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「レーザー白内障治療」と従来の手術の違いを医師が解説 費用や保険適用の違いは?

 公開日:2023/05/27
レーザー白内障治療と従来の手術の違いを医師が解説 費用や保険適用の違いは?

高齢化に伴い、増加傾向にある白内障。従来、手技により眼にメスを入れる白内障手術が一般的でしたが、近年レーザーによる白内障手術が開発され、精度の高い手術が可能になりました。従来の手術との違いについて、下之城眼科クリニックの太田先生に話を聞きました。

太田 博仁

監修医師
太田 博仁(下之城眼科クリニック)

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藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)医学部卒業。その後、慶應義塾大学医学部眼科学教室へ入局し、一般眼科医院へ出向勤務。下之城眼科クリニックは2014年の開院。2017年には医療法人エスポワールへ法人化。わかりやすい説明を標ぼうするとともに、白内障・硝子体手術の日帰り手術が可能な欧米型の新しい眼科医療機関を目指している。日本眼科学会認定眼科専門医、光線力学的療法(PDT)認定医。『データで探す 病院の選び方』『名医のいる病院2017』などメディア紹介歴多数。

従来の白内障治療・手術の特徴は? 水晶体を取り除いて眼内レンズを入れるって本当?

従来の白内障治療・手術の特徴は? 水晶体を取り除いて眼内レンズを入れるって本当?

編集部編集部

白内障の手術は通常、どのように行われるのですか?

太田 博仁先生太田先生

そもそも白内障とは、眼の中でレンズの役割をしている水晶体が濁り、視力が低下する病気のこと。白内障の手術では、この濁りを除去し水晶体の袋(水晶体嚢)だけ残し、袋の中に人工の水晶体ともいえる眼内レンズを挿入します。

編集部編集部

水晶体はどのようにして袋から取り出すのですか?

太田 博仁先生太田先生

まずは角膜を小さく切開し、水晶体を覆っている水晶体嚢という袋の前面に丸く穴を開けます。そこから超音波の器具を挿入し、水晶体の中身を粉砕して除去します。

編集部編集部

そのあとに眼内レンズを入れるのですか?

太田 博仁先生太田先生

そうです。水晶体嚢の中身がなくなったところに小さく折り畳んだ眼内レンズを挿入して終了です。近年では日帰りで手術を受けていただけるようになり、麻酔も局所麻酔で済むので、早ければ10〜20分程度で終了します。

編集部編集部

手術にリスクはないのでしょうか?

太田 博仁先生太田先生

ほかのさまざまな手術同様、合併症のリスクはゼロではありません。稀にですが、術後眼内炎と呼ばれる感染症が起きたり、術中に残すはずの袋(水晶体嚢)が破れてしまい、術後に眼内レンズが動いてしまう偏位や脱臼、落下などが起きたりすることもあります。また術後に網膜のむくみが起きることもあります。

編集部編集部

そのほかにリスクはありますか?

太田 博仁先生太田先生

飛蚊症が目立ったり、青視症といって以前よりものが少し青みを帯びて見えたり、少し眩しく感じられたりするかもしれません。しかし、これらの症状は時間の経過とともに改善されていくので、心配はいりません。

レーザーで行う新しい白内障治療とは? フェムトセカンドレーザー (フェムト秒レーザー)とはどんな手術?

レーザーで行う新しい白内障治療とは? フェムトセカンドレーザー (フェムト秒レーザー)とはどんな手術?

