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処方された薬を服用しないリスク・デメリットを薬剤師が解説 命にかかわる可能性も

 公開日:2023/04/24
薬を正しく使うもうひとつの意味とは?〜薬剤師が解説〜

「薬は医師の指示通りに飲む」というのは当たり前のようですが、実は薬を正しく飲めていない人も少なくありません。薬を医師の指示通りに飲まないと、薬の効果が変わる可能性があるだけではなく、患者さんの“お金と時間”の無駄遣いになってしまう可能性があるとのことです。今回は、薬を正しく使う方法と理由について、薬剤師の川島さんにお話を伺いました。

川島 敦

監修薬剤師
川島 敦(薬剤師)

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薬剤師。2002年東京薬科大学薬学部卒業。世界最大手の製薬メーカー、国内最大手の小売りを経て、現在、山形県で薬局を2店舗展開。訪問看護、施設も経営する会社(株式会社玉屋利兵衛)の役員。研修認定薬剤師、実務実習指導薬剤師、スポーツファーマシストの資格も有する。「かかりつけ薬局」「かかりつけ薬剤師」として、地域の方々が「笑顔でいられるよう寄り添う」という会社理念をもとに、地域での健康情報発信の活動にも積極的に取り組んでいる。またNPO法人日本薬育研究会(薬育ラボ)事務局、予防医療オンラインサロンYOBO-LABOの動画校正リーダーとしても活動。YouTubeでも情報を発信中。

「薬は正しく使う」という意味とは? 正しく服用しないと重篤な副作用が起こる可能性も

「薬は正しく使う」という意味とは? 正しく服用しないと重篤な副作用が起こる可能性も

編集部編集部

どのようにすれば「薬を正しく使う」ことができるのでしょうか?

川島 敦さん川島さん

例えば1日3回の薬を1日2回しか飲まなければ、薬の効果が3分の2となるように思う方がいるかもしれません。しかし、薬にもよりますが、指示された量に満たないと効果がほとんど期待できないような薬もあります。反対に指示された量より多く服用した場合、副作用が出る可能性が高くなり、薬によっては、命にかかわるような重篤な副作用が起こる可能性もあります。これらが第一の意味です。

編集部編集部

私たちが飲む薬はどのような流れで受け取るまでに至っているのですか?

川島 敦さん川島さん

一般的には、「症状を自覚して病院に行く」→「医師が診断し治療方針を決める」→「薬が処方される」→「薬を飲む」といった流れだと思います。一方で、薬を処方されてから良くなる場合と良くならない場合があると思います。病気が改善すれば治療は終了ですが、生活習慣病のように症状を安定させる病気の場合は、同じ薬を続けましょうという流れになることが多いですね。しかし治療がうまく進まない場合は、再度病院を受診して別の薬を処方されるなどの対応になると思います。

編集部編集部

治療が進まないということは病気にあった薬ではなかったということでしょうか?

川島 敦さん川島さん

そのような場合もあると思います。しかし、実は「薬をきちんと飲んでなかった」ことによって治療が進まなかったという可能性もあります。単純に飲み忘れる場合、副作用などの観点から薬を飲むことに抵抗があり飲まない場合など、理由は様々ですが、実は薬を飲んでおらず、さらに飲まなかったことを医師に伝えなければ、医師も病状の理解が難しくなりますし、まさに「時間もお金も」もったいない状況となってしまいます。

「薬は正しく使う」のもう一つの意味とは? 薬が効いていないと勘違いしてしまうリスクを解説

「薬は正しく使う」のもう一つの意味とは? 薬が効いていないと勘違いしてしまうリスクとは

編集部編集部

服薬についてのコミュニケーションがうまくいかない具体例を教えてください。

川島 敦さん川島さん

薬をきちんと飲んでなくて症状が良くならなかった時に、医師には「薬は飲んでいた」と嘘をついてしまう患者さんがいます。このとき医師の理解としては「薬は飲んでいた」にも関わらず治療が進まない、つまり“薬が効いていない”と理解されてしまいます。その場合、薬を増やしたり、より効き目の強い薬を処方したりすることになります。しかし、最初に処方された薬をきちんと飲んでいれば症状が良くなった可能性もあります。再受診する「時間もお金も」いらなかったということになりますよね。

編集部編集部

薬剤師の視点ではどのように考えますか?

川島 敦さん川島さん

薬が追加された場合「併せて一緒に飲んでください」と指導することになります。そして、今回は薬をきちんと飲んで、もし副作用が出てしまった場合、最初に処方された薬が合わなかったのか、追加された薬が合わなかったのか、の判断が難しくなります。一方で、なかには医師には言えないけれど薬剤師になら本当のことを言うという患者さんもいらっしゃいます。

編集部編集部

そのようなことを言われた場合はどのように対応するのですか?

川島 敦さん川島さん

薬を飲まなかった理由を聞いたうえで、医師に問い合わせをします。例えば、実は薬をきちんと飲んでいなかったが、これからは薬をきちんと飲もう、と患者さんの理解を得られた場合、薬剤師から医師に正直に伝えます。追加された薬の処方を無しにしてもらい、最初に飲む予定であった薬だけの処方に変更してもらうこともあります。

薬剤師の役割とは? 薬の疑問を薬剤師に聞いて正しい服用を

薬剤師の役割とは? 薬の疑問を薬剤師に聞いて正しい服用を

編集部編集部

薬剤師さんは医師との仲介役のようなことをしてくださることがあるのですね。

川島 敦さん川島さん

疑義照会(ぎぎしょうかい)」という仕事ですね。処方内容に対して疑義(疑問点)があった場合は照会する(問い合わせをして疑問点を解消する)義務があります。薬を飲めない、飲みたくない、ということはあって当然です。しかし治療を進めていく上では、薬をきちんと飲まないとどの薬が合っているのか、効果があるのか、という判断が出来ないので、まずは処方された薬を指示通りに飲みましょう。

編集部編集部

社会的な視点で考えるとどのようなことが言えますか?

川島 敦さん川島さん

患者さんが正直に医師に話してくだされば、医師と薬剤師の「時間」も有効に使えるという側面もあります。また、保険診療では窓口負担が1~3割ですので、7~9割は税金(保険料など)から支払われています。そのため、社会保障費にも影響します。最初からきちんと薬を飲んでいれば再診する時間もお金もいらなかったかもしれない、というのは医療的な理由ではないかもしれませんが、患者さんの時間もお金も有限ですから大切に使ってもらいたいと思います。

編集部編集部

今回は薬をきちんと飲んでもらう大切さを、お金と時間に紐づけてお話してもらいました。最後に伝えたいことはありますか?

川島 敦さん川島さん

薬をきちんと飲めなかった時、飲まなかった時は、ぜひ勇気を出して正直に話をしていただきたいですね。もし医師に話しにくいと場合には、薬剤師に話してみてください。さらに、医師との懸け橋になってくれる「かかりつけ薬剤師」をお持ちになれば、より安心だと思います。

編集部まとめ

今回は、「薬を正しく使う理由」について、“時間とお金”の側面から詳しく解説して頂きました。薬の本来の効果が期待できなくなる可能性があるだけではなく、時間とお金も無駄になってしまう可能性があるとのことでした。また、薬剤師が医師との架け橋の役割も担っていることも教えて頂きました。読者の皆様もこれを機に、薬を正しく使うことを実践して頂けますと幸いです。

この記事の監修薬剤師