRIと脳MRAの検査をおこなうコースが2万2000円、「スタンダード脳ドック」という脳MRIと脳MRAの検査に加えて、頸動脈エコー検査をおこなうコースが2万5000円となっています。脳外科医による結果の説明まで受診当日におこなうのですが、医療機関や検査内容によっては1泊入院が必要な脳ドックもあり、その場合はさらに数万円の費用が上乗せされます。
編集部
自費診療ということもあり、けっこう費用がかかるのですね。
上田先生
そうですね。しかし、お勤めの企業やお住まいの地域によっては、健康保険組合や自治体からの補助金が受けられる場合があります。また、加入している生命保険や医療保険などによっても、補助金があったり、提携医療機関で受診した場合は割引が適応されたりする制度もあります。ぜひ調べてみてください。
編集部
脳ドックを受ける際、医療機関を選ぶポイントなどはありますか?
上田先生
脳ドックの目的は「早期発見・早期治療」です。検査だけ受けて後日結果が郵送されてくるタイプの脳ドックは、心配な所見がなかった場合は問題ないのですが、例えば「異常あり」「要・精密検査」と出た場合、不安な気持ちを抱えながら、ご自身で専門の医療機関を探して、予約をとらなければなりません。そういった事態を避けるためにも、脳の専門医が在籍している医療機関で脳ドックを受け、結果の説明は書面ではなく口頭でしっかりと聞くことをおすすめします。「わからないことや不安なことはその場で質問できる」「何か心配な所見が見つかった場合、速やかに対応してもらえる」といった環境で受けるのが大事です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
上田先生
繰り返しになりますが、脳ドックは一般の健康診断とは違うので、専門の医療機関で受けるのを推奨します。仕事で忙しい人などは、「安価で簡便に受けられて、結果は郵送」という脳ドックを好まれるかもしれません。異常がなければいいのですが、異常があった際にすぐ対応できません。そのため、脳外科医のいる医療機関で検査し、医師から直接、結果の説明を受けましょう。早期発見・早期治療が肝心なので、ぜひ一度ご自身の脳や血管の様子を脳ドックでチェックしてみてください。
編集部まとめ
今回は、脳ドックの目的や費用などの疑問に答えていただきました。脳ドックを受けることはもちろん大事ですが、「何か見つかったときにどうするか」という点にも着目すべきとのことでした。その場で不安や疑問は相談できる医療機関で脳ドックを受けてみてくださいね。
医院情報
所在地 | 〒221-0842 神奈川県横浜市神奈川区泉町6-1 中央ビル黒川2階 |
アクセス | 東急東横線「反町駅」 徒歩6分 |
診療科目 | 脳神経外科、内科 |