編集部編集部

最近ではレーザーで行う白内障治療もあると聞きました。

太田 博仁先生太田先生

はい、アメリカで開発された治療法で、日本でも一部のクリニックで行われています。レーザーで行う白内障治療は「フェムトセカンドレーザー」と呼ばれます。フェムトとは、1000兆分の1秒のこと。つまり、1000兆分の1秒という短い秒数でレーザーを照射する治療法です。

編集部編集部

レーザーで行う白内障治療について、もう少し詳しく教えてください。

太田 博仁先生太田先生

わかりやすく言うと、これまで角膜を切開したり、水晶体嚢に円形の窓を開けたりする作業はすべて手作業により行っていましたが、これをOCTという測定装置を兼ね備えたレーザー機械が行います。また、超音波で水晶体を粉砕する作業も、あらかじめレーザーで濁りに切開を入れておくことができ(オーダーメイドの深さやデザインが可能)、より安全で効率の良い手術が可能になりました。

編集部編集部

従来の治療法に比べて、どのようなメリットがあるのですか?

太田 博仁先生太田先生

これまではすべて医師の手作業で行っていたため、医師の技量や経験はもちろん、その日の体調による影響が少なくありませんでした。手術は、眼の中で行う繊細な作業なので患者さんの体動によるミスのリスクもあります。特に多焦点眼内レンズという、複数に焦点が合う多機能レンズや乱視矯正レンズを使用する際には、そのレンズ中心と円形に開けた前嚢の窓とのポジショニングが非常に重要です。手作業による手技だけでは、レンズ中心と円形の窓の中心がズレてしまう可能性があり、後々レンズ偏位などが生じる可能性は否定できません。しかし、レーザーを使用することができればより正確性が増し、しかも治療の精度(レンズ機能を最大限引き出す可能性)も高まるはずです。

編集部編集部

レーザーの方が安全で、しかも精度が高いということなのですね。

太田 博仁先生太田先生

白内障の手術では、事前に患者さんの瞳孔の大きさから、角膜と水晶体の厚みや前房深度(角膜から水晶体までの距離)などを測定し、一人ひとりの眼に合った手術計画を立てます。レーザーによる治療では、ミクロン単位でパラメーターを設定することができ、手術中にはそれら大切な情報をモニター画面上でリアルタイムに確認することもできます。そのため、より精度の高いオーダーメイドの治療が可能となり、より安全でレンズの収まりもよく、レンズの性能を最大限引き出せる可能性があるのです。

白内障レーザー治療の費用・保険適用・手術の所要時間などを教えて

白内障レーザー治療の費用・保険適用・手術の所要時間などを教えて

編集部編集部

白内障レーザー治療は、保険適用になるのですか?

太田 博仁先生太田先生

いいえ、レーザーによる白内障手術は完全な自由診療で、保険適用外になります。保険適用内で治療を受けたい場合は、従来の治療法を選択することになります。

編集部編集部

手術の費用や所要時間はどれくらいですか?

太田 博仁先生太田先生

自由診療のため医療機関によって異なりますが、たとえば当院の場合では「片目30万円~」、乱視も矯正する場合は「片目35万円~」となります。ただし、金額は選択するレンズの種類によって増減しますので、詳しくはかかりつけ医にお尋ねください。レーザー手術の所要時間は、だいたい20分です。

編集部編集部

最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあれば。

太田 博仁先生太田先生

従来の白内障手術も近年では術式や機械が進化し、非常に洗練されています。しかし「もっと正確性や安全性を求めたい」という要望がある場合は、レーザー手術に勝るものはありません。また、従来の白内障手術では困難な例(たとえば患者さんが超高齢である場合や成熟白内障など病態が著しく進行、悪化した場合)でも、レーザー白内障手術であればより安全に行える可能性が高まります。まだ、導入している医療機関はそれほど多くありませんが、興味のある方はぜひお近くの医療機関を調べていただければと思います。

編集部まとめ

こうした先進技術を活用した手術はますます注目が集まっており、今後も多くの医療機関がこのような技術を導入することが見込まれます。現在多くの医療機関が保険での白内障手術を行っていますが、医療機関によって使用する機械に差異があるため、手術を検討している場合にはよく調べてから受診した方が良さそうですね。

医院情報

下之城眼科クリニック

下之城眼科クリニック
所在地 〒370-0854 群馬県高崎市下之城町184-3
アクセス JR「高崎」駅東口より車で約10分(ワンメーター)
診療科目 眼科

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