「あせもにステロイド外用薬」は効く? 副作用や使用時の注意点を薬剤師が解説
多くの方が一度は「あせも」という症状を経験したことがあると思います。あせもは年齢問わず、汗をたくさんかくことで引き起こされる皮膚疾患です。あせもの治療法にはよくステロイドが使われるのですが、ステロイドと聞くと気になるのは副作用ですよね。あせもにステロイドを使用しても、副作用は大丈夫なのでしょうか。今回はステロイドによるあせもの正しい治療法とあせもの予防法について、薬剤師の長岡さんにお話しを伺いました。
監修薬剤師:
長岡 志帆(薬剤師)
目次 -INDEX-
あせもとはどのような状態? どのような薬が使用される?
編集部
はじめにあせもとはどのような疾患なのでしょうか?
長岡さん
あせもは医学的には汗疹(かんしん)といい、「水晶性汗疹」「紅色汗疹」「深在性汗疹」の3つに分類されます。皆さんが経験する一般的な症状は、「紅色汗疹」に当てはまります。汗を大量にかくことで汗腺が老廃物でふさがってしまい、赤い湿疹やかゆみが表れます。首、背中、お腹、ひじやひざの内側、足の付け根が、あせのものできやすい部位ですね。
編集部
なぜあせもができてしまうのですか?
長岡さん
あせもはたくさん汗をかいたときに、肌がむれてしまうことで発症します。通気性や吸水性、速乾性のない衣服を着ている場合、汗をかいても乾かせる環境ではなかった場合に発症しやすくなります。また、赤ちゃんや寝たきりの高齢者は、背中と床が密着している時間が長く、汗で肌がむれてしまうので、あせもができてしまうことが多いですね。
編集部
あせもは予防することができますか?
長岡さん
・汗を書いたらシャワーを浴びる、タオルで拭き取るなどをして汗を放置しない
・通気性、吸水性、速乾性のある衣服を着る
・締め付けのある衣服を控える
・横になる姿勢が多い赤ちゃんや高齢者は、体位をこまめに変える
・エアコンなどで汗をかかない温度、湿度を保つ
特に赤ちゃんは体温が高く体内水分量も多いので、あせもになるリスクが高くなっています。大人の基準で温度や湿度を設定してしまうと、赤ちゃんにとっては暑い場合もあるので注意しましょう。
「あせも治療薬としてのステロイド」は効果的なのか ステロイド外用薬の是非を薬剤師に
編集部
あせもにはステロイドが効くと聞きましたが本当でしょうか?
長岡さん
そうですね。あせもの症状である赤い湿疹とかゆみには、症状の原因となる炎症を鎮めるステロイド外用薬が効果的です。
編集部
ステロイドは副作用が強く、悪いイメージがありますよね。
長岡さん
みなさんがイメージされているステロイドの副作用は、内服や注射剤としてステロイドを使用した際に起こりやすいものです。ステロイド外用薬は、局所での使用であることと、長期間漫然と使用しないことを守っていただければ、イメージされているような副作用の心配はありません。ただし、絶対に副作用が出ないということではないので、使用して心配なことがあれば、いつでも薬剤師や医師に相談してください。
編集部
ステロイドを市販で購入する場合、どのように選べばいいのですか?
長岡さん
ステロイド外用薬は5段階の強さ(weak,medium,strong,very strong,strongest)に分かれています。市販薬には、弱い方から3つ目まで(weak,medium,strong)のステロイド成分が配合されています。症状が軽い方、皮膚の弱い方は、弱いステロイドを使うと良いでしょう。また、市販薬はステロイドと抗生物質の配合剤が多いのです。抗生物質は、あせもを搔きむしって傷ができた際に、細菌感染や傷が化膿するのを防ぐ効果もあるので、傷ができてしまった場合は配合剤がおすすめです。ステロイドの強さの選び方は、ドラッグストアや薬局の薬剤師に相談してください。
編集部
赤ちゃんにもステロイドは使って良いのでしょうか?
長岡さん
赤ちゃんでも弱いステロイドは使用することができます。症状によってはステロイドを処方することはあります。怖がらずに使用したほうが症状悪化を抑えることができるので、医師の指示通りに使用してください。市販で購入する際は、薬剤師に相談してステロイドを選ぶか、心配ならばステロイドが入っていないあせものお薬を選ぶと良いでしょう。
ステロイド外用薬の副作用はどのような症状が出る? 使用時の注意点・対策も併せて解説
編集部
ステロイド外用薬の使い方を教えて下さい。
長岡さん
ステロイド外用薬は、体を清潔にしてから、湿疹があるところやかゆみがあるところだけにピンポイントでやさしく塗りましょう。副作用防止の為にも、症状がないところには塗らないようにしてください。塗る回数も薬によって違うので、決められた回数以上に塗らないようにしましょう。市販薬の使用は5~6日程度にして、症状が治まっていない場合には皮膚科を受診してください。
編集部
妊娠中、授乳中でもステロイド外用薬は使用できますか?
長岡さん
妊娠中は一度かかりつけの医師に相談することをおすすめします。医師の判断でステロイド外用薬を処方することはあるので、処方されたお薬は安心してご使用ください。授乳中は、ステロイド外用薬であれば母乳に影響はありませんが、市販薬を購入する際には、薬剤師に授乳中であることをぜひお伝え下さい。
編集部
先程ステロイドの飲み薬や注射に比べて副作用は少ないとお聞きしましたが、それでも外用薬の副作用はありますよね?
長岡さん
・皮膚が赤くなる
・かぶれる
・皮膚が薄くなり、毛細血管が目立って見える
・免疫力低下による、細菌・ウイルス・真菌感染症を発症する
・湿疹やニキビができる、治りにくい
・薬を塗った部位にだけ毛が生えてきたり、増えたり、太くなったりする
使用していて気になる症状があるときは、使用を中止して、医療機関を受診しましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
長岡さん
あせもは年代問わず発症する皮膚疾患ですが、予防することができます。まずは汗疹予防をしっかりと行い、それでもあせもができてしまい、かゆみや痛みが辛いときにお薬を使いましょう。ステロイド外用薬は正しく使えばあせもに効果的です。ステロイドだからと怖がらずに、辛い症状があるときは使用を検討してみてください。購入の際や使用で気になることがあれば、ぜひ薬剤師に相談してください。
編集部まとめ
ステロイドはあせもに効果的なのか薬剤師にお聞きしましたが、ステロイドは正しい薬の選択と適切な使用をすれば、辛いかゆみや痛みを治せるお薬でした。また、あせもは日々の行動で予防できるものということなので、今年の夏からあせも0をみなさんで目指しましょう。